日刊フランス欧州経済 2026年6月5日 (フリー)
1. 仏床材大手タルケット、完全同族経営で長期投資を優先 26年W杯にも採用
2. 欧州唯一のリジン製造拠点を保護、仏政府が食料・保健の主権確保へ出資
3. 仏EDF、北米再エネ事業の売却交渉 40億ユーロ超の規模
4. 仏自動車部品大手がAI時代の冷却需要を捕捉、多角化戦略で北米の大型契約獲得
5. セメント不使用のコンクリートブロック生産へ、CO2固定化技術も導入
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1. 仏床材大手タルケット、完全同族経営で長期投資を優先 26年W杯にも採用
床材等の世界的大手である仏タルケット社は、株式の同族保有に戻し長期投資を優先する戦略をとる。地産地消の生産体制や環境配慮のリサイクル事業を強みに、2026年W杯への採用や事業拡大を進めている。
フランスの同族企業であるタルケット(Tarkett)は、床材およびスポーツ用表面材のグローバルリーダーとして世界を席巻している。2026年のサッカー・ワールドカップ(W杯)米国大会では、3つのスタジアムに同社の特許技術であるハイブリッド芝「グラスマスター(GrassMaster)」が採用され、フランス代表の合宿地クレールフォンテーヌでも使用されている。
100カ国以上で商業展開する同社は、従業員1万2000人を抱え、売上高は33億ユーロ(約半分は北米)に達する。スポーツ部門が事業の3分の1を占めるが、それ以外にも病院、学校、オフィス、住宅などあらゆる施設の床をビニール、リノリウム、じゅうたんなどの素材で覆っている。
同社の歴史は1880年に始まった。フェルト製造のソメール家と中敷き製造のアリベール家という2つの創業家が1972年に合流してソメール・アリベールとなり、1997年にタルケット社を買収して床材世界一を目指す体制が整った。一時期は外部資金の導入や上場も経験したが、短期的な利益を求める株式市場の圧力を嫌い、2025年に株を100%同族保有に戻した。現在は第4世代の従兄弟たちが監査役会を通じて長期的な投資を優先する戦略を支えており、直近5年間は配当をゼロにして事業投資に回している。
強みは世界20カ国に配備された33個の工場による高い生産能力である。地産地消の体制により物流の停滞や地政学リスクに対応し、アジア製との差別化を図っている。また、ルクセンブルクのR&Dセンターでは60人以上の技術者が開発に挑み、55カ国で137個の特許を保有する。秋に発売予定の新製品「ステラー(Stellar)」や、100%リサイクル可能な人工芝「オリジン(Origin)」など、環境に配慮した「緑のイノベーション」にも注力している。
リサイクル素材の比率は現在20%を超え、2030年までに30%に引き上げる目標を掲げる。世界29カ国で展開する回収プログラム「リスタート(ReStart)」を通じて顧客から施工クズや廃材を回収・再利用しており、これが環境基準の厳しい大型案件での強力な商業的武器となっている。同社は今後5年間でスポーツビジネスの規模を2倍に拡大する計画である。
2. 欧州唯一のリジン製造拠点を保護、仏政府が食料・保健の主権確保へ出資
フランス政府は、中国との価格競争で危機にある欧州唯一のリジン製造企業へ資本参加する方針だ。親会社と共同増資を行い、食料や保健分野の主権と雇用を維持しつつ、EUに中国への関税措置を働きかける構えである。
フランス政府は、欧州唯一のリジン製造企業であるユーロリジン(Eurolysine)の株式を取得し、株主となる方針を固めた。同社は畜産の飼料や医薬品に不可欠なアミノ酸であるリジンを製造する戦略的企業であるが、中国企業の非常に激しい価格競争にさらされ、資金繰りの悪化から300人の雇用とサイトの存続が危機に瀕していた。
今回の救済措置では、総額5000万〜1億ユーロ(数千万ユーロ)規模の増資が行われる。そのうち、政府が45%を出資して資本参加し、取締役会に加わる。残りの55%は、親会社である農産物メジャーのアヴリル(Avril)グループが拠出する。2026年6月5日、セバスティアン・マルタン工業担当副大臣や地域圏知事、アヴリルの会長らがアミアンの工場を訪問し、正式に合意書に署名する。
この共同出資により、食料および保健分野の主権確保に直結する同工場の従業員と経営陣に対し、少なくとも2年間の事業継続の見通しを提供する。フランス政府はこの猶予期間を利用して、欧州委員会(ブリュッセル)に対し、中国製品に関税を課すための不当廉売(アンチ・ダンピング)防止手続きを加速させ、商業保護措置の確立を目指す方針である。