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フランス欧州ビジネスニュース2025年6月5日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年6月5日(フリー)
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1.        重要金属・レアアース:ヨーロッパにとって重要な13の海外プロジェクト

2.        貯蓄:欧州経済に資金を提供するヨーロッパレーベルを立ち上げ

3.        ドイツ、企業向けに大規模な減税措置を実施

4.        フレンチテック: NEXT40、 新たなチャンピオンは誰か?

5.        ロレアル、英国企業メディク8を買収へ

6.        水素:会計検査院、フランスの戦略を否定

7.        Spotify、再び価格を値上げ

8.        法務分野に特化したAIスタートアップ「Ordalie」、180万ユーロ調達

9.        フレンチテック:ドクトリン、ドイツ市場に参入

10.  原子力:アルフェオール、分散した機器部門の買収を継続


1.        重要金属・レアアース:ヨーロッパにとって重要な13の海外プロジェクト


欧州連合(EU)は、重要鉱物資源の供給網強化に向けた戦略をさらに国際的に展開している。2023年には重要原材料法(Critical Raw Materials Act)を採択し、続いて17種類の戦略的重要鉱物リストを策定、さらに欧州域内で47件の開発プロジェクトへの投資を発表した。
そして6月5日ステファン・セジュルネ欧州委員は、EU域外の13件の投資対象プロジェクトを明らかにした。これらは鉱山製錬所を含み、特にグラファイトニッケルの確保に重点が置かれている。
今回の国際的連携により、EUは17種類中14種類の重要鉱物資源について、採掘や製錬の能力を確保する見通しである。ただし、チタンビスマスシリコンの3種類は依然として未対応である。
この取り組みは、地政学的危機への備えと、重要資源供給網の安全保障を目的とするものであり、EUの産業的レジリエンスの強化を図る戦略の一環である。


2.        欧州経済に資金を提供するヨーロッパレーベルを立ち上げ


フランスドイツイタリアオランダルクセンブルクを含む10か国のEU加盟国が、欧州企業への投資に特化した貯蓄商品のラベル「Finance Europe」の創設に合意した。このラベルは、個人の貯蓄を欧州企業に向けさせることを目的とし、有利な税制が適用される。
このラベルを取得するには、貯蓄商品の70%以上欧州企業の株式または債券に投資され、かつ最低5年間の運用期間が必要となる。実際の運用開始は2026年を予定しており、各国でできる限り簡素で有利な課税制度が導入される。
この施策は、資本市場同盟(UMC)の一環であり、各国で異なる形態を取りつつも、調和的で一貫性のあるアプローチを目指すとされている。
本制度はまた、米国への資本流出を防ぐ狙いもある。特にETF(上場投資信託)のような米国中心の低コスト投資商品若年層を含む欧州の個人投資家の間で人気を集めており、その影響で資金の流出が進んでいる。
欧州の貯蓄率は13.3%(米国は7.9%)と高く、合計で3兆5000億ユーロの貯蓄が存在し、毎年1000億ユーロずつ増加している。しかし、このうち3分の1のみが株式投資に回されており(米国では約50%)、さらに20%は海外に投資されている。
Ifopが5月末に実施した調査によれば、フランス人の52%がこのラベルを「有用」と評価しているが、依然として元本保証への強いこだわりがあり、5年間資金を引き出せないという条件が普及の障壁となる可能性がある。したがって、税制上の優遇措置が普及のカギを握るとみられる。


3.        ドイツ、企業向けに大規模な減税措置を実施


フリードリッヒ・メルツが率いるドイツ連邦政府は、就任から1か月で、5,000億ユーロ規模の経済刺激・投資促進のための税制改革パッケージを発表した。この計画の主な内容は以下の通りである:
·       2024年、2026年、2027年に行われた設備投資に対して、年間30%の定率減価償却を適用。
·       2028年から段階的に法人税率を15%から10%へ引き下げ。
·       未配当利益に対する税率を28.5%から25%へ引き下げ。
·       研究開発に対する税制優遇措置の拡大。
2025年から2029年までの減税総額は458億ユーロと見込まれ、2029年には税収が170億ユーロ減少すると予測されている。
化学業界団体のVCI(2,300社、56万人の従業員)や、自動車業界団体のVDAはこの政策を歓迎している。特に10万ユーロ以下の社用電気自動車には75%の即時税控除が適用される予定であり、中古EV市場の活性化にもつながると期待されている。
一方で、機械工業連盟VDMAなどからは、これらの措置は時期が遅すぎるという批判もある。特に法人税の引き下げについては、国際競争を考慮すればより早期かつ迅速な改革が求められるとの声が上がっており、さらなる構造改革の必要性が指摘されている。