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フランス欧州ビジネスニュース2025年9月8日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年9月8日(フリー)
ドイツの製鉄大手SHSに水素を供給する契約を獲得したフランスのVerso Energy社

1.        ASML、13億ユーロを出資し、 Mistral AI主要株主に

2.        仏政府債務:フランスの格付け引き下げリスク、再び高まる

3.        水素:ヴェルソ社、仏独初の供給契約を獲得

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1.        ASML、13億ユーロを出資し、 Mistral AI主要株主に


 ロイター通信によると、オランダの半導体製造装置大手 ASML は、フランスのAIスタートアップ Mistral AI主要株主となる見通しである。ASMLは、17億ユーロ資金調達のうち13億ユーロを出資する計画で、この取引により Mistral AI の企業価値は約100億ユーロに達すると見込まれている。
Mistral AI2023年Arthur MenschGuillaume LampleTimothée Lacroixの3人によって設立され、2024年6月時点の評価額は58億ドルであった。エネルギー効率が高く、オープンソースの言語モデルで注目され、フランスのAIを象徴する存在となっている。
今回の資金調達により、同社は成長加速欧州のデジタル主権強化を図り、米中の巨大テック企業に対抗する戦略である。さらに、ASML取締役会の議席を得る見込みである。


2.        仏政府債務:フランスの格付け引き下げリスク、再び高まる


 バイルー政権の崩壊が予想される中、政治的不安定さが強まり、フランス国債格付け2025年9月12日に予定されているフィッチ(Fitch)の評価で引き下げられる可能性が高まっている。現在の評価はAA-だが、A+への格下げとなれば歴史的転換点となる。
一方で、経済成長は想定より良好であり、財政赤字はGDP比5.4%に収まる見通しである。しかし、中期的な財政再建計画の欠如が懸念材料である。
今回のフィッチ単独での格下げは大きな影響を与えない可能性があるが、ムーディーズ(Moody’s)やS&Pが追随すれば、投資家離れが進み、フランス国債の利回り上昇が避けられない。
専門家は「即時的な危機ではないが、長期的には財政圧迫による経済の徐々な締め付け
が進む」と警告している。


3.        水素:ヴェルソ社、仏独初の供給契約を獲得


 フランスのVerso Energy社は、ドイツの製鉄大手SHS2024年1月に開始した公募において、同社の「Power4Steel」計画を支える水素供給契約を獲得した。この計画は、欧州最大規模となる脱炭素プロジェクトである。モゼル県カルリングの拠点から、Versoは2029年より毎年6,000トンの水素を供給する予定であり、これは100MWの電解装置によって生産されるもので、1億ユーロを投じた10年間の契約である。
Power4Steel計画全体では46億ユーロの投資が見込まれ、そのうち20億ユーロは自己資本で賄われる。さらに、4年以内2基の電気アーク炉を稼働させ、石炭の代わりに水素を使用することで、CO₂排出量を55%削減することを目指している。Versoが供給する水素は再生可能エネルギー由来であり、原子力は使用しない。この水素供給により、SHSは当初350万トンのグリーンスチールを生産可能となる。
最終的に、SHSの水素需要は年間12万トンに達する見込みであり、Verso単独では賄えないため、近隣のGazel Energie400MW規模の水素工場建設を計画している。さらに、2029年に稼働予定のMosaHyc水素輸送ネットワークは、モゼルザールラントルクセンブルクを結ぶ約100kmのルートで、水素供給を大幅に強化する見込みである。なお、Verso Energyはエネルギー水素e-SAF(航空用合成燃料)の分野で事業を展開しており、今後5年間で累計30億ユーロの投資を計画している。