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フランス欧州ビジネスニュース2025年8月1日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年8月1日(フリー)
フレンチテックContentsquare

1.        フレンチテック:Contentsquare、アメリカのスタートアップ企業を買収し、AIエージェントの競争に参入

2.        サフランが新しいカーボンブレーキ工場の建設地としてフランスを選んだ理由

3.        エネルギー転換とデータセンターの台頭がフランスの産業の旗艦企業の成長をいかに促進しているか

4.        エールフランス-KLM:ベン・スミス社長、フランスとオランダの航空税反対の訴え

5.        アコー、高級ホテルとライフスタイルの分野での躍進で利益を得る

6.        最悪のシナリオはなし…サノフィ、米国の関税を「制御可能」とみなす

7.        仏大手ジェネリック医薬品メーカービオガラン、欧州の投資ファンドに売却される予定

8.        中国の高級品市場の変貌は、シャネル、ディオール、グッチ、エルメスなどの大手ブランドを驚かせた


1.        フレンチテック:Contentsquare、アメリカのスタートアップ企業を買収し、AIエージェントの競争に参入


 

Contentsquareオンラインユーザー体験に特化したフランスのユニコーン企業であり、9件目の企業買収として、顧客対応の会話解析を専門とするアメリカのスタートアップLoris AIを買収した。Loris AIニューヨークを拠点とし、2000万ドル超を調達し、約40人の社員を抱えている。
この買収により、Contentsquare会話型AI自律エージェントの分野で技術基盤を強化する。ジョナサン・シェルキCEOは、ハイブリッド型の顧客体験の未来を見据えており、ECサイト上に直接組み込まれたAIエージェントとの対話が主流になると予想している。すでに2025年5月には自社のAIエージェントを発表している。
調査会社ガートナーによれば、2028年までに70%の顧客サービスが会話型アシスタントによって開始・解決されると予測されている。現在、Contentsquareの売上の45%はアメリカ市場からのもので、顧客は大中企業3,000社中小企業130万社に上る。正確な収益は非公表だが、数億ドル規模とされており、2026年までの黒字化を目指している。
Contentsquareの買収
- Pricing Assistant(価格最適化ソリューション)(2019年)
- Clicktale(イスラエルの競合企業)(2019年)
- Dareboost(ウェブサイトパフォーマンス分析)(2020年)
- Adapte Mon Web(オンラインコンテンツアクセシビリティ)(2020年)
- Upstride(コンピュータービジョン)(2021年)
- Hotjar(マルタの競合企業)(2021年)
- Ping Pong UX(ユーザーテスト)(2022年)
- Heap(カスタマージャーニー分析)(2023年)


2.        サフランが新しいカーボンブレーキ工場の建設地としてフランスを選んだ理由


 

サフラン社は、航空機用カーボンブレーキの新工場フランスオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏に建設することを発表した。候補地にはアメリカカナダも含まれていたが、最終的にプレーヌ・ド・ラン産業団地(PIPA)が選ばれた。これは、数十年ぶりに行われるサフラン社最大の産業投資であり、その額は4億5,000万ユーロに達する。
新工場は2030年に稼働を開始する予定であり、最終的には200人の高度人材雇用が見込まれている。年間2,000トン超のカーボン生産能力を持ち、現在のヴィルウルバン(フランス)ウォルトン(アメリカ)センダヤン(マレーシア)に続く4番目の拠点となる。
この決定には、EDF(フランス電力)による有利な電力料金提示が重要な要素となった。マクロン大統領はこれを「主権、再工業化、脱炭素、そして未来への選択」として歓迎し、EDFの提供する安価でクリーンな電力が世界的リーダーを引き寄せていると述べた。
フランス政府と地域からの支援は合計3,100万ユーロであり、これは総投資額の5%未満である。この工場誘致の成功は、EDFの国有化(2023年)や、産業政策を重視する体制へのシフトによって可能になったとされている。
また、サフラン社は、カーボンブレーキ市場約55%の世界シェアを持ち、エアバスA320、A330、A350ボーイング787などに搭載されている。1980年代に宇宙技術を航空機分野に応用して以来、業界をリードしてきた。
業績面では、2025年上半期の純利益が11%増の16億ユーロとなり、売上高は14.8億ユーロ(+13.2%)に達した。営業利益率は過去最高の17%を記録した。主力製品であるLeapエンジンの出荷数は729基(+10%)に達し、2025年の見通しとしては、売上成長10~12%営業利益50~51億ユーロフリーキャッシュフロー34~36億ユーロが見込まれている。


3.        エネルギー転換とデータセンターの台頭がフランスの産業の旗艦企業の成長をいかに促進しているか


 

複雑な地政学的環境世界貿易の減速にもかかわらず、Air LiquideSaint-GobainSchneider ElectricLegrandといったフランスの大手産業企業は、2024年上半期において堅調な業績を維持している。成功の背景には、バランスの取れたグローバル展開成長性の高い市場への注力、そして積極的な買収戦略がある。
Air Liquideは、売上高13.7億ユーロ(+2.6%)を記録し、再生可能水素および低炭素水素の分野でオランダにて3件の主要投資を実施。TotalEnergiesの精製施設の脱炭素化を支援する。
Schneider Electric売上高19.3億ユーロ(+6.4%)Saint-Gobain23.9億ユーロ(+3.4%)であり、ともに建物のエネルギー効率向上に注力。Saint-Gobainフィンランド・フォルッサ新型グラスウール製造法を導入し、製品のカーボンフットプリントを30~40%削減した。
Legrand売上高13%増の4.7億ユーロを達成し、エネルギー・デジタル分野で6社を買収。これにより2億ユーロの追加売上を見込む。AIやデータセンターの需要増加もこれらの企業にとって新たな成長分野である。
これらの企業は、世界的なM&A市場の低迷にもかかわらず、国外での買収戦略を継続。Saint-Gobainのようにアメリカ国内で125の工場を持ち、現地生産・現地消費モデル関税リスクを回避している。
一方で、ArcelorMittal米国の鉄鋼関税の影響を受け、売上高が5.5%減少し、307.2億ドルに。だが同社もアメリカ市場強化に動き、Nippon Steelの米国工場持分を取得し、ArcelorMittal Calvertと改称した。
EUの鉄鋼産業を巡る最大の懸念は、アジア勢との競争激化と、それに対抗する関税政策で出遅れている欧州の対応の遅さである。