フランス欧州ビジネスニュース2025年8月4日(フリー)

1. 原子力:フラマンヴィル原発のフル稼働、晩秋まで延期
2. 「これは一時的な嵐ではない」:ドイツ自動車産業の死の夏
3. 首相官邸、仏エネルギーロードマップの公表を土壇場で阻止
4. ケンブリッジ大学が化石燃料反対債券指数を創設しようとしている理由
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1. 原子力:フラマンヴィル原発のフル稼働、晩秋まで延期
フラマンヴィルのEPR型原子炉の再稼働は、当初予定されていた8月13日ではなく、2025年10月1日に延期された。EDFは、主回路の3つ目のバルブに対して予防的な作業を行うことを決定した。これは、6月19日に行われた保守作業で、3つのうち2つのバルブに漏れが見つかったためである。この漏れは安全性には影響しないが、性能に支障をきたす可能性がある。
この原子炉は2024年9月に12年遅れで起動され、最大出力1,620MWのうち60%にしか到達していない。100%運転に達するには、原子力安全機関の認可を得たうえで、段階的な試験を実施する必要がある。EDFの目標は、12月21日までにフル稼働を実現することである。
この延期は、フラマンヴィル3号機の長年の遅延と技術的問題にさらなる負担を加えるものである。建設当初の予算は33億ユーロだったが、会計検査院によれば、利子込みで237億ユーロに膨れ上がっている。EDFの新CEOであるベルナール・フォンタナにとっては、フランスの原子力再興計画を予算とスケジュール通りに進めることが大きな課題となっている。
2. 「これは一時的な嵐ではない」:ドイツ自動車産業の死の夏
ドイツ自動車業界は、電気自動車への移行、中国市場での販売急減、およびアメリカの関税強化といった複合的な要因により、深刻な打撃を受けている。
· BMWは2025年第2四半期において純利益が31%減少した。
· 自動車部品世界2位のZFフリードリヒスハーフェンは、1億9500万ユーロの赤字を計上し、売上も10%減の198億ユーロとなった。
· ZFは過去にTRWおよびWabcoを200億ドルで買収したが、過剰債務により現在は一部事業の売却や提携を検討中である。中でも、1兆円規模(100億ユーロ)で2万9000人が従事する電動化部門の分離を巡り労組との対立が続いている。
· 2025年4月以降、欧州からアメリカへの自動車輸出には27.5%の関税がかけられ、フォルクスワーゲンは13億ユーロの損失を被った。
· 8月7日からこの税率は15%に引き下げられる予定だが、ドイツ自動車業界連盟(VDA)によると、それでも毎年数十億ユーロの損失が見込まれている。
· 自動車生産の一部はアメリカに移管され、ドイツ国内では今後5〜10年で7万人以上の雇用が失われる可能性があるとCAR研究所は警告している。現在、ドイツの自動車業界全体での雇用は80万人に上る。
· フォルクスワーゲンは3万5000人、アウディは7500人、ポルシェは3900人の人員削減をすでに発表している。
· 一方で、電気自動車の販売は着実に増加しており、BMWはアメリカ現地生産により関税の影響を受けにくい。中国での価格競争もやや落ち着きを見せ始めている。
3. 首相官邸、仏エネルギーロードマップの公表を土壇場で阻止
エネルギー多年度計画(PPE)の発表は、約2年間待たれていたが、フランス政府は再び延期する方針を示した。経済財政省(Bercy)が早期の発表を求める一方で、首相官邸(Matignon)は議会での議論を優先し、秋の再開を待つことにした。
この戦略的文書は、フランスのエネルギー政策目標と、今後制定される予定のグレミエ法(loi Gremillet)との整合性を取る必要がある。再生可能エネルギー分野、特に洋上風力発電をめぐって、エネルギー企業は投資計画の安定化を急いでおり、再生可能エネルギー業界団体は発表が近いことを歓迎していた。
しかし、政治的背景が状況を複雑にしている。最近のトランプ政権と欧州間のエネルギー合意では、7億5000万ユーロ相当のアメリカ産エネルギー製品の購入が約束されており、フランス国内ではこの合意に対して強い反発がある。この合意は、ガス、石炭、原子力などの分野でのアメリカ依存を強めるものであり、フランスが重視するエネルギー主権に対する打撃とみなされている。
さらに、議会の日程も発表を遅らせている。9月中旬に法案の第二読会が予定されており、10月末には上下院合同委員会での最終決定が行われる可能性がある。議会では、緑のエネルギーに対するモラトリアム(一時停止)を求める修正案が国民連合(RN)や一部の共和党(LR)議員によって可決されるなど、政治的分断が深まっている。