フランス欧州ビジネスニュース2025年8月7日(フリー)
1. ヨーロッパAI界の新たなリーダー、アントン・オシカ
2. 外食業界が「肉なし、牛乳なし、アルコールなし」というカードを切るとき
3. 観光:オード県でオリーブオイル生産者のルリボが観光客を魅了
4. イタリア、シチリア島と大陸を結ぶために130億ドルを世界最大の吊り橋に費やす予定
5. 関税:スイスの時計メーカー、トランプ大統領の政策に落胆
6. 酒類:不透明な状況の中、ディアジオ、コスト削減を強化
7. 1万人以上のヨーロッパのホテル経営者、Booking.comに対抗して団結
8. 繊維からストーブまで:PFASフリーの戦い、ほぼ勝利
9. 水素:ステランティスの撤退で大きな打撃を受けたシンビオ、復活を模索中
10. 製薬・ノボノルディスクが危機に陥っている理由
1. ヨーロッパAI界の新たなリーダー、アントン・オシカ
Anton Osikaは、スウェーデン発のスタートアップLovableの共同創業者であり、人工知能分野において急成長を遂げている。2023年に創業されたLovableは、プロンプトを使って数分でウェブサイトを作成できるサービスを提供している。創業からわずか8か月で、年間経常収益1億ドルに到達し、さらに2億ドルの資金調達を成功させた。
OsikaはCERNやトレーディング企業、AIスタートアップを経て経験を積んだ後、Fabian HedinとともにLovableを設立。もとは週末に構築されたオープンソースのプロジェクトだったが、瞬く間に注目を集めた。サービス開始から3か月で、1,700万ユーロの経常収益を上げ、現在では230万人以上が利用しており、そのうち18万人が有料会員である。
Lovableの成功の鍵は、非エンジニアにも利用可能なアクセスのしやすさにある。Osikaは「AIは人間にとってのインターフェースの質を超えることはない」と語り、ユーザーインターフェースの重要性を強調している。
一方で、Docusignから知的財産権侵害で訴訟を起こすとの警告を受けるなど、困難も存在する。それでもLovableは、40人規模のチームとともに急成長を続けている。Osikaはスウェーデンを拠点とすることを望みつつ、Raise Summitなど欧州の起業家イベントにも積極的に参加している。
Osikaはまた、起業家が株式売却の一部を社会貢献に回す「Founders Pledge」の署名者でもある。彼は「AIは人類にとって最高のものにも、最悪のものにもなり得る」と語り、それを正しく導く責任があると自覚している。
2. 外食業界が「肉なし、牛乳なし、アルコールなし」というカードを切るとき
外食業界では、「〜なし(sans)」のトレンド、すなわち肉なし、乳製品なし、アルコールなしといった選択肢が急速に広がっている。この現象は一過性の流行ではなく、健康、倫理、環境を重視する消費者の持続的な意識の変化を反映している。ビストロからファストフードまで、幅広い飲食店がこの新たな需要に対応するため、メニュー構成を進化させている。
なかでも最も進んでいるのがベジタリアンメニューである。Food Service Visionの調査によれば、2024年末時点で独立系レストランの9割がベジタリアン料理を提供しており、それはメニューの6分の1を占めている。この傾向はマクドナルドやKFC、O’Tacosといった大手チェーンにも広がっている。たとえばKFCでは、コロネルバーガーのベジタリアン版が現在では10件に1件の販売を占めている。
飲料分野では、植物性ミルク(オーツ、アーモンド、ココナッツなど)が存在感を増している。Columbus Caféでは、これらの代替ミルクが全体の3分の1を占めており、おいしさを理由に幅広い顧客に選ばれている。また、ノンアルコール飲料の分野でも進展があり、外食事業者の40%がモクテル(ノンアルコールカクテル)などの新たな選択肢を導入している。
さらに、Land & Monkeysのように、完全植物性のパンや菓子を扱う店舗も拡大しており、今後年間5~10店舗の新規出店を予定している。Columbus Caféでは、2026年初頭をめどに、市販のソフトドリンクの提供を終了し、自家製レモネードなどの代替品に切り替える方針である。
一方で、グルテンフリーの選択肢は外食全体では限定的であり、完全にグルテンを避けたい人々は専門店を好む傾向にある。
結論として、「〜なし」という選択は飲食業界にとって重要な戦略的分岐点であり、各店舗はすべてを網羅するのではなく、自らの強みを活かす領域を選ぶことが求められている。
3. 観光:オード県でオリーブオイル生産者のルリボが観光客を魅了
ルリボ(L’Oulibo)はフランス最大のテーブルオリーブ生産者であり、その職人的技術を活かして企業観光を推進し、販売拡大を図っている。オード県のビーズ=ミネルヴォワに位置し、年間約11万人の来訪者を迎えている。見学ルートは近年60万ユーロを投じて刷新され、ガイドツアー、試食コーナー、展示施設に加え、今後は感覚や香り、色をテーマにしたゲームも導入される予定である。
観光の核となるのは、ラングドック産ルク種オリーブの手摘み(年間約600トン)や、手作業による加工である。特にコンフィズリー(砂糖漬け)は職人によって代々受け継がれており、習得には4年かかる。これらの技術は現在では希少な存在となっている。
最も重要なのは見学ではなく、見学後の店舗での購入とオンライン販売である。店頭販売による追加売上は320万ユーロにのぼり、平均購入額は50ユーロ。これは2010年の2倍である。全体として、L’Ouliboは従業員35人を抱え、年間売上高は600万ユーロに達する。
また、年間に10万リットル以上のオリーブオイルを生産しており、製品の70%は直販で販売されている。観光客誘致のため、ツアーオペレーターや地元の観光拠点(民宿、キャンプ場など)との連携も進めている。
同社は「美食観光(Tourisme Gourmand)」や「Entreprise et Découverte」などの観光ネットワークに参加しており、2028年には企業向けセミナー室の開設を計画している。競合の激しい観光地(エロー県、ピレネー=オリアンタル県)に囲まれる中、L’Ouliboは地域振興の旗手としても機能している。