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フランス欧州ビジネスニュース2025年10月7日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年10月7日(フリー)
デジタルツイン型予防プラットフォームを開発する仏Integratome

1.        保護主義の大きな転換:欧州、中国製鉄鋼に市場を閉鎖

2.        自律型シャトル:仏Navya、驚きの復活

3.        独メルツ首相、2035年に予定されている内燃車の販売禁止を解除するよう呼びかけ

4.        ルノー、クラランス、ベネトン、ネオライナーの大西洋横断貨物船、最初の顧客

5.        フレンチテック : パーソナライズされた健康を提供するデジタルツイン「Integratome」

6.        サンゴバン、120億ユーロの新たな戦略計画を発表

7.        水素:業界、安定した規制ロードマップを求める

8.        サイバーセキュリティ:仏タレス、量子攻撃を無力化できる初のソフトウェアを開発


1.        保護主義の大きな転換:欧州、中国製鉄鋼に市場を閉鎖
 
欧州委は崩壊が進むEU鉄鋼産業を守るため、前例のない保護策を導入している。直接雇用は2024年に1万8,000人減、残存は30万人に縮小し、生産量は7年1億5,600万トン→1億3,000万トン未満、消費も1億5,300万トン→1億2,800万トンへ落ち込んでいる。新たな恒久的「セーフガード」は輸入割当を約半減し、欧州市場の開放部分を1割強に限定、超過分には関税25%→50%を課す。対象は約1,800万トンで、原産地ベースの迂回防止規定も設け、中国のダンピングを正面から抑え込む狙いである。価格影響は平均3%にとどまり、自動車1台50ユーロ、洗濯機1ユーロ程度と試算しており、「主権のための妥当なコスト」と位置づけている。並行して米政権(トランプ)と交渉を続け、対米輸出に課される50%関税の引き下げを狙い、対中過剰供給に対抗する大西洋横断の連携を模索している。攻守両面の産業政策として、欧州炭素国境調整措置CBAMの輸出側支援への拡張、クリーン電力の安定供給、グリーン鋼ラベル創設、欧州産含有要件や自動車・防衛などの需要喚起、公共調達の改革で脱炭素欧州鋼を優先する計画である。鉄鋼は間接で250万人の雇用を支え、戦略的サプライチェーンの要でもある。CECA創設から70年、欧州は鉄鋼の戦略重要性を再確認しており、この措置は最終的に加盟国と欧州議会の承認を経て実装される見通しである。


2.        自律型シャトル:仏Navya、驚きの復活
 
仏自動運転シャトルのNavyaが再建を加速している。昨年の破綻危機(Gaussin絡み)を経て、Macnica70%NTT30%を出資して再資本化し、2025年末までに山口京都府宮津など約20都市で実証運行を進めている。第三世代となる新型Evo 3を発表し、2025年の受注は約40台翌年50台超を見込む。R&Dはパリのラ・デファンスに集約し約100人体制、登記上の本社はヴィルールバンヌ、組立はサン=ヴァリエの工場で行っており、全社で約170人を擁する。安全要件に対応するため機能アーキテクチャを刷新し、制動系を強化、15席の車体デザインは維持しつつ、センサーとLiDARを追加して360°視野を確保している。欧州では責任主体の整理が未了のため公道では乗務オペレーター同乗が前提だが、私有地では完全自律も実施している。イタリア・リグーリア州インペリアでは、旧鉄路を歩行者・自転車とNavyaの混在専用道に転用する案件をコンソーシアムで落札した。創業以来の販売実績は約240台で、KeolisRATPTransdevDB Regioなどと実証を重ねる。国内ではEasymileが物流拠点に注力し、Millaがラ・ロシェルで試験中、欧州他社ではKarsan+Adastec、独Holon+Mobileyeが提携、日本ではNTTトヨタMayとも連携している。Navyaは車両・ソフト・運用を束ねる完全統合を強みとし、市場立ち上がり期の主役としてリードしようとしている。


3.        独メルツ首相、2035年に予定されている内燃車の販売禁止を解除するよう呼びかけ
 
独政府のフリードリヒ・メルツ首相が、EU2035年内燃車(ICE)新車販売禁止の見直しを要請し、「悪い禁止」と批判した。背景には中国勢の台頭と電動化移行の難航があり、BMWメルセデスフォルクスワーゲンも実現性に疑義を呈している。欧州委員会は先月、「可能な限り早期」の再検討方針を示し、現行規定の2026年再評価を前倒しする案が産業界から求められている。メルツは連立与党内の調整が続いているとしつつ、SPDカーステン・シュナイダー環境相は目標撤回に「まだ納得していない」と述べたと説明、自動車業界との会合前に政府内の統一見解を目指す構えである。政策論点として、トラックで不可欠なディーゼル技術の研究継続を「放棄すべきでない重大課題」と位置づけ、合成燃料の開発で内燃機関を将来的に「環境配慮」運用へ転換し得ると強調した。結果として、2035年目標は前倒し再検討実装設計の修正が焦点となり、欧州の競争力雇用産業戦略気候目標の均衡をどう図るかが問われている。