日刊フランス欧州経済 2026年5月29日 (フリー)
1. 衣類環境測定プラットフォームに淘汰の波、黒字化企業が経営難の競合を吸収
2. 欧州ディープテック企業が半導体開発、次世代通信「6G」見据え資金調達へ
3. 仏ライフ社のグリーン水素計画が難航、投資決定は27年へ延期
4. 仏の電池工場建設は2029年に延期 技術変更が影響
5. 仏種苗大手リマグラン 欧州投資銀行から過去最高3億ユーロの融資獲得
6. EDFが保守作業の負荷分散を模索、背景に準備遅れと人員不足
7. 会計検査院、EDFの完全国有化に厳しい見解
8. 欧米二重登記に苦悩するスタートアップ、法的手続きの複雑さが壁に
9. 湾岸危機で高まるSAFへの関心、欧州のエネルギー主権確保が急務
1. 衣類環境測定プラットフォームに淘汰の波、黒字化企業が経営難の競合を吸収
仏Carbonfactが独競合Vaayuを買収した。環境影響測定分野は企業の統合フェーズにあり、自動化や規模拡大が求められている。欧州の規制緩和などの逆風はあるが、同社は昨年末に黒字化を達成している。
ファッション業界の二酸化炭素排出量測定を専門とするフランスのスタートアップCarbonfactが、経営難に陥っていたドイツの競合企業Vaayuを買収した。この分野では統合が加速している。
環境影響測定プラットフォームの業界では、企業統合の動きが進んでいる。衣類のライフサイクルアセスメントを専門とするCarbonfactの共同創業者マルク・ローラン(Marc Laurent)は、多くの入札で競合していたVaayuの買収を発表した。Carbonfactは2年前にAlvenなどから1500万ドルを調達しており、今回の買収は同社にとって初の外部成長戦略となる。買収額は非公開だが、自己資本で実施された。Vaayuのブランドは消滅し、約100社の顧客はCarbonfactのプラットフォームへ移行される。Vaayuは2022年にAtomicoから約1150万ドルを調達したが、収益化に苦戦していた。
現在、環境分野の市場は厳しい状況にあり、顧客は低価格でより高度なサービスを求めている。Carbonfactの顧客の30%は米国、15%はフランス、15%はドイツに位置している。業界は2015年から2020年の第1波、その後の繊維専門企業の台頭を経て、規模拡大と頑健性を目指す統合のフェーズに入っている。
一方で、ファッションブランドは環境問題への圧力を強められている。例えばフランスでは、2025年末から衣類の「ニュートリスコア」のような環境表示が任意で導入された。しかし、マクロ経済の影響で企業のRSE(企業の社会的責任)チームの予算は縮小し、人員が3人から1人に削減されるケースもある。そのため、スケールメリットと自動化を実現できるプラットフォームが求められている。
非財務報告(サステナビリティ・レポート)の強化を目指すCarbonfactの動きは、欧州のCSRD(企業サステナビリティ報告指令)の延期と要件緩和により足止めを受けた。しかし、報告への実務的なアプローチはより多くの企業を取り込むことにつながると捉えられている。
炭素会計ソフトウェアの分野では、SamiやTrace、5500万ユーロで買収されたドイツのPlan Aなどの統合がすでに進んでいる。ファッションに特化したソフトウェアでは、フランスにはFairly MadeやGlimpactなどのスタートアップが存在する。その中でCarbonfactは、230社の顧客を抱え、年間経常収益(ARR)が800万〜1000万ユーロに達していると主張しており、昨年末に黒字化を達成している。
2. 欧州ディープテック企業が半導体開発、次世代通信「6G」見据え資金調達へ
ディープテック企業のスペクトロナイトは、無線通信の最適化技術でテレフォニカと提携し、年内にドイツで展開する。同社は独自の仮想化技術で通信容量の拡大と省電力を実現し、研究や独自の半導体開発を進めている。
ソフィア・アンティポリスを拠点とするディープテック企業「スペクトロナイト(Spectronite)」は、無線通信の最適化とネットワーク大容量化に特化した企業である。同社は、世界第8位の電気通信事業者であるスペインのテレフォニカ(Telefonica)と提携し、年末までにドイツで自社ソリューションを展開することを決定した。
5Gの普及に伴うデータ量の爆発的増加に対し、従来のハードウェアは限界を迎えている。テキサス・インスツルメンツ出身のジャン=フィリップ・フルニエ氏が2020年に設立した同社は、ソフトウェアとハードウェアを組み合わせたハイブリッド手法を提唱。既存ネットワークの通信容量を最大16倍に高め、消費電力を大幅に削減する技術を開発した。2025年のラボ試験を経て、今夏の追加テスト後にドイツでの導入が始まる。生産は、電子機器の工業化を専門とするノルマンディーの企業Eineaが担当する。
同社は「ネットワークの仮想化」を目指し、ハードウェア中心の市場からソフトウェアモデルへの転換を推進している。フランス2030から240万ユーロの資金援助を受ける研究プログラム「6G-Hauling」を通じて、アンテナの需要に応じて通信容量を自動調整する実証機を年末に発表する予定である。
現在、同社は欧州の革新的技術支援プログラム「EICアクセラレーター」に選ばれ、250万ユーロの補助金を獲得して独自の半導体開発を進めている。テレフォニカのサプライヤーとして認定されたほか、世界トップ15の通信事業者のうち6社と協議を進めている。さらに、今後2年間で1500万から2000万ユーロの資金調達を目指しており、2029年までに3000万ユーロの売上を見込んでいる。