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フランス欧州ビジネスニュース2025年8月29日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年8月29日(フリー)
ギネス世界記録に認定された世界最大のチーズプレート(111種類)を誇るル・グラン・ビュッフェ・ド・ナルボンヌ

1.        エネルギー:仏政府が9月8日までに可決したい改革

2.        仏政府信任投票:政府、企業に税制面での保証を与える

3.        20年間の争いの末、パリとブリュッセル、EDFのダム事業について合意

4.        建設:エファージュはエネルギーとドイツで加速

5.        自動運転:欧州での進捗が遅い理由

6.        ナルボンヌにてフランスで「最高のレストラン」と称される場所

7.        レアアース:フランスのサプライチェーンの復活がもたらす課題

8.        BYDが欧州でテスラを追い抜き、関税の賦課金を回避

9.        ミライアのバイオ炭工場、南西部の森林を狙う

10.  ヨーロッパ人、2024年、電気自動車により魅力を感じている


1.        エネルギー:仏政府が9月8日までに可決したい改革


 フランソワ・バイルー政権の崩壊が濃厚となる中、産業・エネルギー省は、特に太陽光発電分野に関する重要な政令省令の発表を急いでいる。エネルギー高等評議会(CSE)の会合は当初より前倒しされ、9月4日に開催されることになった。これは、9月8日に予定される政権崩壊の前に、主要なテキストを官報に掲載するためである。
最大の目玉は、2025年10月1日から、住宅屋根への太陽光パネル設置に適用される付加価値税(TVA)を5.5%に引き下げる措置である。この減税は、今年春に決定された設置補助金の削減と、個人宅で生産された電力の買取価格を3分の1に引き下げる政策の影響を緩和する狙いがある。しかし、この優遇措置は環境基準(炭素排出量や銀・鉛・カドミウムの含有量など)を満たすことが条件であり、結果的に市場を席巻する中国製パネルの大半が対象外となるため、実効性に疑問が残る。
一方、フランスのパネルメーカーであるVoltecRedenは準備が整っているとし、将来的にはCarbonHolosolisといった新工場の稼働にも期待がかかっている。CSEではまた、小規模地上型太陽光発電所への支援策、農業用倉庫や駐車場上屋などの大規模設備に対する補助金改革、さらに省エネ証明書(CEE)の新制度導入やヒートポンプ市場の活性化バイオガス開発促進策も審議される予定である。
しかし、これらの措置が採択されたとしても、エネルギー業界の不満は収まらない見通しである。業界では、2年遅れとなっているフランスの新しいエネルギー基本計画の発表を強く求めている。バイルー首相が退陣前にこの政令を出す可能性は残っているが、原子力支持派再生可能エネルギー推進派の激しい対立により、結論は不透明なままである。政治的な混乱が続く中、フランスのエネルギー産業は明確な方向性を切望している。


2.        仏政府信任投票:政府、企業に税制面での保証を与える


 フランス経営者連盟(Medef)が主催したフランス企業家会議において、フランス・バイルー首相エリック・ロンバール経済相は、企業経営者の懸念に応える形で政府方針を示した。バイルー首相は、現状の経済情勢が深刻であるとの認識を示し、「財政赤字削減」をめぐる議論を明確にする必要があると強調した。さらに、「裕福層」による一定の「貢献」の可能性に言及したが、「生産活動の基盤には手を付けない」と明言し、「生産的投資」「国家的財産」と位置づけた。
一方で、エリック・ロンバール経済相は、企業界の関心が高い税制政策について具体的に説明し、大きな拍手を受けた。ロンバール氏は、「富裕税(ISF)」の復活、大企業利益への追加課税、および研究開発税額控除(CIR)の見直しをすべて否定した。また、2025年の財政赤字を国内総生産(GDP)の 5.4%に、2026年には 4.6%まで削減する目標を確認し、政府が440億ユーロの歳出削減を約束していると述べた。さらに、家族経営企業の事業承継を促進する「デュトレイ協定」や社会保険料負担の軽減を「競争力維持のため不可欠」と強調した。
ロンバール氏は、「企業保護」が「雇用」と「経済成長」の維持に不可欠であるとしつつ、「負担の分かち合い」は企業と他の国民との対立ではなく、労働者、公務員、退職者、そして相続などで特権を持つ層を含む国民全体で議論すべきであると指摘した。さらに、過度な課税が「富裕層の国外流出」を招く危険性に警鐘を鳴らし、富裕層にフランスに留まってもらうことが重要だと述べた。もっとも、こうした方針が実現するかどうかは、9月8日の信任投票の結果にかかっており、政府の存続次第である。


3.        20年間の争いの末、パリとブリュッセル、EDFのダム事業について合意


 フランス政府は欧州委員会との間で、20年にわたる水力発電ダムに関する対立を解決するための「原則合意」に達したと発表した。この対立は、フランスの歴史的なダム運営権(コンセッション)制度EU競争法に違反しているとされる点と、EDFの市場支配的地位をめぐる問題に起因していた。
今回の合意により、期限切れとなったダム運営権新たな許可制度に置き換えられることになる。さらに、安全性水資源管理地域雇用の維持、および技術継承を重視し、EDFやSociété hydroélectrique du Midi(Engie)といった既存事業者の運営継続を認める方針である。ただし、Compagnie nationale du Rhône(Engie)が管理するダムは対象外である。
一方で、フランスは競争入札を全面的に回避するために大きな譲歩を行う。EDFは自社のダム発電能力の約3分の1にあたる6GWを他の事業者に開放し、エネルギー規制委員会(CRE)の監督のもとで競争入札にかける。この電力量は他のエネルギー企業を通じて最終消費者に販売される。
EDFはこの減収分を補うため、フランス国内での水力発電能力を20%(約4GW)拡大する計画である。これには新たな揚水発電所(STEP)の建設が含まれており、40億〜45億ユーロを投じて水力発電設備の近代化を進める方針である。
EDFは今回の合意を「画期的な前進」と評価しており、マリー=ノエル・バティステル議員とフィリップ・ボロ議員による報告書を基にした法案が秋にも議会で審議される予定である。ただし、政治情勢によっては日程が変動する可能性がある。