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フランス欧州ビジネスニュース2025年5月13日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年5月13日(フリー)

1.        ミネラルウォーター:ペリエ事件の扱いをめぐってメーカーが対立

2.        ステランティス、ハイブリッド車部門でトヨタを追い抜く

3.        医薬:仏政府、償還対象となる医薬品の価格を引き下げる方針

4.        エシロール・ルクソティカ、フランスに最先端の工業施設を開設

5.        電力:イベリア半島、EUが目標とする相互接続比率(2030年)未達成

6.        7万点中1000分の1秒:停電故障の調査はスペインを緊張させ続けている

7.        サステナブルファンド、今年悲惨なスタート

8.        外国直接投資 : テクノロジー大手が好むドイツ

9.        政府、15歳未満のソーシャルネットワーク使用禁止という厄介な問題を再び取り上げる

10.  スタッド・ド・フランス国立競技場:国、運営権の受益者としてGLイベントグループを指定


1.        ミネラルウォーター:ペリエ事件の扱いをめぐってメーカーが対立


ネスレ問題に関する上院報告書の公表を控え、フランスのナチュラルミネラルウォーター協会(MEMN)は、水の純度や微生物群を損なわないという厳格な品質基準への強い支持を改めて表明した。MEMNは5社で構成され、フランス国内のナチュラルミネラルウォーター市場の40%を占める。
今回の声明は、ネスレ・ウォーターズが抱える問題を受けてのものである。ペリエを生産するヴェルジェーズの水源に対し、「微生物的逸脱」が確認され、専門家から否定的な評価が出された。これを受けてネスレは0.2ミクロンのマイクロフィルターを導入したが、これは水の自然な状態を変更するものとして規制違反とされ、ガール県の県庁から撤去命令が出された。
MEMNは、欧州指令の適用の調和化に関する議論には前向きである一方で、ナチュラルミネラルウォーターの本質を損なうような処理には明確に反対している。各水源固有のミネラル組成微生物群こそが、このカテゴリの独自性と価値を形成しているという立場を貫いている。
もしペリエが「ナチュラルミネラルウォーター」の認定を失えば、数千人規模の雇用地域経済全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある。ヴェルジェーズ工場では約1000人が働き、隣接するラングドック製瓶工場(164人)もすでに閉鎖の危機にある。

解説

フランスのナチュラルミネラルウォーター協会にペリエを擁するネスレは加入しておらず、同協会が自分たちの立場を守り、ペリエによるマイクロフィルター事件についてネスレとは反対の立場を取り、差別化を計ろうとするのは納得がいく。
同協会に加入しているのは
フランス国内のナチュラルミネラルウォーター市場の40%を占めるダノンの水ブランドEvianm、VolvicやBadoit,それ以外にQuezacなど。そういう意味でダノンの意向が同協会に色濃く反映されているもおかしくない。ダノン対ネスレという二大食品グループの対立構図がナチュラルミネラルウォーター問題で浮き彫りにされているとも言える。


2.        ステランティス、ハイブリッド車部門でトヨタを追い抜く


フランス・イタリア・アメリカの合弁企業であるStellantisは、2025年第1四半期において、欧州でのハイブリッド車販売でトヨタを上回り、首位に立った。Inovevのデータによると、Stellantisはこの期間に194,858台のハイブリッド車を販売し、トヨタを67,000台、ルノーグループを約100,000台上回った。商用車を含めると、その総数は約240,000台に達する。
同社が採用した技術は48ボルトマイルドハイブリッドであるが、数百メートルの完全電動走行が可能であり、従来のMHEVとは一線を画している。このシステムはわずか1年26車種に展開され、Stellantisの欧州市場におけるハイブリッド車販売比率を2023年の12%から2024年には24%へと倍増させた。
このシステムの中核であるeDCT変速機メス工場で生産され、2024年には400,000基を製造、2025年には100万基2026年には150万基の生産を目指している。400ボルトのシステムに比べて1,000ユーロ安く生産可能で、車体設計の大幅な改修も不要な点が急速な展開を可能にした。
しかし、Jato Dynamicsなど一部の専門家は、同システムを「本物のハイブリッド」と見なしていない。また、2030年までにCO2排出量を1kmあたり100g未満に抑えるというEUの規制目標に、この48ボルトシステムが対応できるかには疑問が残る。Stellantisは、小型車には今後3〜4年有効としつつも、中・大型モデルについては400ボルトへの移行が不可欠であることを認めている。


3.        医薬:仏政府、償還対象となる医薬品の価格を引き下げる方針


フランス政府は、医療保険の赤字が深刻化する中で、償還対象となる医薬品の価格を引き下げる方針を示している。同時に、イノベーションの促進製薬業界の国内誘致も狙っている。
2023年から2024年にかけて、社会保障の赤字は150億ユーロを超えた。また、医薬品支出は5.7%増加し、320億ユーロに達した(当初予測は4%)。販売数量ではなく、平均単価の高い医薬品への消費のシフトが主因である。
政府はCEPS(医薬品経済委員会)に対し、新薬の価格交渉を厳格に行い、さらに安価なハイブリッド医薬品の普及を促すよう求めている。
一方で、フランスは世界的な競争環境、特にアメリカとの競争に直面しており、戦略的な価格政策が求められる。製薬企業に対して魅力的な価格条件を提示しなければ、革新的医薬品の導入や国内生産の誘致が難しくなる。
政府はまた、強くて主権的な製薬産業の育成を目指しており、重要かつ革新的な医薬品に関しては価格引き上げも辞さない姿勢である。ただし、それは信頼できるデータに基づく必要があると強調している。
さらに、価格表示と実際の価格を分ける「リベート制度」の活用も検討されている。これは、国際的には高価格を表示しつつ、国内の公的医療保険には割引価格を提供する仕組みである。