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フランス欧州ビジネスニュース2025年12月18日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年12月18日(フリー)
Photo by Yannic Kreß / Unsplash

1.        ミサイル、衛星、装甲車、魚雷…500億ユーロ、ドイツ軍の超巨大発注

2.        欧州、産業救済のため大規模な炭素税拡大計画を発表

3.        Mistral, Publicis, Spotify…米国が欧州の大手デジタル企業に制裁を警告

4.        原子力:EDF、6基の新しいEPR原子炉の建設費用が728億ユーロに達すると発表

5.        量子技術:フランス、特許出願件数で欧州トップ3の国に留まる

6.        スタートアップの買収、フレンチテックの新たなミッション

7.        フレンチテック:エネルギー効率のスタートアップで統合が加速

8.        欧州、産業救済のため大規模な炭素税拡大計画を発表

9.        ベルリン、投資家を誘致するためにドイツ式の「政府系ファンド」を設立


1.        ミサイル、衛星、装甲車、魚雷…500億ユーロ、ドイツ軍の超巨大発注
 
ドイツ連邦議会の国防委員会は、2025年12月18日、1回の会議で過去最高となる約500億ユーロの軍事調達を承認した。2025年通年では、1件あたり2500万ユーロを超える大型契約が計103件、総額829億8000万ユーロに達するという歴史的な規模である。
調達内容は、イスラエル製の弾道弾迎撃ミサイル「アロー」やIRIS-T-SLMラインメタル社の偵察衛星(18億ユーロ)、プーマ歩兵戦闘車(40億ユーロ超)など多岐にわたる。また、46万人の兵士や職員の個人装備に210億ユーロを投じる。
フリードリヒ・メルツ政権は、2029年までに国防費をGDP(国内総生産)比3.5%に引き上げ、ドイツ連邦軍を欧州最強の通常戦力にすることを目指している。ボリス・ピストリウス国防相は、この大規模投資の目的が、2022年以降の地政学的変化に対応するための抑止力の完全な回復にあると述べている。現在、ドイツは徴兵制の改革を通じて、2035年までに現役兵士を26万人、予備役を20万人に増強する計画である。


2.        欧州、産業救済のため大規模な炭素税拡大計画を発表

欧州委員会は、2028年から炭素国境調整措置(CBAM)の対象を180の新たな品目に拡大することを提案した。この改革は、EU域内の産業が厳しい気候規則により競争力を失い、生産拠点が国外へ移転することを防ぐ狙いがある。主な対象国は中国インドトルコであり、従来の鉄鋼やアルミニウムに加え、自動車のドア洗濯機園芸用具といった加工製品まで網羅される。
特に中国などによるエネルギー源の虚偽報告といった不正を阻止するため、当局は疑わしい申告に対し、輸出国の平均炭素強度を用いた「デフォルト値」を強制適用する方針だ。また、欧州の輸出企業を支援するため、6億ユーロ規模の脱炭素基金も設置される。一方で、農業への打撃を抑えるため、肥料への課税についてはペナルティを1%に留めるなどの特例措置が設けられた。この計画は今後、欧州理事会と欧州議会で議論されるが、オンライン販売を通じた税逃れ対策や、世界貿易機関(WTO)の規則との整合性など、解決すべき課題も残っている。


3.        Mistral, Publicis, Spotify…米国が欧州の大手デジタル企業に制裁を警告
 
トランプ政権の復活により、米国と欧州連合EU)の間のデジタル紛争が深刻化している。米国政府は、EUの規制が米企業の競争力を不当に阻害していると主張し、欧州の主要企業に対して報復措置を講じる構えを見せている。具体的には、通商法301条に基づき、米国市場への依存度が高い欧州企業への追加課税やサービス制限が検討されている。
標的となっているのは、フランスのミストラルAI(米国売上比率20%、約6000万ユーロ)や、売上の60%以上(140億ユーロ)を北米で稼ぐ広告大手パブリシス、さらにキャップジェミニなどの企業だ。また、ドイツのシーメンス(米国売上210億ユーロ)やSAP(同110億ユーロ)、スウェーデンのスポティファイ(米国売上比率40%)も名指しされている。
米国側は、個別企業を直接脅すことでブリュッセルから譲歩を引き出そうとしている。これに対し、欧州委員会は、DMA(デジタル市場法)などの規則はすべての企業に公平かつ非差別的に適用されていると反論している。欧州側では、米国の圧力に屈せず、戦略的自律性を強化すべきだとの声も上がっている。