フランス欧州ビジネスニュース2026年1月7日(フリー)
1. 気候保護と化石燃料の間で揺れるデンマーク
2. ベネズエラ:スペインの石油会社レプソル、大きなリスクを負い、トランプ政権の行動を期待する理由
3. グレート・シー・インターコネクター、Nexansを悩ませるキプロスとギリシャを結ぶ巨大プロジェクト
4. DGSIの報告書、AIが企業にもたらす危険性について警告
5. 仏Ardian、米国で成長するプロジェクトを豊富に抱える投資ファンド
6. 温室効果ガス:ドイツ、目標達成に遅れ
7. Novo Nordisk :軽量化で利益増
8. 原子力:アルセロール・ミッタル、EDFと土壇場で長期電力供給契約を締結
9. 「手の届くラグジュアリー」が高級皮革製品を再定義するとき
1. 気候保護と化石燃料の間で揺れるデンマーク
デンマークの北海に位置するタイラ(Tyra)ガス田が、数年間にわたる中断を経て化石燃料の生産を再開している。1984年の稼働開始以来、プラットフォームが自重で海中に8メートル沈下したため、運営主体のトタルエナジーズは36億ユーロを投じて既存設備を解体し、全面的に再建した。現在、このプラットフォームからは日量570万立方メートルのガスが抽出され、パイプラインを通じて自国およびオランダへ送られている。
この再稼働は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州が直面しているエネルギー安保の観点から極めて重要な意味を持つ。欧州連合(EU)が2027年までのロシア産ガス輸入ゼロを目指す中、域内での生産は高価な米国産液化天然ガス(LNG)への依存を減らし、産業コストを抑制する手段となる。デンマークはこれにより、数年ぶりにガスの純輸出国の地位を取り戻す。
一方で、デンマークは気候変動対策のフロントランナーとしての顔も持ち合わせている。電力生産の95.9%を再生可能エネルギーが占め、風力発電だけで電力需要の約半分を賄っている。同国議会は2050年までの化石燃料生産の完全停止を決定しており、新規ライセンスの付与も停止している。しかし、既存のライセンスに基づく開発は継続可能であり、環境団体からはその「抜け穴」を指摘する声も上がっている。
デンマーク政府は2030年までに温室効果ガス排出量を70%削減(1990年比)し、さらに2035年には82%削減するという極めて野心的な目標を掲げている。この目標達成に向け、家庭用ガスのバイオガスへの完全移行や、二酸化炭素の回収・貯留(CCS)プロジェクトを推進している。エネルギーの主権確保と脱炭素化という、時に矛盾しかねない二つの課題を同時に進めるのがデンマークの戦略である。
また、安全保障上の懸念も影を落としている。2022年のノルドストリーム爆破事件を受け、水深40〜60メートルの海底に敷設されたガスパイプラインの脆弱性が露呈した。デンマーク政府やトタルエナジーズは、北海におけるインフラへの破壊工作のリスクを深刻に受け止め、警戒を強めている。経済的な自立を支えるガス生産の再開は、同時にこうした地政学的な防衛の必要性も浮き彫りにしている。
2. ベネズエラ:スペインの石油会社レプソル、大きなリスクを負い、トランプ政権の行動を期待する理由
スペインの石油大手レプソルは、ニコラス・マドゥロ政権の崩壊後、ドナルド・トランプ政権の動向を注視しながらベネズエラでの事業再開を模索している。同社にとってベネズエラは1993年に進出した重要拠点であり、保有する石油・ガス埋蔵量の15%を占める戦略的地域である。しかし、2025年3月にトランプ政権によって輸出ライセンスが凍結されたことで、同国からの炭化水素の輸出は停止している。
現在の最大の課題は、ベネズエラ国内にある3億3,000万ユーロの資産保護と、前政権から引き継がれた約10億ユーロに及ぶ未回収債務の回収である。バイデン政権下の制裁緩和時には、生産量は2022年の2,100万バレル(石油換算)から2024年には2,400万バレルへと順調に増加していた。当時、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)との合弁事業で生じた債務は、原油の現物支給という形で返済が進められており、レプソルはその原油をスペインのカルタヘナ製油所へ運んでいた。これまでに5億3,600万ユーロ相当を回収したが、依然として3億5,900万ユーロが未収のままである。
レプソルのジョス・ジョン・イマズCEOは、事業の安定的な枠組み、すなわち生産物を現金化できる仕組みを確保するため、米国当局と透明性の高い対話を継続している。スペインメディアの報道によれば、トランプ政権はライセンス再交付の条件として、ベネズエラ産の原油をスペインではなく、米国メキシコ湾岸の製油所へ供給するよう圧力をかけているとされる。シェブロンやエニと並ぶ主要な外国資本プレーヤーとして、レプソルは地政学的な激変の中で、巨額の債権回収と権益維持という極めて困難な舵取りを迫られている。
3. グレート・シー・インターコネクター、Nexansを悩ませるキプロスとギリシャを結ぶ巨大プロジェクト
フランスのケーブル製造大手ネクサス(Nexans)は、ギリシャとキプロスを海底で結ぶ全長1,300キロメートルの電力網計画「グレート・シー・インターコネクター(GSI)」について、スケジュールの見直しを進めていることを認めた。この発表を受け、同社の株価は4.45%下落した。このプロジェクトは同社にとって最大規模の事業であり、2026年の予測EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)の10%を占めると試算されていた重要案件である。
遅延の背景には、キプロス国内の政治的な迷走に加え、地中海における深刻な地政学的緊張がある。実際に、トルコ海軍がネクサスやその下請け業者による海底調査を妨害しており、2024年7月から2025年2月にかけて、トルコの軍艦が調査船に対し、クレタ島東方の海域から退去するよう命じる事案が繰り返されている。
ネクサス側は、グループの受注残高が堅調であることを理由に、2028年の中期財務目標には影響しないと強調している。しかし、2026年以降の業績への潜在的な影響を補うための対策を講じる必要があることも示唆しており、短期的には顧客からの支払いが滞る可能性が高い。一方で、海底ケーブルの需要は依然として極めて高く、仮にGSIプロジェクトが中止されたとしても、製造済みのケーブルは他のプロジェクトへ転用が可能であると分析されている。洋上風力発電などの開発者が供給枠の確保に列をなしている現状は、同社の工場稼働を維持する上での安心材料となっている。