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フランス欧州ビジネスニュース2026年3月4日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2026年3月4日(フリー)
排出CO2を電解し、低炭素エチレンへ変換する世界初の商用化に成功した仏Dioxycle

1.        排ガスが化粧品容器に、仏Dioxyle、CO2からエチレン製造でロレアルと提携

2.        仏ランド地方から世界へ:松由来の原料で挑むDSM-firmenichの戦略拠点

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1.        排ガスが化粧品容器に、仏Dioxyle、CO2からエチレン製造でロレアルと提携

Dioxycleは、排出CO2を電解し低炭素エチレンへ変換する世界初の商用化に成功した。2025年に産業用モジュールを完成させ、ロレアルへ供給を開始。重工業の脱炭素化を促し、化学産業の完全電化を目指す。
 
Dioxycleによる炭素電解技術とL'Oréalとの提携
フランスのスタートアップ企業であるDioxycle(ディオキシクル)は、産業排ガスに含まれるCOCO2を電気分解し、プラスチック容器の原料となるエチレンへ変換する技術を開発している。同社はこのたび、化粧品大手のL'Oréal(ロレアル)と、この低炭素エチレンから作られたポリエチレンを供給する数年間の商用契約を締結した。


技術の特徴と市場への導入
この技術の最大の特徴は、石油由来のバージンプラスチックと同等の品質と外観を維持しつつ、工場の排出炭素を「持続可能な化学製品」に作り変える点にある。Dioxycleの共同創業者であるサラ・ラメゾンによれば、炭素の電解によって生成されたエチレンが市場に投入されるのは、今回が世界初の試みである。

  • ビジネスモデル: 同社は排出源となる工場に電解装置を設置し、そこで回収・変換された炭素を原料として製品化する。今回の提携では、別の産業顧客から回収した炭素をポリエチレンに加工し、L'Oréalがそれを購入する仕組みをとる。
  • 技術の完成度: 2021年に設立された同社は、2025年1平方メートルサイズの最終産業用モジュールを完成させた。今後はスケールアップではなく、この基本ユニットを複製することで生産能力を拡大する戦略である。

今後の展望
Dioxycle
はこれまでに、Lowercarbon Capitalやビル・ゲイツ氏率いるBreakthrough Energy Venturesなどから計3,700万ドルを調達している。現在は鉄鋼、セメント、化学工業といった脱炭素が困難な重工業分野への装置導入を視野に入れており、2026年末までにはさらなる資金調達を目指している。同社の最終的なビジョンは、排出炭素を日常製品の原料として再利用する「完全に電化された化学産業」の再構築である。


2.        仏ランド地方から世界へ:松由来の原料で挑むDSM-firmenichの戦略拠点

DRT社はDSM-firmenich傘下で、松の残渣を再利用し香水等の原料を製造する世界リーダーだ。約130億ユーロの売上を誇るグループ内でも、100万ヘクタールの森林拠点は重要で、地域で900人の雇用を創出している。
 
フランスのラン Landes(ランド)地方に拠点を置くDRT社は、1932年に造林業者によって設立された歴史を持つ。現在はオランダ・スイス連合の巨大企業DSM-firmenichグループの傘下にあり、香水、洗剤、食品、医薬品、バイオ燃料など多岐にわたる製品の原材料を製造している。親会社であるDSM-firmenichは、2023年の合併により誕生し、世界60カ国330拠点、約2万8000人の従業員を抱え、年間売上高は約130億ユーロに達する。
DRTの戦略的拠点は、欧州最大の森林地帯である100万ヘクタールのガスコーニュ・ランド森にある。同社は木を伐採するのではなく、製紙業者の残渣などを再利用し、松由来の成分を高度な技術で変換している。研究開発には年間7億ユーロ以上が投じられ、15の研究センターで2000人以上の研究者が従事している。
原材料部門において世界リーダーである同社は、1700以上の製品ラインナップを持ち、毎年約20の新成分を開発している。特にランド地方のCastets(カステ)などの拠点は重要であり、グループの原材料部門の世界人員の約半分にあたる900人の雇用をこの地域で創出している。近年、生分解性ムスクの生産設備新設など大規模な投資が行われており、今後も欧州の産業競争力を守るための先端拠点としてさらなる発展が期待されている。