フランス欧州ビジネスニュース2025年6月16日(フリー)

1. 原発建設:欧州、巨大な産業的・財政的課題に直面
2. エアバス、ル・ブルジェの航空ショーにて大型受注、視野に
3. 宇宙:欧州宇宙機関ESA、加盟国に大規模な予算を提案
4. ルカ・デ・メオCEO、ルノーを去る
5. ラ・タルト・トロペジエンヌ、クウェートで3年間に3店舗の出店が決定
6. タレス・アレニア・スペースCEO、衛星でスターリンクに挑戦状
7. 原子力発電の実質コスト:仏財務省、6月末までに決定
8. Maia Space、ノルマンディーのヴェルノンで2027年に新工場完成予定
9. マルク・フェラッチ仏産業エネルギー大臣、2025年9月前に、複数年エネルギー計画を発表したい
1. 原発建設:欧州、巨大な産業的・財政的課題に直面
欧州連合は、2050年までに2410億ユーロの投資を行い、気候中立の目標のもとで原子力を強化する計画である。そのうち2050億ユーロが新規原発の建設、360億ユーロが既存原発の延命に充てられる。投資は2030年代に年間300億ユーロ超、2020年代と2040年代には年間120億ユーロ超が必要と見込まれている。
2050年の原子力発電能力目標は109GWで、現在の98GWからの増加を狙う。もし計画が5年遅延すれば、能力は9GW減少し、追加で450億ユーロが必要となる。楽観シナリオでは144GW、悲観シナリオでは70GW未満となる可能性がある。
原子力分野は2050年までに18万〜25万人の人材を新たに確保する必要があり、うち10万〜15万人が建設、4万〜6.5万人が運転、4万人が廃炉関連である。たとえ成長がなくても、退職者の補充だけで約10万人の採用が求められる。
さらに、欧州はウランの転換(27%)および濃縮(38%)サービスで依存するロシアからの脱却を急ぐ必要がある。加えて、小型モジュール炉(SMR)の導入を進め、2050年までに17〜53GWの導入を目指し、その半分は熱や水素の生産に使う計画である。2040年には、欧州の電力の90%超が脱炭素電源(主に再生可能エネルギーと原子力)から供給される見込みである。
2. エアバス、ル・ブルジェの航空ショーにて大型受注、視野に
2025年ブルジェ航空ショーでは、エアバスが主役となり、数百機の受注が見込まれており、特に大型長距離機のA350に注目が集まる見通しである。大型機市場では、今後20年間で約9,000機の需要が予想され、エアバスはボーイングに対する劣勢を挽回しようとしている。ボーイングは2025年初頭以降、787および777Xで263機の受注を獲得したのに対し、エアバスは57機(そのうち47機がA350)にとどまっている。
エアバスは、燃費性能を向上させたロールス・ロイスTrent XWBエンジンの認証取得や、2027年に投入予定の貨物型A350Fおよび超長距離型を武器に巻き返しを狙う。A350はこれまでに1,391機の受注があり、生産は2028年までに月産12機に増加し、納入枠は2031年まで埋まっている。
主な受注先としては、リヤド航空がA350-1000を25機発注する可能性があり、これは2024年のA321を60機に続くものとなる。また、エティハド航空、エジプト航空(6機)、リース会社なども候補である。
単通路機では、ベトジェットがA321NEOを100機、エアアジアがA220を100機発注する見込みである。生産体制も強化され、2026年にはA320が月産75機、A220が月産14機に達する計画である。
3. 宇宙:欧州宇宙機関ESA、加盟国に大規模な予算を提案
ブルジェ航空ショーは今回初めて、宇宙分野に特化したホールパリ・スペース・ハブを設け、約60社(そのうち40社はスタートアップ)が参加することとなった。地政学的緊張とロシアの脅威を背景に、欧州は宇宙の自律性強化を目指している。欧州委員会は6月末に宇宙戦略と宇宙法を発表予定であり、欧州宇宙機関(ESA)は2026~2028年向けに230億ユーロの予算を求めており、これは2023~2025年の170億ユーロを大きく上回る。
計画中の3つのコンステレーションは、ガリレオの強化、安全な衛星通信、および超高解像度の赤外線光学偵察を目的としたものである。業界は2028~2034年の宇宙予算を400億~600億ユーロへと3倍に引き上げることを求めている。
一方、アメリカでは、1750億~8000億ドル規模の宇宙防衛構想が議論される一方で、NASAの予算は26 %削減され、ESAとの月・火星計画の協力体制が揺らいでいる。このため欧州は日本、インド、カナダとの代替的なパートナーシップを模索しており、SpaceXやStarlinkとの厳しい競争環境に直面している。