4 min read

フランス欧州ビジネスニュース2025年10月15日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年10月15日(フリー)
Photo by Manuel / Unsplash

 

1.        LVMHのラグジュアリーエンジンが再始動

2.        TikTok Shop:サービス開始から6か月、フランス市場における状況

3.        EDF、原子力発電所の生産性向上を継続

4.        グッチ、クロエ、ロエベが不当な価格統制でブリュッセルに罰金

5.        「AIサービスの需要が爆発的に増加している」:パブリシス、2025年の予測を再び引き上げ

6.        フランスの量子コンピュータの新たな希望、Isentroniq

7.        自動車修理・整備工場の強い味方、Vroomlyが海外進出

8.        ノルマンディーでエア・リキードが「グリーン」水素に賭ける

9.        無限のクリーンエネルギー:核融合スタートアップ企業の狂気の約束

10.  安価で安全:暗号通貨決済、企業の関心を集め始る

11.  仏メリディアム、保有株を決して売却しないファンドの秘密

12.  ステランティス、2029年までに米国に130億ドルを投資

13.  「フランスには『スタートアップ国家』がまだ存在する」:フレンチテック、成長のために湾岸諸国に目を向ける


1.        LVMHのラグジュアリーエンジンが再始動
 
LVMHの業績は底打ちの兆しを見せている。2025年1–9月の売上高は580.9億ユーロオーガニック−2%2024年同期607億)、中核のファッション&レザーは−6%、モエ・ヘネシーは−4%である。一方、第3四半期はグループ全体が+1%と持ち直し(上期−3%)、部門別ではファッション&レザー−2%、ワイン&スピリッツ+1%、香水・化粧品+2%、時計・宝飾+2%、セレクティブ流通+7%と「改善のポケット」が広がっている。地域では日本−13%(2024年の円安効果の反動)だが、アジア(日本除く)はトレンドが改善し、第3四半期+2%(第1四半期−11%から反転)。中国顧客は安定化に接近し、中国本土の売上は再びプラス、域外でも改善している。欧州と米国前年並みで、ロゼが堅調、シャンパンも再加速の兆しを見せる。ブランド別ではTiffanyがアイコニック戦略と店舗刷新(ミラノ、東京など)で好調、Vuittonは部門平均をやや上回り、Dior第3四半期に改善しつつもわずかに下である。流通ではDFSマカオ/香港で持ち直し、Sephora力強い成長とイベント「Sephoria」で顧客結束を高めた。関税摩擦などマクロ・地政学リスクは残り、同社は「自信と慎重」のスタンスを維持する。2026年上期にはJonathan Anderson就任後Dior初コレクションが店頭投入され、成長牽引役となる見込み。あわせてMaria Grazia ChiuriFendiアーティスティック・ディレクターに就任し、ブランドの欲求度強化を進めている。


2.        TikTok Shop:サービス開始から6か月、フランス市場における状況
 
TikTok Shopがフランスで拡大しているが、大手ブランドの参加は鈍い。狙いは中小事業者クリエイターで、ライブコマースを武器にフランスのユーザー(27.8百万人)の注意を奪う戦略である。手数料は仏ローンチ時5%(成熟市場は9%)で、4–9月の仏売上は7倍に増加、同時期開始の独・伊より伸びが大きいという。一方で出店者の中心は地場のPME等16,500社。ライブ配信6か月で87,000本に達するが、英の1日約6,000本には遠い。世界では2024年GMV 330億ドル(約20市場)、2025年上期だけで260億ドルと急拡大している。
しかしフランスではダイレクト販売文化の弱さ顧客データをTikTokが握ること、TikTok+クリエイターの二重コミッションといった障壁が大きい。FNAC Dartyなど一部小売はテスト中だが、売上は「限定的」で、マイクロインフルエンサー活用と数十SKUの絞り込みが必須とされる。伸びた例はエアフライヤー(Ninja)扇風機LED美顔マスク等。参加ブランドはL’Oréal ParisMaybellineNYXMixaSVRなどビューティが先行し、DIM(ランジェリー)、Tonies(玩具)、Red BullHachetteも名を連ねる。仏で月5万ドル超の売上達成はAprizo(ジュエリー)とNovete Life(浄水機)が確認されるのみで、現状は認知獲得>直販売上という位置づけが続いている。


3.        EDF、原子力発電所の生産性向上を継続
 
EDF
2025年の仏原子力発電量見通しを+15 TWh引き上げ、365〜375 TWhとした。背景には、2019年からの運用改善策「Start 2025」で定検停止の短縮が進んだことがある。9月末までに33停止のうち18が想定より短縮され、トリカスタンは20日、パリュエル17日カッテノン9日の前倒しとなっている。とはいえ、ピーク期の年平均400 TWh2000〜2015年)や過去最高の429 TWhにはなお届かず、2024年の実績361.7 TWhをわずかに上回る水準にとどまる見込みである。今後については慎重姿勢を崩さず、2026〜2027年350〜370 TWhのレンジを据え置き。2026年1月からはAP13001,300 MW級)の第4回10年定期検査が本格化し、パリュエルだけで3,500人が動員、最長18か月に及ぶ検査が40年超運転の前提となる。さらに、太陽光優先などの日内出力変動2024年26.5 TWhが失われ、スト渇水も可用性を左右している。増強策としては900 MW級のタービン出力向上が進む一方、新鋭のフラマンヴィルEPRの寄与は限定的で、2026〜2028年の平均発電は8.1 TWh(全体の約2%)にとどまる見通しだ。EPRは稼働累計約1年半後に炉蓋交換初の包括検査で長期停止予定で、停止内容・期間は精査中である。CREの報告では2029〜2031年の年平均は<360 TWhと、2026〜2028年並みか下回る。一方で2030年に理論上の能力400 TWhを目指す目標は維持しており、57基の既設群での効率化に注力している。最大の不確実性は国内電力需要の停滞で、卸電力価格とEDFの資金力を圧迫しうるが、輸出は昨年過去最高を記録しており外需での吸収も視野に入れている。