フランス欧州ビジネスニュース2026年3月12日(フリー)
1. 20年無充電の原子力電池を開発、トリチウム再利用で宇宙探査に革新
2. 仏スタートアップ、天然水素の低コスト供給へ 2030年に1kg=0.8ユーロ目標
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1. 20年無充電の原子力電池を開発、トリチウム再利用で宇宙探査に革新
仏Diamfabは400万ユーロを投じ、シリコンに代わる次世代半導体として合成ダイヤモンドの量産体制を構築。2028年までに4インチウェハーを年数万枚生産し、最長20年駆動する原子力電池等の商用化を目指す。
フランスのスタートアップ企業であるDiamfab(ディアムファブ)の事業展開と技術革新に関する要約は以下の通りである。
概要と生産体制
CNRS(フランス国立科学研究センター)のスピンオフとして2019年にナノエレクトロニクスの博士2名によって設立されたDiamfabは、イゼール県に合成ダイヤモンドの初のパイロット生産ラインを稼働させた。シリコンに代わる次世代半導体としてダイヤモンドを活用し、電力制御や脱炭素モビリティ分野への応用を目指している。
この新拠点には400万ユーロが投じられ、150平方メートルのクリーンルームを備えている。2028年までにこの面積を2倍に拡張し、年間で4インチのダイヤモンド半導体ウェハーを数万枚生産する計画である。これは欧州において前例のない規模となる。
事業戦略と製品展開
同社はメタンと水素から合成ダイヤモンドを製造しており、地政学的リスクのない「バイオ由来」の資源として供給が可能である。具体的な商用化のタイムラインは以下の通りである。
- 2027年:医療関連のニッチ市場向けに製品を投入。
- 2030年:電力管理分野への本格参入。
原子力電池への多角化
DiamfabはSTマイクロエレクトロニクスやCEA(フランス原子力・代替エネルギー庁)と共同で、トリチウム(水素の放射性同位体)を利用したベータ原子力電池のプロトタイプを開発した。この電池は以下の特徴を持つ。
- 最長20年間の自律駆動が可能。
- フランス2030計画から200万ユーロの支援を受けている。
- 低電力で長期間の作動が必要な温度・振動センサー等に適しており、放射性廃棄物とされるトリチウムのリサイクルという側面も持つ。
宇宙探査への展望
さらに、Orano(オラノ)やESA(欧州宇宙機関)との連携により、より強力な放射性同位体を用いた宇宙用電池の研究も進めている。
- 目標は出力を100倍に高め、月や火星への探査ミッションに採用されることである。
- ダイヤモンドの活用により、従来の電池よりも効率と堅牢性を向上させることが可能となる。
強力な放射性廃棄物を利用した最初のデモンストレーターの結果は、2026年の夏までに出る予定である。
2. 仏スタートアップ、天然水素の低コスト供給へ 2030年に1kg=0.8ユーロ目標
仏Mantle8はEU等の助成金を含む計484万ユーロを投じ、AIや独自技術による天然水素探査を加速させる。2030年までに、提携モデルを通じて1kgあたり0.80ユーロ以下の安価な商用供給を目指す。
フランスのイゼール県に拠点を置くスタートアップ企業、Mantle8(マントルエイト)の事業展開に関する要約である。
資金調達と事業の拡大
天然水素(白水素)の探査技術を開発するMantle8は、欧州連合(EU)の「公正な移行基金」から200万ユーロの助成金を獲得した。同社は2025年初頭にもビル・ゲイツ氏傘下の基金などから340万ユーロを調達しており、今回の助成金は、2028年まで続く総額484万ユーロの投資計画の一部となる。従業員数も当初の6名から現在は約20名に増加し、年内には30名体制に達する見込みである。
独自の探査テクノロジー
同社は、予測モデル、地下イメージング、化学分析を組み合わせた独自のワークフロー(GeoLogix、APoGhe、Horex、Simul8)を展開している。
- Horex: AIを活用した多重物理イメージングシステム。ピレネー山脈の試験サイトでは、700km2のエリアに1,500個のセンサーを設置し、ガス貯留層の特定に成功した。
- 研究開発: グルノーブルの本社内に自社化学分析ラボを設立し、岩石や流体の組成分析を強化することで、掘削前に水素の純度や抽出可能量を正確に予測する。
今後の展望とビジネスモデル
Mantle8の目標は、高コストな試掘を最小限に抑え、探査から生産までの期間を短縮することである。同社は単なるサービス提供ではなく、掘削・生産を担うパートナー企業と提携し、将来の生産量に応じて収益を得るモデルを目指している。 2025年には複数の特許を出願しており、2026年も技術の権利化を推進する。最終的には、2030年頃の商用化を見据え、欧州産のグリーン水素よりも大幅に安価な「1kgあたり0.80ユーロ以下」での水素供給を目指している。