フランス欧州ビジネスニュース2026年3月10日(フリー)
1. 言語から「世界モデル」へ、仏AMI、8.9億ユーロ調達し次世代AI開発加速
2. 脱炭素と主権の両立へ、仏で原子力サミット開幕―43カ国が結集
3. 仏最大のデータ拠点、パリ近郊に集結―収容率80%超で供給不足の懸念
4. 美容業界を牽引する髪への投資、ロレアル部門売上13%増
5. 独、武器輸出で世界4位に浮上―対ウクライナ支援が押し上げ
6. 原油供給危機に対するG7とIEAの備蓄に関する戦略的対応
7. 欧州に薬価引き下げを迫りたいトランプ大統領と大手製薬会社
8. 消える休息、広がる職掌――AIが招く「際限なき業務」の正体
1. 言語から「世界モデル」へ、仏AMI、8.9億ユーロ調達し次世代AI開発加速
ヤン・ルカン氏の新会社AMIは、30億ユーロの時価総額で始動した。既存AIが欠く推論能力の克服に向け、JEPA等を用いた「世界モデル」の開発に注力する。8.9億ユーロの資金で汎用的な産業応用を目指す。
Metaの元AI研究責任者であるヤン・ルカンが会長を務める新会社、AMI(Advanced Machine Intelligence)が始動した。同社はパリに拠点を置くフランス法人のスタートアップでありながら、欧州、米国、アジアの投資家から8億9000万ユーロを調達し、企業価値は30億ユーロに達している。
従来のAIを超える「世界モデル」への挑戦
AMIの核心的な目標は、現在のOpenAIやGoogleなどが主導する言語中心のAIモデルの限界を打破することである。ルカンは、既存のAIには「6歳児や猫」ほどの推論能力すら欠けていると指摘する。これに対し、AMIは「世界モデル(world models)」と呼ばれる、現実世界の物理的・概念的な抽象表現を学習する新形態のAI開発に注力する。
技術戦略と今後の展望
同社の技術的な特徴と計画は以下の通りである。
- JEPAアーキテクチャ:ルカンがMetaで提唱したこの構造に基づき、今後約12ヶ月かけてビデオデータを用いた学習を行う。
- 産業応用:特定の環境下でしか機能しない現在のロボティクスを刷新し、未知の状況でも適応可能な汎用的なモデルを目指す。
- オープンソースの支持:研究成果やコードの多くを公開する方針であり、AIの独占を防ぐことがリスク管理に繋がると主張している。
現在、AMIの従業員数は約10名だが、半年以内に30名から50名規模へ拡大する予定である。同社は、数年がかりで産業界に真の価値をもたらす「最も汎用的な世界モデル」の構築を目指している。
2. 脱炭素と主権の両立へ、仏で原子力サミット開幕―43カ国が結集
マクロン大統領は第2回原子力サミットで、脱炭素とエネルギー自立の両立を強調。世界43カ国が参加し、2050年までに原子力発電容量を3倍にする目標を掲げる。世界の電力供給の10%を占める原子力の投資加速が重要だ。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領と国際原子力機関(IAEA)は、2026年3月10日、パリで第2回原子力サミットを開催した。化石燃料価格の高騰や地政学的リスクを背景に、世界的な原子力への投資加速を訴えるのが狙いである。
1. 原子力を核とした戦略的自立
フランスは米国に次ぐ世界第2位の原子力大国として、その影響力を誇示している。マクロン大統領は、原子力を脱炭素化と経済・エネルギー主権の両立に不可欠な解決策と位置づけている。特にイラン関連の緊張による石油・ガス価格の不安定化は、輸入化石燃料への依存脱却という課題を浮き彫りにした。サミットには招待された約60カ国のうち、43カ国が参加を表明している。
2. 国内外での具体的な建設計画
フランス政府は、EDF(フランス電力)が主導する新型欧州加圧水型原子炉(EPR2)6基の建設について、年内に正式な投資決定を下す予定である。また、今回のサミットでは「フランス2030」計画に基づき、小型モジュール炉(SMR)を開発するスタートアップへの追加補助金も発表される。対象は、2030年代初頭の実用化が期待されるCalogenaやJimmyなどのプロジェクトとなる見通しである。
3. 欧州および世界規模の目標
欧州委員会は、研究開発から資金調達までを網羅したSMRに関する欧州戦略を発表する。欧州連合(EU)内の原子力推進派16カ国は、原子力事業に必要な2,400億ユーロの資金確保に向けた声明を出す予定である。 世界全体では、2050年までに原子力発電容量を3倍にするという目標が掲げられている。現在、世界の電力供給に占める原子力の割合はわずか10%だが、電気自動車やデータセンターの普及に伴う電力需要増に対し、低炭素かつ自立的なエネルギー源としての重要性が再認識されている。