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フランス欧州ビジネスニュース2026年4月9日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2026年4月9日(フリー)
モナコを拠点とするバイオテクノロジー企業、Sea Further社は、生物学的に強化されたグラフェン(バイオドープ・グラフェン)の開発・生産を通じ、ナノ材料業界で独自の地位を築こうとしている。

1.        バイオドープ・グラフェン開発、モナコ企業が低コスト化と脱レアメタルへ

2.        仏重要金属基金、レアアース精製企業に出資 脱中国へ供給網構築

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1.        バイオドープ・グラフェン開発、モナコ企業が低コスト化と脱レアメタルへ

モナコのSea Further社は、微生物を活用してグラフェンの性能を高める「バイオドープ」技術を開発した。低コストでレアメタル使用量を3割削減可能。現在は欧州の支援を受け、26年の量産化と資金調達を目指す。
 
モナコを拠点とするバイオテクノロジー企業、Sea Further社は、生物学的に強化されたグラフェンバイオドープ・グラフェン)の開発・生産を通じ、ナノ材料業界で独自の地位を築こうとしている。


セレンディピティから生まれた革新
同社の技術は、創業者であるValentino Iakimovが学生時代に行った研究の失敗、すなわち「セレンディピティ」から誕生した。極限環境微生物が炭素を吸収するのではなく、ドープ(添加)する相互作用を発見したことがきっかけである。従来の化学的・熱的な手法に比べ、この生物学的ドープは極めて簡便で低コストなプロセスである。
性能向上と希少金属への依存脱却
この技術は、グラフェンの触媒能力を飛躍的に高める。主な利点は以下の通りである。

  • 水素燃料電池バッテリーの性能向上。
  • エネルギー貯蔵・変換システムの効率化。
  • 希少金属(レアメタル)の使用量を約30%削減することを目指している。

産業化への歩み
2020年
に設立された同社は、欧州の助成プログラム「Horizon Europe」に採択された。現在はイタリアのBioC-Chem Solutionが主導するコンソーシアムに参加し、225万ユーロの資金援助を受けてプロジェクト「BioXyf」を推進中である。
現在、同社の生産能力は月間10kgに限定されているが、特許取得済みの製造プロセスの工業化を急いでいる。2026年下半期にはシリーズAの資金調達を予定しており、モナコ政府からの後押しを受けつつ、バイオテクノロジー分野でのさらなる飛躍を目指している。


2.        仏重要金属基金、レアアース精製企業に出資 脱中国へ供給網構築

仏政府系の重要金属基金は、精製技術を持つケアスター社に出資した。中国が市場を独占し輸出規制を強めるなか、2026年稼働の工場で重希土類の世界需要15%を担い、欧州における戦略的供給網の自立を目指す。
 
フランスの産業主権を強化すべく、公共資金5億ユーロを投じた「クリティカルメタル(重要金属)基金」が、新たな戦略的投資を展開している。管理を担うInfraViaは、フランス南西部のラック(Lacq)に拠点を置くCarester社に対し、12.5%の出資を行うことで合意した。
Caresterの工場は、リサイクルされた永久磁石や精鉱から重希土類(重レアアース)酸化物を生産する施設である。液体廃棄物を排出せずに精製を行う技術は、中国以外では唯一の独自能力であり、極めて希少性が高い。同サイトは2026年夏までに稼働を開始し、2027年1月には初の商用化を予定している。最終的には、重希土類の世界需要の15%をカバーする生産能力を目指している。
このプロジェクトには、米国のUSA Rare Earth12.5%を出資し、原料となる精鉱の供給を担う。また、近隣ではLess Common Metals(LCM)社による金属化工場の建設も進んでおり、ラックは欧州におけるレアアースの一大拠点となりつつある。
中国が市場の90%を支配し、2025年4月から輸出規制を導入するなか、この取り組みは自動車や風力発電向けの供給網安定化に不可欠である。かつてレアアース精製で世界をリードしていたフランスにとって、今回の投資は技術の回復と供給源の確保を両立し、脱中国依存を加速させる重要な一歩である。