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フランス欧州ビジネスニュース2025年12月17日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年12月17日(フリー)
大型飛行船を製造する仏スタートアップ企業フライング・ホエールズ(Flying Whales)

 

1.        ジロンド県、物議を醸している飛行船工場プロジェクト「フライングホエールズ」を承認

2.        脱炭素化の象徴であるシェヴィレ発電所、電力貯蔵ハブとして生まれ変わる

3.        電気自動車:欧州の進路変更の勝者と敗者

4.        炭素国境税:メーカーは再び罰せられることを恐れている

5.        Trudonキャンドルが生まれるオルヌの小さな工場

6.        「衰える気配のない根本的な現象」:玩具業界が「キダルト」に焦点を当てるとき

7.        「リサイクル繊維が大量に流入するリスクがある…ただし中国産」:衣料リサイクル、競争力という困難な課題に直面

8.        米アポロ・ファンド、仏グラン・フレの売上を倍増させる秘訣


1.        ジロンド県、物議を醸している飛行船工場プロジェクト「フライングホエールズ」を承認

フランスのジロンド県知事公署は、スタートアップ企業「フライング・ホエールズFlying Whales)」に対し、大型飛行船組立工場の建設に向けた環境認可を与えた。この仏加共同プロジェクトは、2026年中にボルドー近郊のラルスカードにある75ヘクタールの敷地で建設を開始する予定である。
本プロジェクトの目的は、2029年から重量貨物輸送を「脱炭素化」し、山岳地帯などのアクセス困難な場所を解消することにある。地元自治体はこの計画を経済発展と300人の直接雇用創出につながる「主要な公益事業」として支持している。一方で、欧州ミンクなどの保護種を含む自然環境への影響を懸念する環境当局からは、これまでに2度の否定的な勧告が出されており、地元の環境派議員らも反対の声を上げている。
同社が開発する最新鋭の飛行船は全長200メートルに及び、最大60トンの積載能力を持つ。その最初の試作機は2027年に登場する見込みである。この技術革新は、重量貨物の持続可能な輸送時代を切り拓くものとして期待されている。


2.        脱炭素化の象徴であるシェヴィレ発電所、電力貯蔵ハブとして生まれ変わる
 
2025年12月16日、フランス最大級の電池蓄電システム(BESS)施設が、ナント・サン=ナゼール港にあるシュヴィレ火力発電所跡地に開設された。英国ハーモニー・エネルギー社のフランス法人が手がけたこのプロジェクトには、約6,000万ユーロが投じられ、テスラ社の「メガパック」技術が採用されている。
この施設は100メガワットの出力と200メガワット時の容量を備え、約17万世帯2時間分の電力を供給することが可能である。再生可能エネルギーの供給過剰時に電力を蓄え、需要が高まる時間帯に放出することで、送電網の安定化に寄与する。フランス全土の蓄電容量を15%引き上げるこの施設は、稼働初年度に2,000万ユーロの総収益を見込んでいる。
かつて石炭やガスで発電していた汚染リスクのある跡地を、最先端のクリーンインフラへと転換した点は象徴的である。このプロジェクトにより、20年間で約36万4,000トンCO2排出が削減される見通しである。ハーモニー・エネルギー社は今後もフランス国内で同様のプロジェクトを展開する計画であり、エネルギー移行の加速を目指している。


3.        電気自動車:欧州の進路変更の勝者と敗者
 
欧州委員会は火曜日、自動車業界のCO2排出規制を緩和する方針を発表した。2035年の排出削減目標は従来の100%から90%へと引き下げられ、これにより内燃機関車の新車販売禁止が事実上撤回された。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相やフォルクスワーゲンはこの決定を「現実的」と歓迎しているが、排出枠の維持には欧州産の低炭素鋼の使用などが条件となる。
2030年の目標(55%削減)については、達成期限を単年ではなく3年間の平均値で算出することを認め、メーカーに猶予を与えた。一方、フランスが主張した域内調達率75%の義務化は見送られ、今後の産業加速法での議論に持ち越された。
フランス勢にとっての朗報は、全長4.20メートル以下の小型電気自動車(EV)を対象とした新カテゴリー「M1e」の創設である。このカテゴリーには10年間の規制緩和が適用されるほか、排出量計算において1.3倍の販売台数として換算される「スーパーボーナス」が付与される。これにより、ルノーの「R5」やステランティスの「e208」などは競争力が高まるが、車体の大きいフォルクスワーゲンの「ID.3」は対象外となる。
商用車については、2030年の削減目標を40%に緩和したが、メーカー側が求めていた30%には届かなかった。また、企業フリート(社用車)に対しては、各国のGDPに応じたEV導入ノルマを課す方針である。