フランス欧州ビジネスニュース2025年9月26日(フリー)
1. 業界、ドイツ政府に改革の加速を要請
2. ドイツ、2030年までに宇宙防衛に350億ユーロを投資したい
3. 自動車:ボッシュ、ドイツで10人中1人の雇用を削減
4. 乳製品業界の利益率の弱さを警告する報告書
5. 批判を受け、Spotify、AI生成音楽についてより透明性を高める計画
6. エヌビディアを魅了した英国のAI企業Nscaleが11億ドルを調達
7. スタートアップ企業のHiQute Diamond、量子およびエレクトロニクス用の合成ダイヤモンドの工業化目指す
8. ラ・メードでTotalEnergies 、持続可能な航空燃料の生産を加速
9. バッテリー:中国の圧力に直面するフランスメーカーの憂鬱
10. 重要金属:欧州、新たなプロジェクトを模索
11. ケーブルカー王者ポマ、都市征服を加速
1. 産業界、ドイツ政府に改革の加速を要請
ドイツ政府は数千億ユーロをインフラと防衛に投じて景気を下支えしているが、構造改革が伴わねば効果は一過性に終わると産業界と景気研究機関が警告している。化学産業の工場稼働率は72%未満で1991年以降の最低水準となり採算割れが続く。政府は投資減税や企業向け電力価格引下げを進めるが、産業界はさらにエネルギー負担の軽減と規制緩和を要求する。予測では、独経済は長引く低迷ののち2025年の成長率0.2%、2026年に1.3%、2027年に1.4%と小幅回復にとどまる見通しである。巨額の公共投資が進んでも体質改善がなければ「鎮痛剤」にすぎず、輸出は米欧の通商摩擦と中国減速で圧迫され、過去最高水準の公的債務は財政負担を増す。社会支出はGDPの41.9%に達し、改革がなければ拠出負担は2029年までに45%超へ上昇し得る。メルツ首相は「秋の改革」を約束するが、BASFやEvonikに象徴される現場は即時の実行を迫っている。
2. ドイツ、2030年までに宇宙防衛に350億ユーロを投資したい
ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、宇宙を次の戦域と位置づけ、2030年までに宇宙関連へ350億ユーロを投資すると表明した。現代社会の要である衛星インフラは脆弱であり、ロシアや中国は妨害・目潰し・操作・動的破壊まで可能としていると警告し、ドイツ軍が部分利用するインテルサット2機が露偵察衛星Luch-Olympに追尾されている事例も明かした。計画は、レーダーや望遠鏡、将来のセントネル衛星で宇宙状況把握を強化し、妨害耐性・抗攻撃性を高めるとともに、小型機と欧州の大型ロケットを組み合わせた安全・オンデマンドの打上げ能力を整備する。対米・対欧の枠組みで、仏独の早期警戒協力に加え、Iris2(安全な通信コンステレーション)や弾道・極超音速の発射探知Odin’s Eye、量子暗号等への大型投資を進め、ウクライナ戦で露呈した米国・スターリンク依存を脱しEU能力の主導権を狙う。方針は180度転換し、打上げは欧州優先へ。ベルリンは軍事衛星の打上げにアリアン6を採用し、ESAの11月閣僚級会合に向けて欧州協調と資金拠出で主導的立場を明確化している。
3. 自動車:ボッシュ、ドイツで10人中1人の雇用を削減
独ボッシュは1万3000人の削減を発表し、2024年の1万2500人と合わせ2030年までに約2万6000人が消える見通しである。ドイツでは従業員13万人の1割を減らす計画で、過剰設備が残るMobility(自動車)部門は25億ユーロのコスト削減を2030年までに目指している。業界全体でも危機が深まり、IG Metallによれば過去1年で11万4000人が減少、その半数超が自動車関連で、フォルクスワーゲンは3万5000人、アウディは7500人、ZFは1万4000人の削減を公表した。電動化は人員需要を大幅に減らし、ボッシュではディーゼル10、ガソリン噴射3に対し電動化1の人員比とされ、加えて中国勢などの低価格競争と関税・地政学リスクが収益を圧迫している。主な対象はバーデン=ヴュルテンベルク州の拠点で、フュアバッハでは3500人、全体で5拠点が再編されヴァイブリンゲンは自動車生産を停止する。期待した水素事業も伸び悩み、Nikola破綻が逆風となった。財務面では2024年の純利益が13億ユーロと半減し、売上高は903億ユーロで1%減少した。政府は支援を模索するが、需要が2019年水準を下回る欧州市場と2035年の内燃機関禁止方針のなかで、構造調整と競争力回復が急務である。