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フランス欧州ビジネスニュース2026年1月9日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2026年1月9日(フリー)
2026年1月1日よりフランス電力(EDF)は原子力発電による電気料金を自由に設定できるようになった

1.        電気料金:EDFがいかにして政府に値下げを迫ったか

2.        地域暖房ネットワーク、フランスの都市全体に広がる

3.        欧州宇宙機関、2026年、打ち上げの記録更新、目指す

4.        フランスの航空宇宙メーカー、記録的な増税にうんざり

5.        欧州のシリコン産業は生き残りをかけて戦っている

6.        中国プラットフォームとの競争に直面、Zalandoはドイツの拠点を一つ閉鎖し、2,700人の雇用削減

7.        フレンチテック:製薬会社の注目を集める仏スタートアップ企業

8.        トークン化された金融:「米国は欧州に対して大きなリードを取っており、欧州は独自の戦略を策定する必要がある。」

9.        レゴ 、音と光のブロックでイノベーション

10.    Rio Tinto とGlencore :銅市場を支配する2000億ドルの合併計画


1.        電気料金:EDFがいかにして政府に値下げを迫ったか
 
2026年1月1日より、フランス電力(EDF)は原子力発電による電気料金を自由に設定できるようになった。かつての規制料金制度(Arenh)は2025年末に終了し、新たな制度では、市場価格が78〜110ユーロ/MWhという極めて高い水準に達した場合にのみ政府が超過収益を徴収する仕組みとなっている。しかし、この改革の裏側には、行政や専門家の警告を無視して下された政治的決断と、EDFによる強硬なロビー活動があった。
調査によれば、当初、アニエス・パニエ=リュナシェエネルギー移行相(当時)は、消費者を価格高騰から守りつつ、EDFの経営を安定させるために、生産コスト(当時57.90ユーロ/MWhと試算)に基づいた「差額決済契約(CfD)」による価格統制を検討していた。しかし、2022年末に就任したEDFリュック・レモン前CEO(2025年3月に退任)は、市場価格が今後も高止まりすると予測し、政府の介入を拒んで完全な商業的自由を要求した。彼はブリュノ・ル・メール経済相らに対し、辞任をちらつかせて圧力をかけたとされている。
省庁の顧問や行政機関(DGECなど)は、市場価格が下落した際にEDFの財務が大幅に悪化するリスクを繰り返し警告していた。EDF内部の試算でも、市場価格が60ユーロ/MWhを下回れば、2030年の債務は1,070億ユーロに達する可能性が示されていた。それにもかかわらず、大臣たちは欧州委員会との交渉の難航を避けるといった理由から、行政側の総意に反してEDFの主張を受け入れる決定を下した。
皮肉にも、レモン前CEOの予測は外れ、電力価格は2023年末から下落し、現在は50ユーロ/MWh前後で推移している。これにより、EDFは新規原発への投資に必要な収益を確保できない「逆の危機」に直面している。政府内では今になってCfDの再検討を求める声も出ているが、一度決めた制度の失敗を認めることは政治的に困難な状況にある。


2.        地域暖房ネットワーク、フランスの都市全体に広がる

フランスの自治体で地域熱供給ネットワークの導入が急速に進んでいる。2023年に設置数が1,000を超えた後も成長は続き、過去10年で接続ビル数は69%増加して約52,450棟に達した。エネルギー価格が高騰する中、市場価格より約30%安く安定した料金で暖房を供給できる点が、自治体や住宅所有者にとって大きな魅力となっている。
現在の焦点は、エネルギー源の最適化と脱炭素化である。従来の木質バイオマスに加え、未利用のエネルギーを活用する動きが活発だ。例えば、リヨンではボイラーの排熱回収により追加燃料なしで5,700戸分を供給し、ヴィエンヌではヨーグルト工場の廃熱を住宅地に転用している。さらに、下水の熱を利用する下水熱利用や、海水から熱を取り出す海洋温熱利用など、多様な再生可能エネルギーへの転換が進んでいる。ラ・グランド=モットの事例では、年間1,800トンCO2排出削減が見込まれている。
こうしたプロジェクトには多額の投資が必要であり、政府の「熱基金(Fonds Chaleur)」が費用の10%から40%を補助することで、投資回収期間を約10年に短縮し普及を支えてきた。しかし、今後の予算削減への懸念も広がっている。また、気候変動の影響で冷房需要が急増しており、最新のネットワークは温水と冷水の双方を供給する「温度調節ループ」を備え始めている。フランス政府は2030年までに冷房供給量を倍増させる計画を掲げており、熱供給ネットワークは「冷暖房」双方を担うインフラへと進化している。


3.        欧州宇宙機関、2026年、打ち上げの記録更新、目指す

欧州宇宙機関(ESA)は、国際的な宇宙競争が激化する中で戦略的投資を加速させている。2026年、同機関は過去最多であった昨年の46件を大幅に上回る、「最大65件」の衛星打ち上げおよびミッションを計画しており、組織として新たな段階へ移行しようとしている。
この野心的な目標を支えるため、ESAは今年度、82億6000万ユーロの予算を確保した。予算の約30%にあたる24億ユーロは最優先事項である地球観測に割り当てられ、気候変動の監視や資源管理に不可欠な48機の新型衛星の打ち上げに充てられる。また、自律的な宇宙へのアクセスを確保するため、アリアン6ベガCといったロケットの打ち上げ頻度を高める方針であり、欧州の産業競争力と技術的主権の強化を狙っている。
有人宇宙探査や科学ミッションも重要な局面を迎える。2月15日以降にはフランス人宇宙飛行士ソフィー・アデノの国際宇宙ステーション(ISS)派遣が予定されており、国際協力では米国の月探査計画アルテミスII向けにサービスモジュールを提供する。科学分野では、中国との共同ミッションであるSmileの打ち上げや、小惑星探査機ヘラ(Hera)による衝突実験後の分析、さらには探査機ベピ・コロンボの水星周回軌道投入など、多角的な活動が控えている。ESAは産業への波及効果と科学的知見の蓄積を両立させ、世界的な宇宙経済における主導的な役割を固める構えである。