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フランス欧州ビジネスニュース2026年4月23日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2026年4月23日(フリー)
仏Axensが中国企業と提携し、5億ユーロを投じ、2029年に稼働予定の国内初のEV電池正極材工場を建設する

1.        仏政府、EV電池材料の国産化を加速、戦略プロジェクトに税制支援

2.        仏新興鉄道Velvet、新型TGVを初公開、28年運行開始へ

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1.        仏政府、EV電池材料の国産化を加速、戦略プロジェクトに税制支援

仏Axensが中国企業と提携し、国内初のEV電池正極材工場を建設する。5億ユーロを投じ2029年に稼働予定。政府の税制優遇や欧州の規制を追い風に、電池材料の自給率向上と経済主権の確保を目指す。
 
フランス中堅企業Axensとその中国パートナーによる、電気自動車(EV)用電池の不可欠なコンポーネントである正極活物質(CAM)の製造工場建設プロジェクトが、新たな段階を迎えた。
エリゼ宮(仏大統領府)が発表した「重大戦略プロジェクト」の1つに選ばれたこの計画は、グリーン産業税額控除(C3IV)による資金援助を受ける。これにより、投資額の25%が還付される仕組みだ。プロジェクトリーダーのオリヴィエ・カルベール氏は、これが工場実現の「必須条件」であったと明かしている。
投資と生産体制
Axensは、バランシエンヌ近郊の工業跡地に約5億ユーロを投じる計画である。中国の五鉱新材料(MinMetals New Energy Materials)と提携し、同社の技術をベースに設計が進められている。原料となるリチウム、コバルト、ニッケル、マンガンなどはベルギーのアントワープ港からスカルド川を経由し、船便で輸送される予定だ。
今後のスケジュールと規模は以下の通りである。

  • 2027年第1四半期末:最終的な投資決定。
  • 2027年8〜9月:着工。
  • 2029年末:第1生産ラインの稼働。
  • 2030年末:フル稼働。
  • 年間生産能力4万2,000トン(経済的生存権確保のため、当初計画より上方修正)。
  • 雇用創出400人の直接雇用。

行政支援と市場環境
本プロジェクトは「ネットゼロ産業法(NZIA)」に基づき、欧州委員会に戦略的プロジェクトとして通知された。これにより行政手続きが加速され、4月29日には建築許可と環境認可の申請が行われる。
さらに、欧州の「産業加速法(IAA)」も追い風となる。同法は、欧州で販売されるEV電池の主要5コンポーネント(CAMを含む)について欧州産であることを義務付けるものであり、Axensの市場優位性を担保する。現在、フランス国内にはCAMの生産拠点がなく、本計画は国家の主権に関わる重要な一歩となる。


2.        仏新興鉄道Velvet、新型TGVを初公開、28年運行開始へ

Velvetが新型TGVを公開。2028年のパリ〜ボルドー線参入に向け、10億ユーロの資金で順調に準備を進める。高額な線路使用料を背景に、価格競争ではなく利便性と移動の質で既存路線との差別化を狙う。


民間鉄道会社Velvet(旧プロキシマ)の創設者であるレイチェル・ピカールティム・ジャクソンは、アルストムのラ・ロシェル工場で初となるTGV車両を公開した。
2028年パリ〜ボルドー線での運行開始を目指す同社は、供給不足が続くこの激戦区で新たな選択肢を提供する。ピカール氏は「緑とリラ色の車両、それがVelvetだ」と誇らしげに語った。設立から2年足らずで、同社は公約を具体化させつつある。
今回披露されたのは、TGV M(アヴェリア・ホライズン)の動力車と客車2両である。内装工事や試験走行は2027年まで続く予定だが、2028年には同モデルを4編成投入する。各編成は9両編成で、収容人数は740人にのぼる。将来的には合計12編成を導入し、レンヌナント方面へも路線を拡大する計画だ。
資金面では、アンティン・インフラストラクチャー・パートナーズなどから10億ユーロを確保しており、リセア社が管理する維持管理センターの利用権も得ている。他の競合他社が資金調達や設備建設に苦戦する中、Velvetは計画通りの進捗を強調し、業界での信頼性を高めている。
注目すべきは価格戦略だ。同社はSNCFより安価な運賃を約束していない。ピカール氏は「最優先事項は価格ではなく、必要な時に乗れる利便性だ」と指摘する。フランスの線路使用料は欧州でも最高水準にあり、これが運賃の下限を形成している。
新規参入者には5年間使用料割引(初年度40%減)が適用されるが、高い固定費を考慮すると、これが直接的な値下げに繋がるかは不透明だ。Velvetは低価格競争ではなく、新型車両による移動体験の質で差別化を図る方針である。