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フランスビジネスニュース2025年4月18日

フランスビジネスニュース2025年4月18日

  1. 「フランスを選ぼう」:エマニュエル・マクロン大統領が国際研究者のための受け入れプラットフォームを立ち上げ
  2. フランスの事業創出にとって暗い年の始まり
  3. サノフィのmRNAワクチンへの復帰、目標に近づく
  4. ガール工場で汚染されたペリエのボトルが発見される
  5. ブリュッセル、フランスの2つの潮力タービンプロジェクトに援助の手を差し伸べる
  6. リアルタイム天気予報を提供するスタートアップ企業、セレスト・サイエンス
  7. スタートアップ企業Quandela、OVHcloudの元社長に海外市場への飛躍を期待
  8. 仏政府、産業の脱炭素化に4億ドルを投資
  9. 他のコンゴマリット同様、ABBも複数の部門に分割予定

1.「フランスを選ぼう」:エマニュエル・マクロン大統領が国際研究者のための受け入れプラットフォームを立ち上げ


エマニュエル・マクロン大統領は、国立研究機構(ANR)が運営する新たなプラットフォーム「Choose France for Science」の開設を発表した。本プラットフォームは、France 2030の枠組みにおいて、世界中の研究者を対象に、フランスでの受け入れを促進するものである。
大学や研究機関は、研究者の受け入れプロジェクトに対して最大50%までの国家による共同資金提供を申請することが可能である。健康、気候と生物多様性、デジタルと人工知能、宇宙、農業と食料、脱炭素エネルギーといった分野が対象となる。
さらに、1億ユーロの支援基金が政府および欧州資金により準備されていると報じられている。採択された研究者は、2年以内に国際的あるいは欧州の競争的プロジェクト(ERCやEICなど)を提出する義務がある。
マクロン大統領は、5月5日にさらなる詳細を発表する予定である。


2.        フランスの事業創出にとって暗い年の始まり


フランス国立統計経済研究所(Insee)によると、2025年第一四半期の新規企業登録数は、前年同時期と比較して2.9%減少した。3月4か月連続で減少し、季節調整済み1.3%の落ち込みとなった。
2025年1月から3月までの間に設立された企業は275,140社であり、これは2024年に記録された110万社超の新規設立という過去最高の年の後の軽微な減速である。特に、従来型の個人事業主の設立が17.4%減少し、全体の低下に大きく影響した。
また、マイクロアントルプレナー制度に基づく登録も1.6%減少し、政府が小規模事業者向けの付加価値税(TVA)の適用基準見直しを検討する中で、議論が高まっている。このTVA改革案は多方面からの反発を受け、現在は6月1日まで停止中である。


3.        サノフィのmRNAワクチンへの復帰、目標に近づく


製薬大手サノフィは、リヨン近郊に新たなmRNAワクチンの研究開発センター「XL」を開設した。総投資額は1億2,000万ユーロであり、そのうち800万ユーロオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏と欧州によって支援された。
この14,000平方メートルの施設には300人が勤務し、10種類程度のmRNAワクチン候補の開発が進められており、うち2種類は第3相試験に近い段階にある。季節性インフルエンザH5型鳥インフルエンザ由来のパンデミック対策、RSウイルス(気管支炎)などが対象である。
また、サノフィはこの分野に対して年間2億5,000万ユーロを投資しており、フランスのマルシー=レトワールとアメリカのウォルサム拠点で研究開発を分担している。製造は、ヌーヴィル=シュル=ソーヌのModulus新工場と、バル=ド=ルイユの製剤工場(投資額8,000万ユーロ)で行われる予定である。
サノフィ・フランスの責任者によれば、同社は全体の売上のわずか3%しか占めないフランスに対してもR&Dの30%を投資しているとのことであり、ノルマンディーの工場をアメリカに複製する予定は現時点でないとしている。


4.        ガール工場で汚染されたペリエのボトルが発見される


ネスレ・ウォーターズ社は、ペリエ水のボトリング工場であるヴェルジェー
ズ(ガール県)において、深刻な衛生問題に直面している。技術的介入の後、病原性腸内細菌(エンテロバクター)が検出され、生産ラインが停止し、75センチリットルのボトル約30万本(369パレット分)が工場内で保留となった。
また、50センチリットルボトルの多数可培養微生物の過剰検出により出荷が保留されている。オクシタニー地域保健局(ARS)は、これらロットの全量廃棄の可能性を示唆している。
問題の発覚は3月11日であったが、正式な報告は3月21日10日間の遅延があり、企業の対応の遅さも批判されている。ネスレは「影響はない」としつつも、内部調査の実施を表明した。
さらに、ヴェルジェーズの水源の鉱泉水認可更新が審査中であるが、複数の報告書が否定的意見を示しており、認可の継続は不透明な状況である。


5.        ブリュッセル、フランスの2つの潮力タービンプロジェクトに援助の手を差し伸べる


欧州連合は、ノルマンディー沖に設置予定のフランスの2つの潮流発電プロジェクトに対し、5,000万ユーロ超の資金を拠出した。
1つ目のプロジェクト「FloWatt」は、HydroQuest社Qair社によって推進され、2,000万ユーロのEU助成金を受けた。これは、フランス政府からの7,500万ユーロと合わせて、総額9,500万ユーロの公的資金を確保している。出力17MWの発電所には垂直軸タービン6基を設置し、2028年の稼働開始を予定している。
2つ目の「NH1」プロジェクトは、Normandie Hydroliennes社主導で、3,130万ユーロの資金を得た。出力3MWのAR3000型タービン4基を備え、総出力12MW、総投資額は9,000万ユーロと見積もられている。
両プロジェクトは、ヨーロッパで最も潮流が強い海域の1つ「ラ・ブランシャール海峡」に設置される予定である。政府は2030年までに250MWの公募を実施し、さらに2035年までに最大500MWの追加公募も検討している。最終的な投資判断は2025年末に下される見込みである。


