日刊フランス欧州経済 2026年6月26日 (フリー)
1. 猛暑:原発停止により、真夏に異例のガス火力発電への依存を招く
2. 仏財務省が中国製AIの実験を停止、回答の「偏り」警戒し国産AIへ切り替え
3. 仏の金利負担が急増、26年に770億ユーロへ 会計院が債務の悪循環を警告
4. 仏裁判所、トタル社に顧客CO2排出量を含む警戒計画の修正を命令
5. 猛暑対策へ「涼しさの教義」を、エアコン是非論を超え公衆衛生の戦略確立へ
6. ロレアルがAIで美容革命、量販店向け製品の個別提案と店舗融合で15億人顧客へ
7. フランスと欧州、電気相互接続の資金調達を巡り火花
8. 欧州の衛星周波数制限案にSpaceXが反発 ウクライナ支援への影響を警告
9. 政府の税制優遇と市場の魅力で躍進するイタリア医薬品産業、欧州第2位の生産国へ
10. 仏伊の異なる産業強みを相互補完し原子力セクターから欧州の戦略的自立を目指す
1. 猛暑:原発停止により、真夏に異例のガス火力発電への依存を招く
歴史的な猛暑による環境規制やメンテで、仏原発の約3分の1が停止中である。エアコン普及で夏期の電力需要が急増しており、EDFは気候変動に対応するため、従来のメンテ計画の見直しや設備適応を迫られている。
歴史的な猛暑により、EDF(フランス電力)の原子力発電所では環境保護を理由に3基、定期メンテナンスのために15基の原子炉が停止している。フランス国内に57基ある原子炉の約3分の1が稼働しておらず、供給の余力が制限されている。
夏の規制は原発の安全上の問題ではなく、高温時に排水が河川の生態系へ与える悪影響を防ぐための措置である。当局やRTE(送電網管理会社)は、電力供給の即時リスクはなくフランスは依然として電力の純輸出国であるとするが、エアコンの普及により夏期の熱感応性(気温上昇に伴う電力需要の増加)が新たな課題となっている。かつては気温が1度上がるごとに0.3GWの需要増であったが、現在は0.7〜1GWに達しており、水曜日の日中には最大58.8GWの需要を記録した。
太陽光発電がフル稼働する日中や夜間でも電力を補うためにガスや重油の火力発電所が稼働しており、36GW程度に留まる原発の供給量を補う状況が生まれている。
今後、気候変動による猛暑とエアコンの普及がさらに進めば、冬期のみならず夏期の需要ピークにも備える必要がある。そのため、EDFは冬の稼働率最大化だけを意識した従来のメンテナンス計画の見直しを迫られる可能性がある。EDFは2040年までに87億ユーロを投じて気候変動への設備適応を進める方針である。
2. 仏財務省が中国製AIの実験を停止、回答の「偏り」警戒し国産AIへ切り替え
フランス財務総局は、中国アリババ製のAIモデル実験を利用停止とした。回答に中国寄りの偏りがあったためである。情報漏洩はなかったが、即座に仏企業ミストラルAIのモデルへ代替され、導入計画は継続する。
フランス財務省(Bercy)の財務総局(DGT)は、2026年6月23日、実証実験中であった中国アリババ製の人工知能(AI)モデル「Qwen AI」の利用を停止した。これは、出力された回答に「中国寄りの偏り(バイアス)」があるという高官からの警告を受けた措置である。
この実験は6月初旬から、DGTの職員1,300人のうち約100人の行政官を対象に実施されていた。ギリシャの神にちなんで「HéphAIstos」と命名されたこのツールは、機密情報や機微なデータの処理を含む日常業務の支援、および多言語の文字起こしを目的としていた。しかし、中国に関連するテーマで「偏った回答」が確認され、中国政府の監視下で開発されたソフトウェアがフランス政府の通商政策の助言機関に導入されることへの危機感が強まった。
財務省は具体的なバイアスの事例を明らかにしていないが、ツールはインターネット非接続の環境で運用されていたため、外部へのデータ送信や情報漏洩のリスクはなかったと説明している。利用停止の翌日には、フランスのスタートアップ企業であるMistral AIの新しいモデルが代替として即座に導入された。
フランス政府は行政へのAI導入を大規模に進めており、今後はMistral AIを搭載した対話型AI「L'Assistant」を100万人の国家公務員へ普及させる計画である。この一般化には2026年に70万ユーロ、その後は年間200万から400万ユーロの予算が見込まれている。