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フランス欧州ビジネスニュース2025年12月22日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年12月22日(フリー)
汎用人工知能の新会社AMI Labsでフランスで過去最大級の調達を計画している元メタ社幹部ルカン氏

1.        現代AIの父の一人と称される元メタ幹部、フランス人のヤン・ルカン、汎用人工知能の新会社AMI Labsでフランスで過去最大級の調達を計画

2.        宇宙・防衛分野の衛星やミサイルに不可欠な、放射線耐性を備えたFPGAチップを開発する欧州唯一の企業、仏NanoXplore

3.        リチウム:ホワイトゴールドラッシュの勢いに乗るアルザス

4.        原子力発電:ノルマンディー地方、前例のない需要の急増に備える

5.        電力網:欧州委員会の送電網への権限巡り、フランスが激しく抵抗

6.        中国、フランスのクリーム「エル・エ・ヴィール」を含むヨーロッパの乳製品に一時的な関税を課す

7.        仏Ipsen、中国の研究機関Zaimingから抗がん剤の世界独占権を取得

8.        「信頼できるクラウド」として仏政府に初めて認定された米仏企業連合

9.        大手ヒートポンプメーカー仏アトランティック、まもなく日米企業の所有に

10.   合成航空燃料:航空会社が動きを見せる中、仏Verso Energy、目標を堅持

11.   ロボットタクシー:UberとBaidu、ロンドンの「ブラックキャブ」に攻勢

12.   ドイツ産業界、中国製クレーンをダンピングで欧州委員会に提訴


1.        現代AIの父の一人と称される元メタ幹部、フランス人のヤン・ルカン、汎用人工知能の新会社AMI Labsでフランスで過去最大級の調達を計画

Metaを退社したヤン・ルカンは、新会社AMI Labsの立ち上げに際し、5億ユーロという巨額の資金調達を計画している。これは、2023年1億500万ユーロを調達したMistral AIの記録を凌駕し、フランスで初めて創業と同時に評価額30億ユーロユニコーン企業が誕生することを意味する。2018年チューリング賞を受賞し、現代AIの父の一人と称されるルカンへの期待は極めて高い。
投資家がこれほどの関心を寄せる理由は、現在の大規模言語モデル(LLM)が直面している限界にある。ChatGPT以降に普及した従来のAIは、学習データの不足やハルシネーション(幻覚)、膨大なエネルギーコストといった課題を抱えており、性能向上の停滞が懸念されている。ルカンは、現在のAIは現実世界を真に理解していない「表面的な知性」であると指摘し、汎用人工知能(AGI)への到達には全く新しいアプローチが必要であると説いている。
その解決策としてルカンが掲げるのが、ワールドモデル(世界モデル)である。これはテキストの学習に依存するのではなく、物理世界をシミュレートし、行動の帰結を予測することで経験から学習する能力を備えた新世代のAIだ。この分野には、フェイフェイ・リーが率いるWorld Labsや、Googleテンセントといった巨大企業も参入しており、現実世界とAIを再接続する新たな開発競争が激化している。


2.        宇宙・防衛分野の衛星やミサイルに不可欠な、放射線耐性を備えたFPGAチップを開発する欧州唯一の企業、仏NanoXplore
 
フランスのNanoXploreは、宇宙・防衛分野の衛星やミサイルに不可欠な、放射線耐性を備えたFPGAチップを開発する欧州唯一の企業である。2013年の設立以来、従業員数は5名から150名に拡大し、米国勢が支配する市場で欧州の自律性を象徴する存在となった。同社は最近、兵器大手のMBDAとフランス公的投資銀行(Bpifrance)の防衛基金から2000万ユーロの資金を調達した。これまでに投じた1億2000万ユーロに加わる今回の増資は、産業界での信頼を固める戦略的な一歩である。
同社の強みは、米国の輸出規制に抵触しない「ITARフリー」の製品を提供できる点にある。今後4年から5年で、欧州内の米国製部品の50%を自社製に置き換えることを目標としている。売上高は昨年の1700万ユーロから今年は2000万ユーロに成長し、2026年には3500万から4000万ユーロを見込む。
生産面では工場を持たないファブレス体制を維持し、STマイクロエレクトロニクスと協力しつつ、最先端品については性能を重視して台湾のTSMCに委託している。欧州のチップ法だけでは主権の確保に不十分であるとし、性能を追求するためにアジアのサプライチェーンを活用する現実的な路線を歩んでいる。欧州における潜在的な市場は宇宙で2億ユーロ、防衛で最大6億ユーロに達するとみられ、同社はさらなる市場開拓を目指している。


3.        リチウム:ホワイトゴールドラッシュの勢いに乗るアルザス
 
フランス東部のアルザス地方で、地熱水に含まれるリチウムを巡る新たな資源開発競争が加速している。電気自動車用バッテリーに不可欠なこの資源に対し、ストラスブール電気(ÉS)やArverneグループ、さらにフランス鉱山大手のErametなどが参入を図っている。
1987年に掘削されたSoultz-sous-Forêtsの井戸を皮切りに、この地域では地熱発電が展開されてきた。現在、ÉSは年間10ギガワット時の電力を生産するほか、Rittershoffenの施設で産業用熱供給を行っている。ErametÉSと提携したAgeliプロジェクトを通じ、2030年までに年間約1万5000トンのリチウム生産を目指している。これはフランス国内需要の15から20%に相当する。
しかし、最大の課題は誘発地震である。2025年12月4日Haguenau北部でマグニチュード2.5の地震が発生し、以前にも民間企業の活動停止を招いた事例がある。周辺住民の不安は強く、規制当局による活動一時停止措置も取られている。これに対し事業者は、10箇所以上の観測拠点による24時間体制の監視や、企業間でのデータ共有によってリスク管理を徹底する姿勢を強調している。
また、現地での抽出以外にも、Viridian社が南米産の原料を加工する精製工場を2028年に稼働させる計画を進めている。2億9500万ユーロを投じるこのプロジェクトを含め、アルザスは欧州のバッテリー供給網における戦略的拠点となろうとしている。