6.        リアルタイム天気予報を提供するスタートアップ企業、セレスト・サイエンス


2023年に設立されたモンペリエのスタートアップ「Celest Science」は、気候科学人工知能を組み合わせて、極端気象リスクの予測を行っている。開発されたモデルは、2週間から6か月先の予測が可能であり、今後は最長10年間の予測にまで拡張する予定である。
同社は、Astorya.vcPlug and Play、および16人のビジネスエンジェルからなる投資家グループから、200万ユーロの資金を調達した。これにより、干ばつ、洪水、ひょうなどのリスクや、再生可能エネルギーの生産予測エネルギー需要貯蔵管理などのユースケースに対応するソリューションが提供されている。
このスタートアップは、保険およびエネルギー業界を主要ターゲットとしており、Allianzのアクセラレータープログラムにも採択されている。また、従業員数は9人で、主にAI技術者(ポリテクニークやパリ鉱山学校出身)がモンペリエ本社とパリに分かれて勤務している。


7. スタートアップ企業Quandela、OVHcloudの元社長に海外市場への飛躍を期待
 

OVHcloudの元CEOであるミシェル・ポーラン(Michel Paulin)氏が、2025年4月にフランスの量子コンピュータ・スタートアップ「Quandela」の取締役会に参画した。64歳の彼は企業経営の第一線を退いたが、国際的なビジネス経験を活かし、Quandelaのカナダ、中東、アジア、そして特に米国市場への展開を支援する。
Quandelaは、2023年11月に5,000万ユーロの資金調達を行っており、現在は1億ユーロ超新たな資金調達に向けて投資家との交渉を開始した。これは、2023年1月に同額を調達したライバル企業Pasqalに対抗するためである。
ポーラン氏は、米国市場の戦略的重要性を強調し、現地での成功には知的財産の保護適切なパートナーの選定が不可欠であると述べている。また、Quandelaにとっては株式上場は時期尚早であるとも指摘している。


7.        「もう無理だ」:サフランの社長オリヴィエ・アンドリエスは、環境保護主義者にうんざり
 

サフラン社の最高経営責任者(CEO)であるオリヴィエ・アンドリエス氏は、エコロジスト系市政に対して強い批判を表明し、「このような自治体にはもう投資しない」と断言した。これは、8,000万ユーロ規模、500人の雇用を見込むレンヌでの新工場プロジェクトが地元自治体の支援にもかかわらず、エコロジストから批判を受けていることに起因している。
同プロジェクトは中止されておらず、2025年5月7日に起工式が予定され、2027年に稼働開始の見込みである。さらに、4億ユーロの新たな炭素ブレーキ工場建設も計画されており、フランス・米国・カナダ(ケベック)が候補地となっている。
サフランは世界で10万人を雇用し、その半数がフランスに所在する。研究開発の90%もフランスに集中している。2024年には6,500人を新規採用し、同年に過去最高の業績を記録した。
アンドリエス氏は理工系エリート(X-Mines)出身であり、25年以上の航空業界経験を有する。A350成功の立役者であり、電動エンジンENGINeUSや次世代低燃費エンジンRISEといった革新を主導した。マイクロテクニカ買収問題アリアン6計画の歪みに対しても毅然とした態度を示し、事実に基づく発言を貫いている。


8.        仏政府、産業の脱炭素化に4億ドルを投資

予算の制約がある中でも、フランス政府産業の脱炭素化への取り組みを継続している。「フランス2030」という5年間で540億ユーロの投資計画の一環として、約4億ユーロが新たなプロジェクトに充てられる予定である。企業は、ガスボイラーをバイオマス(植物または動物由来)に置き換えるための補助金を受けることができる。ダンケルクのような大規模工業地帯では、熱供給ネットワークを活用した脱炭素化の協力体制を構築するための準備作業も支援の対象となる。
また、小規模企業向けの「迅速な脱炭素の小さな成功」に向けた公募プロジェクトも用意されており、たとえば熱供給ネットワークへの配管接続などが対象となる。2023年に加速した脱炭素化の動きであるが、2024年の温室効果ガス排出量の削減率はわずかに1.8%と鈍化している。


9.        他のコンゴマリット同様、ABBも複数の部門に分割予定
 

スイスとスウェーデンの複合企業ABBは、2026年ロボティクス部門株式上場させる計画である。この部門は7,000人を雇用し、2024年には23億ドル(約20億ユーロ)の売上高を記録しており、ABBの総売上の約7%を占めている。ABBは、電化やデータセンターなどのより収益性の高い分野に注力するため、ロボティクス部門の独立運営を目指している。
この戦略は、ゼネラル・エレクトリックシーメンスフィリップスなど他の大手コングロマリットの動きと一致しており、非中核事業の切り離しが進んでいる証左である。ABBは、新会社の株式を既存株主に分配する方法を採用する予定である。
この発表を受けて、ABBの株価は5%上昇し、市場の反応は好意的であった。ABBは、2025年の売上成長率を5%と見込んでおり、米国での生産強化のために1億2000万ドルを投資し、2つの新工場を建設する計画である。