日刊フランス欧州経済 2026年6月17日 (フリー)
1. 仏政府、治安総局のデータシステムを米パランティアから自国企業へ移行
2. シーメンス、仏の風力ブレード工場拡張 27年以降不透明で政府に計画厳守促す
3. 建設セクターで加速するAI導入 業務効率化の推進と格差是正・ルール作りの課題
4. 仏国内治安総局が採用した仏ChapsVisionとは一体どのような会社なのか?
5. 仏で新型原発の追加誘致競争が激化 地方自治体が狙う莫大な経済効果と地域活性化
6. Genesis AIが車輪型ロボット「Eno」発表、複雑な手作業自動化へ
7. 仏電力が旧型EPRで挑む欧州輸出 米社との再戦に見出す勝機
8. 仏の温室効果ガス排出量、予測上回る減少も目標達成へさらなる加速が必要
1. 仏政府、治安総局のデータシステムを米パランティアから自国企業へ移行
フランスは技術的主権確保のため、国内治安総局のデータ処理システムを米パランティアから仏シャップスビジョンへ移行する。完全移行には数年要するが、米企業への依存を脱し、欧州の技術的自立を推進する。
フランスのセバスティアン・ルコルニュ首相は、技術的主権の確保に向け、国内治安総局(DGSI)の大規模データ処理システムをアメリカのPalantirから、フランスのスタートアップ企業ChapsVisionへ移行すると発表した。
DGSIは2015年のパリ同時多発テロ事件以降、データ分析の代替手段がなかったため2016年からPalantirを採用し、2019年、2022年、そして2025年末にも3年間の契約を更新していた。しかし、Palantirの大量監視や軍事利用といった物議を醸す手法や、アメリカ企業への依存に対する懸念から、フランス政府は国内での代替案の育成を模索していた。
2019年に設立されたChapsVisionは、2024年にDGSIのデータ処理に関する入札の一部を獲得し、今回Palantirが10年近く担ってきた主要なデータ開発・運用部門の契約を勝ち取った。同社は5月末にドイツの秘密情報機関にもソフトウェアの採用が決まっており、欧州のデータインテリジェンス市場で急速に存在感を高めている。
ただし、Palantirのシステムからの移行には1年以上の期間を要するため、既存の契約は予定通り2028年まで継続される見込みである。完全な移行には数年を要するものの、フランス政府はアメリカのテック企業への依存を脱し、自国および欧州の技術的自立を推進する姿勢を鮮明にしている。
2. シーメンス、仏の風力ブレード工場拡張 27年以降不透明で政府に計画厳守促す
シーメンス・ガメサは仏工場を拡張し新型風力ブレード製造を開始した。しかし新規雇用はなく配置転換で対応し、2027年以降の計画は不透明である。同社は政府に事業スケジュールの厳守を強く求めている。
Siemens Gamesa(シーメンス・ガメサ)は、フランスのル・アーヴルにある洋上風力発電用ブレード工場の拡張工事を完了し、落成式を行った。総額2億ユーロの投資により工場は拡張され、全長115メートルという巨大な新型ブレードの製造が可能となった。しかし、当初約束されていた200人の新規雇用は創出されず、代わりに既存の従業員339人を再教育して配置転換することで対応したため、現在の正規従業員数は915人と横ばいで推移している。また、労働組合は非正規労働者の雇用継続に対する懸念も示している。
同工場は従来型(8MW)の生産を終え、新型の15MWモデルの製造に特化している。欧州全体で16GWの受注を抱える一方で、フランス国内向けの既存プロジェクトの出荷が完了する2027年以降の生産計画には不透明感がある。
今回の落成式は、フランス政府が新たな大規模入札(AO10)を発表した直後に開催された。Siemens Gamesaの経営陣は、今後の新規案件獲得に期待を示すと同時に、政府に対して入札やプロジェクト実行のスケジュールを厳守するよう強く求めている。各国政府が計画通りに事業を進めなければ、洋上風力発電業界は「存亡の危機」に陥り、投資やリソースの削減を余儀なくされると警告している。