フランス欧州ビジネスニュース2026年3月26日(フリー)
1. オルヌ県、ガス自給率35%の衝撃、農業系バイオガスが導くエネルギー主権
2. 仏EV生産、初の過半数超えも供給不足 登録台数が生産の1.5倍に
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7. 仏電力戦略が奏功、ガス依存3%で価格高騰を回避
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12. 中国車、南欧で攻勢加速―スペイン新車シェア1割超え
1. オルヌ県、ガス自給率35%の衝撃、農業系バイオガスが導くエネルギー主権
フランスのオルヌ県はメタン発酵の先駆地で、ガス消費の35%を賄い全国平均4%を凌駕する。2035年の目標は最大82TWhだ。経営安定に寄与するが、15%の作物利用制限や高コスト、住民との対立が課題である。
フランス・ノルマンディー地方のオルヌ県におけるメタン発酵(バイオガス発電)の現状と課題についての要約である。
農業県オルヌ、メタン発酵の先進地へ
ノルマンディー地方のオルヌ県は、家畜の排泄物などの有機廃棄物をエネルギーに変えるメタン発酵のフランス国内における先駆的存在である。2025年末時点で、フランス全体では802の施設がバイオメタンをガス網に注入しており、これは2020年と比較して4倍の規模である。特にオルヌ県には25の施設があり、県内ガス消費量の約35%をこの地産ガスが賄っている。これは全国平均の約4%を大きく上回る数字である。
農家にとってのメリットとエネルギー主権
農家がこの事業に取り組む主な動機は、経営の安定化と環境負荷の低減である。
- 収益の安定:国による15年間の固定価格買い取り制度により、気象や市場価格に左右されない副収入が得られる。ある農家は500万ユーロを投じ、年間13GWhを生産している。
- 化学肥料の削減:副産物である「消化液」を肥料として活用することで、化学肥料の使用量を半分に削減できる。
- エネルギー安全保障:中東情勢やロシア・ウクライナ情勢による化石燃料価格の高騰を受け、地域でのエネルギー自給(エネルギー主権)の重要性が高まっている。フランス政府は、2025年末に15.5TWhであった注入能力を、2035年までに47〜82TWhへ引き上げる目標を掲げている。
拡大に伴う懸念と対立
一方で、急速な普及に対する批判も存在する。
- 食料生産との競合:ドイツのようなトウモロコシ栽培への偏りを防ぐため、フランスでは主産物の使用率を15%以下に制限しているが、監視体制の不備を指摘する声がある。
- コストと補助金:バイオメタンの生産コストは化石ガスの3〜4倍であり、多額の公的支援(2024年は約10億ユーロ)に依存している。
- 環境と住民感情:汚染への懸念や、都市部からの移住者(ネオ・リュラル)による景観・騒音への不満から、ノルマンディー地域圏による補助金停止などの動きも出ている。
今後の展望:産業化か、農業主体か
2026年からはエネルギー供給業者にバイオメタンの混入を義務付ける新制度が始まり、大手エネルギー企業の参入による産業化が加速すると予測される。しかし、環境負荷を抑え、循環型経済の恩恵を農家に還元するためには、大規模化による長距離輸送を避け、農業に根ざした「分散型モデル」を維持できるかが今後の焦点である。

2. 仏EV生産、初の過半数超えも供給不足 登録台数が生産の1.5倍に
仏EV生産は2025年までに74%増と急拡大し、比率は過半数の54%に達した。一方、登録台数が生産の1.5倍で純輸入国である点は課題だ。中国製が21.8%を占める中、国内生産の6割強を輸出する需給の乖離が鮮明である。
フランスの電気自動車(EV)およびハイブリッド車の生産状況に関する要約は以下の通りである。
フランス国内における電気自動車の生産は急速に拡大している。Insee(フランス国立統計経済研究所)の報告によると、2021年から2025年にかけて電気自動車の生産量は74%増加し、ハイブリッド車も27.3%増加した。一方で、内燃機関車(ガソリン・ディーゼル車)の生産は11.8%減少している。全生産車両に占める電気自動車とハイブリッド車の割合は、2021年の42%から2025年には54%へと上昇し、過半数を超えた。
しかし、フランスは依然として電気自動車の純輸入国である。2025年の新車登録台数は33万1000台(市場シェア19.9%)であったが、国内生産台数は21万6000台にとどまり、登録台数が生産台数の1.5倍に達している。輸入元の3分の2以上は欧州諸国であり、特にドイツが全体の3分の1を占める。次いで中国が21.8%を占めるが、これには欧州メーカーの中国生産分も含まれる。
一方で、フランス国内で生産された電気自動車の多くは輸出に回されている。2025年の国内生産分のうち、フランス国内向けはわずか37%であり、残りの63%は海外へ販売された。最大の輸出先はイギリスで、輸出全体の24.2%を占めている。輸出先のほとんどは欧州圏内であり、欧州外へ輸出される車両は50台に1台の割合に過ぎない。