フランス欧州ビジネスニュース2026年3月2日(フリー)
1. 生産能力29万トンの仏アルミ大手、バーレーン・アルバが買収合意
2. ルノーの「中国化」加速、部品設計46%を中国へ移管し、30%のコスト削減狙う
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1. 生産能力29万トンの仏アルミ大手、バーレーン・アルバが買収合意
欧州最大のアルミ製錬所アルミニウム・ダンケルクAluminium Dunkerqueが、バーレーンのアルバに売却される。負債削減を進める既存株主から、年間生産能力29万トンを誇る戦略拠点が中東資本へ移る格好だ。欧州の産業自立と供給網維持に向けた試金石である。
2021年にアメリカの投資ファンドAIPが取得した欧州最大のアルミニウム製錬所「アルミニウム・ダンケルク」が、バーレーンの工業グループAlbaに売却されることが決定した。AIPは、2024年に8億ユーロの売上高と3億ユーロのEbitda(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を記録した同社の価値を、12億から18億ユーロと評価している。
買収の背景と戦略的意義
今回の取引には国際的な6グループが関心を示していたが、世界最大級の製錬所を運営するAlbaが選定された。背景には、欧州におけるアルミニウムの供給不足(2024年の貿易赤字は110億ユーロ超)と、2026年1月に導入された炭素国境調整措置(CBAM)への対応がある。同工場はフランス最大の電力消費者であり、年間4テラワット時を消費するが、EDFとの長期契約により電力の70%を確保済みである。この低炭素生産能力が、環境規制への適応を目指すAlbaにとって大きな魅力となった。
政府による監視と今後の展望
フランス政府は、対外投資審査の枠組みに基づき、この買収を厳格に精査する方針である。特に750人の雇用維持、戦略的な産業能力の保護、および脱炭素化の推進が重点項目となる。また、フランス公立投資銀行のBpifranceが少数株主として参画する可能性も浮上している。手続きには欧州委員会の承認も必要であり、完了までには数ヶ月を要する見通しである。
2. ルノーの「中国化」加速、部品設計46%を中国へ移管し、30%のコスト削減狙う
ルノーは吉利汽車と提携し、内燃機関や電子基盤で核心的協力を深化させている。中国での開発等によりコスト30%削減を目指すが、主要部品の中国依存による産業主権の喪失が、仏政府らから危惧されている。
ルノーグループと中国の吉利汽車(ジーリー)の提携は、単なる協力関係を超え、自動車の核心部分にまで浸透している。2025年7月に就任したフランソワ・プロボストCEOの下で、この関係はさらに加速している。
緊密化する4つの主要提携
- パワートレイン: 両社は共同出資会社「ホース・パワートレイン」を設立。ルノーは40%、吉利が40%、サウジアラムコが20%を出資し、内燃機関やハイブリッド技術を共有している。
- 韓国拠点: ルノーコリアの株式34%を吉利が取得。同工場では吉利のモデルをベースにした「グラン・コレオス」や新型SUV「フィランテ」が生産され、吉利設計の電子システムが採用されている。
- ブラジル市場: 2025年11月、吉利はルノー・ド・ブラジルに26.4%出資した。今後は吉利の低価格プラットフォームを用いた車両販売や、販売網の共有が進む。
- 中国での開発: 新型「トゥインゴ」電気自動車の開発に向け、上海にエンジニアリングセンター「ACDC」を設置。部品の46%を中国で設計し、コストを30%削減することを目指している。
技術的主権への懸念
最大の焦点は、車両の頭脳にあたる電子プラットフォームである。ルノー独自の「Sweet 500」開発が遅れる中、次期「アルピーヌA110」には吉利のシステム採用が決定した。これに対し、労働組合やフランス政府(ルノー株15%を保有)は、中国技術への過度な依存による産業主権の喪失を危惧している。
欧州メーカーの技術的遅れが指摘される中、ルノーは2030年までに世界トップ5入りを狙う吉利の力を借りてコスト削減を急ぐ。2026年3月10日の戦略発表で、プロボストCEOがこの「中国化」の進展についてどのような説明を行うかが注目される。