日刊フランス欧州経済 2026年6月8日 (フリー)
1. サノフィと仏Owkinが新提携、AI活用で医薬品開発期間の半減目指す
2. 仏ポート・ラ・ヌーヴェル港にe-SAF工場建設へ 加企業が発表
3. 窒素肥料倍増で食料安保に懸念 仏政府、輸入依存低減へ「肥料計画」を加速
4. 大手出身の女性起業家が牽引、仏発スキンケアブランドが海外進出を加速
5. インタビュー : 欧州AIの未来と課題:人材・インフラの強みと市場分断対策
6. 欧州航空業界、国際便へのETS適用拡大の見送りをEUに要望
7. 有事の運賃高騰で得た巨額利益、ギリシャ海運界が新型船へ一斉再投資
8. 2035年EV化目標維持へ、欧州7カ国が阻止少数を確保
9. 欧州の医療費抑制策、製薬大手の投資縮小を誘発
10. イタリア、脱原発方針を転換 下院で原発新設の枠組み法案可決
1. サノフィと仏Owkinが新提携、AI活用で医薬品開発期間の半減目指す
サノフィと仏Owkinは医薬品開発加速へ5年間の新提携を締結した。AIアシスタントの導入等で研究を効率化し、開発期間の半減を目指す。製薬業界では開発効率化を巡るAI投資と競争が世界的に激化している。
提携の延長と目的
大手製薬会社サノフィと、生物学へのAI適用を専門とするフランスのスタートアップ企業Owkinは、医薬品の研究開発を加速させるため、新たに5年間のパートナーシップを締結した。両社は2021年から協力を開始しており、サノフィは当時1億8000万ユーロを投じてOwkinの株式の10%を取得している。初期の提携では、腫瘍学における新たな治療標的の特定や既存分子ポートフォリオの最適化に成果を上げた。
ソフトウェア化とAIアシスタントの導入
今回の新たな契約では、プロジェクト単位の支援からソフトウェア形態でのサービス提供へと移行した。Owkinはサノフィの科学者向けにAIアシスタントを提供し、今後は製薬会社個別のエージェント型AIを構築していく。サノフィが最初に活用するエージェントは、競合他社が開発する分子の特異性を理解し、その成功確率を判断する競合他社動向の監視(ベンチマーク)ツールである。これは、先にOwkinと契約したアストラゼネカが独占権を保持しなかったため、サノフィでの利用が可能となった。
製薬業界におけるAI活用の拡大
新CEOの下で研究プロセスの効率化を目指すサノフィは、複数のデジタルアクセラレーターを設立し、生産から研究に至る全社的なAI配備を進めている。AIの導入により、通常10年かかる医薬品の研究開発期間が5年へと半減することが期待されている。製薬業界全体でもAI投資は活発化しており、米イーライリリーがエヌビディア(Nvidia)と提携して10億ドル規模の共同研究施設を設立するなど、製薬AIをめぐる競争は世界的に激化している。
2. 仏ポート・ラ・ヌーヴェル港にe-SAF工場建設へ 加企業が発表
フランスのポート・ラ・ヌーヴェル港でe-SAF製造工場の建設が発表された。EU規則を背景に普及が期待されるが、製造コストの高さや行政手続き、航空会社の反発といった市場確立への課題も山積している。
フランス南部のポート・ラ・ヌーヴェル港は、浮体式洋上風力やグリーン水素を軸としたエネルギー移行の拠点を目指している。2026年5月中旬、カナダのSAF+IG社は同港にe-SAF(持続可能な合成航空燃料)の製造工場の建設を発表した。投資額は約7億ユーロで、2030年までに年間約7万5000トンの生産を目指し、100人の直接雇用を創出する計画である。
進む代替燃料プロジェクトと規制
この動きはマルセイユ・フォス地区の「H4 Marseille-Fos」(2030年に7万5000トン計画)や「NeoCarb」(5万トン計画)といった先行プロジェクトと呼応している。背景には、航空業界に持続可能燃料の段階的な導入を義務付けるEUの「RefuelEU Aviation」規則がある。e-SAFは、バイオマス(生物資源)の供給量に左右されず、既存の航空機エンジンをそのまま使用できる利点がある。
直面する課題
しかし、市場の確立には以下の課題が存在する。
- 高コストとエネルギー消費:製造に膨大な電力を必要とし、コストは従来のケロシンの約5倍に達する。
- 事務手続きと住民の合意:環境認可や行政手続き、今後の公聴会を通じた社会的受容性の確保が必要である。
- 航空会社の反発:価格上昇による競争力低下を恐れる航空会社は規制の緩和を求めており、市場の先行きに不透明感が残る。