日刊フランス欧州経済 2026年5月27日 (フリー)
1. 宇宙データセンター開発で国際競争 仏新興が巨大インフラ計画
2. AI普及で市場に構造転換、欧州でも半導体・インフラ銘柄が急騰
3. ロレアルパリ、成熟市場での製品拡充とメンズ部門の強化でさらなる成長へ
4. 仏政府、中古EV限定のリース補助金制度を導入 市場活性化へ試験的運用
5. 仏政府、2035年までに化石燃料依存度を30%へ半減の方針
6. 仏中堅企業、エネルギー危機を機に脱炭素化への投資を加速
7. 自動車部門が先行する資源循環 他産業は回収や品質保証に課題
8. 米、核燃料リサイクルへ転換 仏ニュークレオがSMR建設計画
9. 地政学リスクで株価上昇のフィンランドSAF大手、27年に世界最大の生産体制へ
10. 欧州の脱炭素移行、企業の投資躊躇とエネルギー価格の課題
1. 宇宙データセンター開発で国際競争 仏新興が巨大インフラ計画
宇宙データセンター開発の国際競争が激化している。仏スタートアップのAlatyrは、欧州の主権維持を目指し、ロボットによる軌道上組み立て方式で環境負荷の低い巨大データセンターを構築する計画だ。
宇宙空間でのデータセンター開発を巡る世界的な競争が始まっている。SpaceXは2026年現在、地球を周回する100万のデータセンターからなる宇宙クラウド構想を提示している。宇宙では太陽から無限の電力を得られ、宇宙空間の冷気(マイナス270度)を利用できる利点がある。
この動きに対し、2023年にアリアングループの元幹部らによって設立されたフランスのスタートアップ企業Alatyrは、欧州の主権とレジリエンスを守るための宇宙インフラ開発を目指している。同社は衛星コンステレーションではなく、ロボットによる軌道上での組み立て方式を採用する。開発中のロボット「BYLD」が、高度約1500キロメートルの太陽同期軌道で500枚の軽量モジュールを組み立て、全長250メートルの巨大なデータセンターを構築する計画である。
このデータセンターは、国際宇宙ステーション(ISS)の一次電力の20倍にあたる4メガワットの電力を備える。放射線で劣化するチップのみをロボットが交換してインフラを維持するため、数年で使い捨てる従来の衛星より環境負荷が低く、低コストである。
同社はNvidia(2027年に宇宙対応チップを投入予定)や欧州宇宙機関(ESA)などと提携しており、2027年に地上デモンストレーション、2028年に軌道上テストを実施する。2030年に最初のデータセンターを稼働させ、2040年までに100倍の規模に拡大して「Citadel」と呼ばれる相互接続ネットワークを構築する計画である。この事業は米国の法規制を受けない欧州主権のインフラとなり、総予算は10億ユーロ未満を見込む。
宇宙クラウド分野では、2025年に民間企業が計算能力を持つ衛星を打ち上げた中国がリードしており、米国でもSpaceXやBlue Origin、Nvidiaなどが先を行く。欧州委員会も2024年に技術的実現可能性を確認したが、実証機の打ち上げには至っておらず、遅れをとっている。
2. AI普及で市場に構造転換、欧州でも半導体・インフラ銘柄が急騰
AIの台頭により、市場ではソフトウェアから半導体やデータセンターなどのインフラ企業へ資金がシフトしている。欧州でもこの傾向が顕著であり、特に仏半導体大手などの関連銘柄が急騰し株価指数を牽引している。
人工知能(IA/AI)の台頭は世界の株価指数を大きく塗り替えている。欧州の市場規模は世界に比べるとまだ控えめであるが、半導体やデータセンター設備といった「pelles et pioches(シャベルとツルハシ)」と呼ばれるインフラ企業への投資熱が高まっている。
世界的にはソフトウェア企業の株価が低迷する一方、半導体関連企業へ資金が集中する構造転換が起きている。欧州の主要株価指数であるSTOXX 600が年初から約6%上昇したのに対し、STOXX Europe Total Market Semiconductorsは113%も急騰している。
特にフランスの関連企業が躍進している。半導体大手のSTMicroelectronicsは、組み込みAI向け部品やAmazonとの契約が評価され、株価が年初から162%上昇してCAC 40指数の中で最大の伸びを記録した。さらに、同じくフランスのSoitecは、経営陣の交代などを経て株価が631%も暴騰している。
また、世界的なデータセンター需要の爆発により、設備関連企業も恩恵を受けている。フィンランドのNokiaはNvidiaとの提携や出資を背景に株価が143%上昇した。フランスのSchneider ElectricやLegrandも、データセンター管理における戦略的製品が評価され、投資家からの人気を取り戻している。