フランス欧州ビジネスニュース2025年12月19日(フリー)
1. 太陽光パネルを100%リサイクル:ジロンド県Envie 2Eの野心的な目標
2. モロッコ、アフリカと欧州を結ぶガスハブとなるべく、国家規模のガス回廊計画を加速
3. EDF、EPR2原子炉の1号機から6号機までの間にコストを30%削減
4. スタートアップ:イタリアのサイバーセキュリティの新星、Exein
5. 通信事業者との合意、新世代衛星…スターリンクのフランスとヨーロッパへの進出計画
6. フランス、ヨーロッパで企業に最も高い税金を課している国のトップ 3
7. ラインメタル、民間事業からの撤退により防衛分野のリーダーとなることを目指す
8. 衛星群の台頭に直面して、再プログラム可能な衛星の革命
9. 需要の弱まり、中国との競争、競争力の欠如…苦境に立たされた欧州化学業界、ブリュッセルに対し、より迅速な対応求める
10. 「チャンピオンの育成に課題を抱えている」:米国と中国という強豪に直面しながら、欧州は量子競争に留まりたい
11. 原子力:新しい原子炉の建設の最前線に立っているこの二カ国
12. ポーランドが原子力発電所への資金提供をブリュッセルから承認された経緯
1. 太陽光パネルを100%リサイクル:ジロンド県Envie 2Eの野心的な目標
フランスのジロンド県サン=ルベにおいて、社会連帯経済企業であるEnvie 2E Aquitaine社が、太陽光パネルの完全リサイクルを目的とした新しいパイロットラインを稼働させた。このプロジェクトはCEA(原子力・代替エネルギー庁)が開発した技術を基にしており、欧州とヌーヴェル=アキテーヌ地域圏から100万ユーロの投資を受けている。
従来の技術ではリサイクル率が90%であったが、研磨技術を用いた新システムにより、銅、シリコン、銀といった高価値の素材を回収することで、損失ゼロに近い100%のリサイクル率を目指している。これは、アジア製パネルへの依存が強い太陽光発電セクターにおいて、国内で希少金属を確保するための戦略的な取り組みである。
現在の年間処理能力は3,000トンであるが、新ラインの導入により6,000トンへと倍増する計画である。同社は素材売却などを通じて2026年には収益化を見込んでおり、中古パネルの再利用事業も本格化させる。フランス国内では年間1万トン以上のパネルが回収されているが、将来的な廃棄量の急増に備え、今から高度なリサイクル技術を確立することが不可欠である。
2. モロッコ、アフリカと欧州を結ぶガスハブとなるべく、国家規模のガス回廊計画を加速
モロッコはアフリカと欧州を結ぶガスハブとなるべく、国家規模のガス回廊計画を加速させている。国内のガス需要は、エネルギー転換に伴い現在の12億立方メートルから2030年には120億立方メートルに達すると予測されている。この需要に応えるため、政府は約10億ドルを投じるプロジェクトの第1フェーズに向けて2つの国際入札を実施中である。
この計画では、2026年稼働予定のナドール・ウエスト・メド(NWM)港に浮体式ガス貯蔵再ガス化設備(FSRU)を配置し、そこからケニトラやモハンメディアといった主要工業地帯へガスパイプラインを接続する。これにより、自動車大手のステランティスや肥料大手のOCPといった企業の供給体制を強化する。
この回廊は、総工費250億ドルにのぼるナイジェリア・モロッコ・ガスパイプライン(大西洋アフリカガスパイプライン)の要となる。計13カ国を繋ぐこの巨大インフラは、沿線諸国の工業化を促進するだけでなく、ロシア産ガスに代わる供給源を求める欧州への安定供給路としても期待されている。2026年初頭に入札結果が確定し、2029年には最初の区間が稼働する見通しである。
3. EDF、EPR2原子炉の1号機から6号機までの間にコストを30%削減
フランス電力(EDF)は、6基の新型次世代欧州加圧水型原子炉(EPR 2)の建設費用が、前回予測より8%増の約728億ユーロに達すると発表した。この巨額の予算を抑えるため、EDFは「シリーズ効果」によるコスト削減を戦略の柱に据えている。具体的には、標準化と習熟度の向上により、2040年代に建設予定の最終号機(ビュジェ原発)のコストを、2029年3月に着工予定の初号機(パンリ原発)より約30%削減することを目指している。
このコスト削減の鍵となるのは、建設期間の短縮である。同一設計の原子炉を繰り返し建設する「複製効果」により、初号機から最終号機までに計32カ月の工期短縮を見込む。EDFは中国の産業手法を参考に、複数の工程を同時並行で進めることで、打設開始からわずか20カ月で主要配管の設置に着手できる体制を整えている。また、英国のヒンクリー・ポイントCでの経験も活用される。
しかし、この計画には慎重な意見もある。送電網運営会社のRTEは、電力需要が伸び悩む場合、新設よりも既存原発の寿命延長や短期的コスト競争力の高い分野への投資を優先すべきだと指摘している。将来の脱炭素化に原子力は不可欠だとする主張がある一方で、需要の不確実性から6基の新設が過剰になる可能性も議論されている。