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日刊フランス欧州経済 2026年5月22日 (フリー)

日刊フランス欧州経済 2026年5月22日 (フリー)
再処理燃料を再利用できるナトリウム冷却高速炉式の小型モジュール炉(SMR)を開発中である仏オトレラが1700万ユーロを調達した

1.        仏オトレラ、1700万ユーロ調達 高速炉方式のSMR開発へ

2.        仏政府、量子・半導体に15億ユーロ投資へ 米中との競争に対抗

3.        欧州EV市場の成長鈍化、バッテリー大手の業績に深刻な影響

4.        仏政府、産業誘致へ「即利用可能サイト」を整備 行政手続きを迅速化

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1.        仏オトレラ、1700万ユーロ調達 高速炉方式のSMR開発へ

仏オトレラが1700万ユーロを調達した。同社は再処理燃料を再利用できるナトリウム冷却高速炉式の小型モジュール炉(SMR)を開発中である。資金は技術試験や将来の量産に向けた産業拠点の設置に充てられる。
 
フランスのスタートアップ企業であるオトレラ・ニュー・エナジーOtrera New Energy)は、フランス2030計画の第2フェーズに選定され、1700万ユーロの資金調達を完了した。この資金は、同計画による支援のほか、EDFフランス電力)やエンジニアリンググループのADFオネット・テクノロジーズエグゼルゴンノルマンディー・パルティシパシオンなどのファンドが出資するラウンドから調達されている。
同社が開発するナトリウム冷却高速炉(RNR-Na)方式の小型モジュール炉(SMR)は、CEA原子力・代替エネルギー庁)の研究を基にした技術である。高速炉(RNR)の最大の特徴は、再処理された核燃料を何度も再利用できる点にある。この「燃料サイクルの確立」により、最終的な放射性廃棄物の量を大幅に削減できるだけでなく、天然ウランの追加採掘が不要になるという2つのメリットがある。EDFも、同社の技術が核燃料サイクルの確立に貢献する革新的なものであると評価している。
今回の調達資金により、同社は詳細前進プロジェクト(APD)を開始し、規制当局であるASNRへの提出書類作成を進める。さらに、技術試験の実施、新規採用、サプライチェーンの構築を行う。すでにシェルブール近郊に将来の産業拠点を設置することを発表しており、この工場において将来的な原子炉の量産展開に必要な重要コンポーネントの製造と組み立てを行う予定である。


2.        仏政府、量子・半導体に15億ユーロ投資へ 米中との競争に対抗

マクロン仏大統領は、米中との技術覇権競争を見据え、量子と半導体の戦略分野に総額15億ユーロを投資すると発表する。欧州のバリューチェーン統合を促し、量子コンピュータ試作機の確保や半導体技術研究を強化する。

米国や中国が技術覇国に巨額の補助金を投じるなか、フランス政府は欧州連合(EU)にとって戦略的とされる分野の強化を目指している。マクロン大統領は2026年5月22日量子技術および半導体の戦略的部門に対し、総額15億ユーロの投資枠を発表する。
量子分野には、投資計画「フランス2030」を通じて5年間で新たに10億ユーロが追加される。これは2021年から2025年にかけて実施された既存の18億ユーロの計画を補完するものである。これにより政府の公的調達プログラム「Proqcima」を強化し、2032年までに少なくとも2基の汎用量子コンピュータの試作機確保を目指す。また、これに合わせて半導体大手のエヌビディアがフランスの量子スタートアップであるアリス&ボブへの出資を発表する。
一方、半導体分野には、欧州共通利益主要プロジェクト(PIIEC)の枠組みで5億5000万ユーロが投じられる。この資金は既存の事業者向けに、半導体技術の研究や産業化に充てられる。フランス政府はさらに、今後10年間を見据えた新たな国家エレクトロニクス戦略を7月に提示する予定である。
米中との競争は激化しており、米国ではトランプ政権が量子関連企業に20億ドルの補助金交付を発表したばかりである。フランスとしては、地政学的緊張やAIの台頭を背景に、欧州レベルでのバリューチェーンの統合と、より具体的な行動を促す狙いがある。