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フランス欧州ビジネスニュース2025年9月23日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年9月23日(フリー)
フランスの水素メーカーLhyfe

1.        ポルトガルにとって、エネルギー安全保障はフランスかモロッコに依存

2.        ステランティス、ポワシー工場と他の欧州5つの拠点を最大三週間停止

3.        ポルトガルでは、ヨーロッパ最大の湖の一つに水上太陽光発電が導入される予定

4.        海運会社CMA CGMが英国鉄道に賭ける理由

5.        南アフリカのマルチチョイス買収でCanal+、別次元へ

6.        UAEの政府系ファンド、種子大手リマグレインの株式を取得

7.        イタリアのENI、アメリカの新興企業から10億ドル以上の核融合電力を購入する予定

8.        水素:仏Lhyfe、産業化への重要な一歩を実証

9.        フランスにおける再生可能エネルギーの急停止

10.  アグリアルとテレナ協同組合は、農産食品大手を創設するための「合併プロジェクト」を検討中


1.        ポルトガルにとって、エネルギー安全保障はフランスかモロッコに依存


 2025年4月28日の歴史的なブラックアウトを受け、リスボンマドリードフランスに対して電力連系線の強化を求めるロビー活動を強めており、秋には欧州委員会を交えたパリでの会合が約束されている。EUは2030年までに越境電力取引比率15%を目標とするが、イベリア半島では現在わずか3%にとどまっている。ビスケー湾で建設中の新規連系は2028年に容量を5 GWへ倍増させる計画である一方、パリRTEによる国内送電網の近代化を優先し、イベリアの太陽光電力の単なるトランジット役になることを避けたい立場である。2024年に電力の71%を再生可能で賄い、2026年80%を目指すポルトガルは、代替策としてモロッコとの海底連系(費用10億ユーロ超)を検討しているが、石炭電力の流入懸念から国内再エネ業界が反対している。並行して政府は、系統の安全性を高めるため4億ユーロ規模・31項目の投資計画(非常用発電所を2基から4基へ拡充し蓄電能力を増強)を発表しており、ブラックアウトの連鎖故障を検証する欧州報告書は10月3日に公表される予定である。


2.        ステランティス、ポワシー工場と他の欧州5つの拠点を最大三週間停止


 Stellantis は欧州市場の低迷と在庫膨張の回避を理由に、10月に6工場で一時帰休を実施し、Poissy 工場(約2 000人)は3週間停止(うち12日が一時帰休)し、10月13日から11月3日まで閉鎖する方針である。今回の停止は生産ペースの調整を狙うもので、Poissy では停止期間中に工事訓練を行い、DS 3 Crossback と Opel Mokkaバッテリーパック準備工程を組立ラインの近傍へ移し、品質検査コンパクト化する計画である。もっとも、同工場は上期に33台/時で稼働しており、下期も2交代体制を維持しつつ目標を30台/時に落として操業するが、廉価な新型 Opel Frontera の投入が Mokka と競合するとの懸念が出ている。欧州では他にも停止が予定され、Eisenach5日、Saragosse7日、Tychy9日、Madrid14日、Pomigliano15日それぞれ止まる見通しである。さらに、Poissy 周辺の遊休地を将来のPSGスタジアムに充てる案が浮上しており、ラインの集約次第では生産継続と両立し得るとされる一方、同拠点の中期的な行方に対する不安も残っている。


3.        ポルトガルでは、ヨーロッパ最大の湖の一つに水上太陽光発電が導入される予定


 ポルトガルの電力大手 EDP は、Alqueva のダム湖で水力浮体式太陽光(PV)を単一の系統接続で組み合わせ、従来未活用であった接続点を生かして発電最適化を図っている。面積 250 平方キロメートルの湖面のうち 4 ヘクタール(全体の 0.2 % 未満)に12 000 枚のパネルを配置し、弾性ケーブルで係留することで冬季の波浪や最大 23 メートルの水位変動に耐える設計としている。事業者は、遮光により藻類の繁殖が抑えられる結果、水質は悪化しないどころか改善していると説明し、渡り鳥のふん害については隔週清掃に加えて常駐するロボットでの自動清掃を導入する計画である。プロジェクト費用は 5 百万ユーロで、陸上の蓄電池1 百万ユーロを追加した。地上設置よりコストは約倍であるが、系統接続費が不要であった。浮体式発電は 5 MW(約 1 500 世帯相当)と、ダム内タービンの100 分の 1 の規模にとどまるが、日中は市場価格が低い時間帯に揚水で上流側へ水を戻し、夕夜間の高価格帯に放水発電することで収益性を確保している。国内では同様の浮体式計画が8 件進行中で、環境承認後に浮体式PV陸上風力を組み合わせる計画もある。次のサイトでは70 MW の浮体式太陽光と 70 MW の風力を併設し、季節や時間帯に応じて一方が他方を補完する運用を想定している。