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フランス欧州ビジネスニュース2025年5月27日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年5月27日(フリー)
バイオテック企業Netri

1.        風力発電:フランスで建設される可能性のある初の海底ケーブル工場

2.        農薬:バイオテックNetri社、Ansesと提携し、独自のアルゴリズムを開発

3.        仏CLS社、インドネシア気象庁から史上最大の契約を獲得

4.        会計検査院、社会保障の赤字に警鐘を鳴らす

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7.        洋上風力発電:欧州のプロジェクトに暗雲

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1.        風力発電:フランスで建設される初の海底ケーブル工場


フランスの送電網運営者であるRTEは、洋上風力発電用のフランス初の海底電力ケーブル工場の建設に向けた入札を検討している。現在、同社が使用する海底ケーブルはスカンジナビアイタリアギリシャから輸入されており、国内では風車のタービンやブレード、洋上変電所、地上用ケーブルは製造されているが、海底ケーブルの国内生産は欠けている。
このプロジェクトは、2040年を見据えた送電網整備計画の一環であり、フランスの産業主権強化雇用創出を目指すものである。新工場に与えられる予定の受注額は100億ユーロ規模であり、これは欧州市場の15%に相当する。この受注額は、洋上風力発電の接続のために確保された370億ユーロの一部であり、RTEの総額1000億ユーロの投資計画に含まれている。
工場の稼働開始は2030年から2035年の間を想定しており、建設費用は最大で10億ユーロに達する可能性がある。関心を示しているとされる企業には、Nexans(フランス)Prysmian(イタリア)NKT(デンマーク)、Hellenic Cables(ギリシャ)などがあるが、いずれもコメントを控えている。
建設予定地として4つの港湾が候補に挙がっており、高さ数十メートルの塔と数千トンのケーブルを積載可能な専用船を備える必要がある。しかし、プロジェクトの正式な開始には、政府によるエネルギー多年度計画(PPE)の発表が必要不可欠であり、これは今夏に政令として出される見込みである。
だが、このPPEをめぐっては再生可能エネルギー推進派原子力支持派の間で対立があり、法案の行方は不透明である。RTEは、「政府の洋上風力への明確な方針が必要であり、今後の入札量が分散されるなら、我々の戦略や経済的見通しも調整する必要がある」と述べており、決定は政府の判断に委ねられている


2.        農薬:バイオテックNetri社がAnsesと提携、独自のアルゴリズムを開発


リヨンのバイオテック企業Netriは、農薬の神経毒性評価アルゴリズムの開発を目的に、フランス国家食品環境労働衛生安全庁(Anses)と科学的パートナーシップを締結した。この技術は、従来の文献調査や細胞テストに比べて高速かつ再現性の高い評価法を目指す。
Netriは現在、月に約200台のデバイスをリヨン工場で生産しており、2026年末までに2,000台への増産を目標としている。すでに170社の顧客を抱え、主に腫瘍学、ワクチン学、皮膚科学分野に展開しており、2024年の売上高は120万ユーロであったが、まだ収益化には至っていない。
このプロジェクトの初期投資として、2025年に20万ユーロを投じ、10種類の分子を対象に試験を開始。2026年には100種類を分析し、5年以内に科学的・規制的な認知を得ることを目指している。その上で、このパートナーシップを商業契約へ発展させることが狙いである。
この取り組みは、総額4億ユーロの欧州プログラムPARC(化学物質リスク評価パートナーシップ)にも連動しており、Netriは2030年に世界で年間80億ドル規模と予測される食品安全市場への参入を見据えている。
現時点では、Netriの売上の過半数がイギリス北米日本など欧州以外からであるが、米国の規制緩和の影響を受け、今後は欧州市場に軸足を置く戦略を取る。米国ではFDAの権限が弱まり、審査の遅延や信頼性の低下が懸念されている。
Netriは、Cherry BiotechOrakl Oncology4Dcellといったフランスの企業と共に、2028年に6億3,000万ドル、さらに2032年には50億ドルに達すると予測されるオルガン・オン・チップ(OoC)市場における地位確立を狙っている。


3.        仏CLS社、インドネシア気象庁から史上最大の契約を獲得


 CNESの子会社であるCLSは、インドネシア気象庁との間で、約1億ユーロにのぼる契約の第2フェーズを受注した。これは、2020年に実施された第1フェーズ(4,300万ユーロ)に続くもので、今回は5,100万ユーロの規模である。当初はアメリカがこのプロジェクトを担当する予定であったが、ドナルド・トランプ政権下で新興国支援が優先事項でなくなり、代わってフランス開発庁(AFD)が資金を提供する形となった。
第1フェーズでは、17,000の島々200台以上の気象観測機器(ドリフター・気象ステーション・沿岸レーダー)が設置され、海上利用者向けの予報ソフトウェアが整備された。インドネシアでは、海上輸送・漁業・海洋エネルギー・海底ケーブル設置など、海上経済活動が極めて重要である。
第2フェーズでは、人工知能(AI)をこのソフトウェアに統合し、沿岸洪水の早期警報の精度を高める。従来の流体力学に基づく決定論的モデルから、過去データに基づく経験的手法への移行が図られる。これは、インドネシアにおいて非常に多い洪水リスクへの対応強化を意味する。
2020年には、ジャカルタとその周辺での豪雨により約70人が死亡し、2007年には市域の30〜70%が水没し、30万人以上が避難した。また、2013年の調査によれば、ジャカルタは年間30センチメートルずつ海に沈んでおり、2050年までに3分の1の建物が水没する可能性がある。
CLSはこの大規模気象契約とは別に、インドネシアの伝統的漁船の追跡ソリューションの導入も進めており、これを6月にニースで開催される国連海洋会議で発表予定である。