日刊フランス欧州経済 2026年7月7日 (フリー)
1. 米国製AIの高騰受け、欧米企業や公的機関で安価な中国製モデルの採用が急増
2. 独防衛電子大手のタレス、エグザイルの買収で合意し水中ロボット市場を強化へ
3. 仏アルザスで地熱とリチウムの同時抽出事業が進行、地震を懸念する住民との融和が課題
4. 仏政府が国費負担なしの電動化計画第2幕を始動、ガス規制やEV普及を推進
5. 欧州AI法の高リスク規制適用が延期、不透明な定義に企業の混乱と懸念が広がる
6. 仏電力市場で供給過剰によりマイナス価格急増、需要減と原発の調整難が背景に
7. 巨額投資でもPFAS除去は排出量の2%未満、拡散が原因で専門家は規制強化を提言
1. 米国製AIの高騰受け、欧米企業や公的機関で安価な中国製モデルの採用が急増
米国製AIの利用料高騰を受け、欧米企業や公的機関で安価な中国製オープンソースAIの採用が急増。コストが10分の1に抑えられる点や、自社インフラでホストでき安全性を確保できる点が評価されている。
地政学的緊張やアメリカによる先進モデルへの規制、そしてIA(人工知能)の利用料金の高騰を背景に、多くの欧米企業が中国製のオープンソースモデルを採用し始めている。政治的思想やデータの安全性に対する懸念から、かつては中国製モデルの使用を公言することはタブー視されていたが、現在ではその流れが大きく変わりつつある。
性能の向上と多様な選択肢
中国のIAエコシステムは急速に進化しており、DeepSeekのV4、MiniMax、アリババのQwen 3.5、MoonshotのKimi K2.7などが世界中で多くダウンロードされている。さらに、Zhipu AIが開発したGLM 5.2は、コーディングやサイバーセキュリティの分野で、アメリカのAnthropic社が開発したMythos 5に匹敵する実力を示している。アメリカのAirbnbやPinterest、Shopify、Uber Eatsといった大手企業もすでに中国製モデルの導入を認めている。
圧倒的な低コストとデータの独立性
企業が中国製モデルを選ぶ最大の理由は、価格とデータ管理の独立性である。クラウド経由で高額なサブスクリプション料金を支払うアメリカの商用モデルとは異なり、オープンソースモデルは自社のインフラに構築できるため、外部へのデータ流出を防ぐことができる。
現在、多くの最高技術責任者(CTO)が「トークン戦争」と呼ばれるコスト高騰に直面しており、IAの消費量増加に伴って請求額が5倍から10倍に跳ね上がっている。性能面において中国製モデルはアメリカ製に比べ約10%劣る場合もあるが、コストが10分の1に抑えられるため、費用対効果の観点から非常に魅力的な選択肢となっている。
欧州や公的機関への広がり
フランスや欧州のビジネス界でもこの傾向は加速している。シーメンス、ルノー、オレンジといった大手グループは、アメリカ製モデルへの依存を減らすためにハイブリッドなアプローチを模索している。特に銀行、医療、防衛といった厳格な規制下にある機密性の高い分野において、データ転送を行わずに独立して運用できるモデルの需要が高まっている。
さらに、フランスの政府機関であるDinum(デジタルインターミニストリー局)は、データ流出を避けるためにコーディング作業へQwenを導入している。フランスのDGA(兵器総監部)も、サイバーセキュリティなどの重要業務に中国製モデルの技術要素を活用しているとされる。ただし、思想的な「中国特有の偏向(バイアス)」への懸念から使用を中止した機関もあり、倫理的な対話用途と、技術的なコーディング用途とで使い分けることが重要視されている。
2. 独防衛電子大手のタレス、エグザイルの買収で合意し水中ロボット市場を強化へ
防衛大手のタレスがサフランとの交渉決裂を経たエグザイル社の買収に合意。水中ロボット戦や航法システム市場の急拡大を視野に、防衛向けドローン事業などの強化と将来的な完全子会社化による売上相乗効果を狙う。
防衛電子機器大手のタレスは、サフランとエグザイル・テクノロジーズの交渉決裂を経て、急転直下でエグザイルの買収合意を発表した。エグザイルは機雷掃海ドローンや航法システムの専門企業である。タレスは週末の間にゴルジェ家が保有する35.51%の株式取得で合意し、2028年初頭までに公開買付け(OPA)を実施して100%の完全子会社化を目指す。
買収額は企業価値ベースで39億ユーロ(1株134ユーロ)であり、サフランの提示額を上回る。この買収により、タレスは防衛向けの自律型海洋ドローンシステムや水中ロボット戦の市場における地位を強化する。水中ロボット戦の世界市場は、2030年までに現在の8倍である7000億ドル以上に急拡大すると予測されている。また、中東情勢の緊張悪化を背景に、エグザイルの受注残高は10億ユーロ以上に達している。
さらに、両社はGPSが制限された環境下で機能する慣性航法システムでも補完関係にあり、需要は非常に高い。タレスは、独占禁止法上の問題はないとみており、今後10年間で累計5億ユーロの売上シナジーを期待している。これにより、2030年までに6000万ユーロ以上、2032年までに9000万ユーロ以上のEBIT(利払い前税引き前利益)の増加を見込んでいる。