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フランス欧州ビジネスニュース2026年3月24日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2026年3月24日(フリー)
Photo by Kavita Joshi Rai / Unsplash

1.        TotalEnergies 、米海洋風力から撤退―9億ドル超を回収しガス事業へ再投資

2.        行政の壁が阻む脱炭素、掘削許可に20ヶ月―地熱大国への道遠く

3.        デジタル主権に危機感―仏、1GW級計算基盤失い2026年に事業者再公募へ

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11.   アジア勢、欧州市場で存在感増す―特許シェア30%、蓄電池分野などで躍進


2026年3月23日
LES ECHOS
フランス
 
1.        TotalEnergies 、米海洋風力から撤退―9億ドル超を回収しガス事業へ再投資

トタールエナジーズは米国の安全保障上の懸念から海洋風力事業を撤退し、回収した9億2800万ドルをLNG等のガス事業へ再投資する。再エネ比率17%の米国で、高コストな海洋風力から陸上電源へ戦略を転換した。
 
フランスのエネルギー大手トタールエナジーズは、米国トランプ政権との合意に基づき、ニューヨーク州とノースカロライナ州沖で計画していた2つの海洋風力発電プロジェクトから撤退することを決定した。
この撤退と引き換えに、同社は以前の入札で支払った9億2800万ドル(約8億ユーロ以上)を回収する。パトリック・プヤネ最高経営責任者(CEO)は、ヒューストンで開催された「CERAWeek 2026」にて、この資金を米国内のガス事業へ再投資することを表明した。具体的には、テキサス州の液化天然ガス(LNG)施設「リオグランデ」計画の加速や、「アラスカLNG」プロジェクトへの支援、さらに5つのガス発電所建設などが検討されている。
米国政府側は、海洋風力発電が防衛レーダーに干渉し、敵対的なドローンの検知を妨げるなど安全保障上の脅威になると主張している。一方、司法によって再生可能エネルギープロジェクトの禁止が退けられてきた経緯があり、今回の合意は政府にとって法的リスクを回避しつつ、「エネルギー支配」を推進する狙いがある。
プヤネ氏は安全保障上の議論には深入りせず、米国では陸地に余裕があるため海洋風力はコストが高すぎると指摘した。同社は海洋風力からは退くものの、コスト低下が続く陸上風力や太陽光発電などの再生可能エネルギー投資は継続する方針である。米国の2025年の発電量に占める風力・太陽光の割合は17%に達しており、データセンター等の需要増に対応するため、今後も多様な電源開発が必要とされている。


2026年3月23日
LA TRIBUNE
フランス
 
2.        行政の壁が阻む脱炭素、掘削許可に20ヶ月―地熱大国への道遠く

フランスの地熱は国土の85〜95%で利用可能だが、現状のエネルギー消費占める割合はわずか1%にとどまる。行政手続きにドイツの3倍以上の時間を要す等の構造的課題を打破し、潜在能力を引き出すことが不可欠である。


フランスにおける地熱発電の現状と課題に関する要約は以下の通りである。

地熱エネルギーの現状と潜在能力
フランスにおいて、地熱は「足元に眠る宝」と評されながらも、最終エネルギー消費に占める割合はわずか1%、熱供給ネットワークにおいても5%にとどまっている。しかし、その潜在能力は極めて高い。地質・鉱山調査局(BRGM)によれば、国土の85%から95%で利用が可能であり、暖房費を80%、冷房費を90%削減できる可能性がある。これは原子力発電所8基分のエネルギーに相当すると試算されている。

政府の目標と停滞する現状
フランス政府は2023年2月に行動計画を策定し、2030年までに地熱ヒートポンプの設置ペースを2倍に、深層地熱利用を40%増加させる目標を掲げた。また、2015年の法律では、2030年までに再生可能エネルギーの割合を熱消費の38%まで引き上げることを義務付けている。しかし、計画始動から3年が経過しても、地熱の利用割合に大きな変化は見られない。

普及を阻む主な要因
普及が進まない背景には、複数の構造的な課題が存在する。

  • 行政手続きの遅延: 掘削許可の取得に、ドイツでは6ヶ月で済むところが、フランスでは実務上18ヶ月から20ヶ月を要している。これは当局の職員不足が主な原因である。
  • 財政的・規制的障壁: 支援策が複雑で不透明である。会計検査院は、補助金制度の簡素化や、鉱業法による規制の緩和を提言している。
  • 人材不足と労働環境: 掘削作業員が不足しているほか、24時間体制が求められる現場に対し、現行の労働法が柔軟に対応できていない。
  • 認知度の低さ: 太陽光や風力に比べ、地熱は自治体や企業の関心の「死角」となっており、社会的な認知向上が急務である。

地熱は原子力エネルギーを補完する安定した熱源として期待されているが、その実現には行政手続きの簡素化と、戦略的な投資が不可欠である。