フランス欧州ビジネスニュース2025年9月29日(フリー)
1. 仏エネルギー政策:太陽光・風力発電部門、危機的状況に
2. 海外のコーヒーチェーン、パリをコーヒーショップの首都に
3. 高級品:ブランド、顧客の安心のために生産垂直統合を更に推進
4. タレス、衛星通信のセキュリティ確保に向けた先駆的なプロジェクトを発表
5. バイオームラボ、皮膚マイクロバイオームを分析して皮膚化粧品をパーソナライズ
6. ケラト・イノフ、ウールからケラチンへ
7. 船舶産業:ポンサン家、フランスで2つのカタマラン新工場の建設を開始
8. 「我々は失敗から学んだ」:EDFの次世代原子炉が遅延とコスト超過の呪いから逃れるための計画
1. 仏エネルギー政策:太陽光・風力発電部門、危機的状況に
フランスのエネルギー方針を定めるPPE3(2035年まで)が政治問題化している。一部報道は、陸上再生可能エネルギーに数カ月のモラトリアムを検討中と伝え、業界が猛反発した。セバスチャン・ルコルニュ首相はモラトリアムを否定しつつ「過剰利潤は容認しない」と述べ、支援スキーム見直しへ経済学者の検証を示唆しているとされる。実施なら太陽光・陸上風力の入札が凍結され補助が止まるため、業界は「民主的・エネルギー的な不在」と批判している。極右RNはPPE3の政令公布自体を不信任理由とし、LR内にはモラトリアム容認論もある。一方、PPE3は既に2年遅延し、夏にはバイルー前首相が署名直前で後退した。政権は電力需要の弱さを踏まえ入札のテンポを落とす構えで、太陽光目標はこの春の75–100GWから65–90GWへ引下げ済みだが、最新案では55–80GWまで下げる方向とされる(それでも現行の3.5~4.5倍規模)。一方で洋上風力は大型入札の起動が切望される。業界はPPE3の早期確定と一貫した方針を求めており、政治交渉が長引けば投資計画と国内供給網に不確実性が拡大する状況である。
2. 海外のコーヒーチェーン、パリをコーヒーショップの首都に
パリが海外発のコーヒーブランドの欧州展開拠点として存在感を強めている。ポルトガルのDelta Cafésはオペラ地区に自国以外で初の店を開き、低温・スロー焙煎を前面に出しつつManteigariaと組んで菓子も訴求している。売上5億7,000万ユーロ(2024年)の同社は15年以内に世界トップ10入りを掲げる。モロッコ発のBacha Coffeeはシャンゼリゼに1,500㎡・3層の旗艦店を開設し、ランチ満席や行列が常態化するなど欧州展開の起点として機能している(運営はV3 Gourmet、TWG Teaも展開)。業界では「パリは“アール・ド・ヴィーヴル”の世界的都」であり、コーヒーは多文化に親和的という評価が広がる。国内市場も拡大し、コーヒーショップは3,500店超、週1店ペースで新規開業、チェーンだけで800店超に達している。フランス勢も参入を強め、パティシエのクリストフ・ミシャラクが百貨店内に初のコーヒーショップを開き、駅・空港や海外への複製を視野に入れる。総じて、パリの旗艦店戦略を足掛かりに、海外ブランドと国内勢が競合・共創しながら多様な体験型コーヒー業態を加速させている。
3. 高級品:ブランド、顧客の安心のために生産垂直統合を更に推進
エルメスがシャラントで24番目のマロキナリー工場を開設し、垂直統合を一段と強化している。中国の需要減と米国関税の逆風で価格は上がり、量の85%を占めるアスピレーショナル層が離反しつつあるため、各社は品質を担保する自社工房投資で「値ごろ感」を再構築している。EYの調査では消費者の4分の3が最重視するのは品質である。エルメスは2026年と2027年に仏国内でさらに工房を開く計画で、2024年にはリオムに工房(280人)を稼働させた。並行してLVMHは仏119拠点で47メゾンを支え、イタリアでは66拠点/6メゾン、米国は16拠点(ルイ・ヴィトンはテキサスに2019年開所・2027年に追加)、スイスは時計で15拠点を展開する。ケリングはKering EyewearによるVisardやLentiの買収、Boucheronのヴァンドーム広場近接アトリエ取得、Bottega Venetaの2023年ヴェネト新工場などで供給網を内製化している。Comité Colbertによれば仏の生産拠点は188地域に広がり、直近5年で40の新サイト(うちマロキナリー13)が誕生した。シャネルも2024年に6億ドルの投資枠でサプライヤーや職人企業に出資・買収を進める。要するに、各社は品質と技能を核にサプライチェーンの主導権を握り、価格上昇局面でも顧客の信頼を取り戻す戦略である。