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フランス欧州ビジネスニュース2025年6月4日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年6月4日(フリー)
リーンマネジメント用ソフトウェアを開発する仏スタートアップFabriq


1.        ファブリク、工場の信頼性向上のため2000万ユーロを調達

2.        スタートアップ企業Inclusive Brains、IBMと提携、人間の脳を解読

3.        核融合:ガウスフュージョン、ジロンド県で戦略的提携を締結

4.        原子力:保管方法のない放射性廃棄物、会計検査院が警告

5.        バイオ燃料の価格が上昇し続け、航空会社は非難

6.        ラインメタル、ケリングに代わってユーロ・ストックス50指数に加わる

7.        生物製剤のコピーは安価だが、フランスでは避けられている

8.        AIエージェント:仏Hがいかにして競争に参入しようとしているのか

9.        フランスのEコマース連盟、政府に対しShein、Temu、AliExpressの即時デリファレンス(検索除外)を求める


1.        ファブリク、工場の信頼性向上のため2000万ユーロを調達


 2019年に設立されたフランスのスタートアップ「Fabriq」は、2025年6月4日にExpedition Capitalおよび既存投資家のOSS Venturesから2,000万ユーロの資金調達を実施した。目的は、自社が提供するリーンマネジメント用ソフトウェアの商用展開を加速させることである。
同社のソリューションは、43か国にある600以上の工場で導入されており、LVMHAirbusRenaultAndrosなど大手企業にも採用されている。Fabriqは、現場オペレーションの迅速な課題解決を支援するため、デジタル化された日常業務管理システム(DMS)として、ERPの補完的存在を目指している。
ABBの調査によれば、フランス国内の工場の79%が毎月異常を経験しており、1時間の停止につき平均6万8,000ユーロの損失が生じている。この深刻な競争力の低下を、Fabriqはソフトウェアによって解決しようとしている。
同社は2024年に黒字化を達成しており、資金調達は必要に迫られてのものではなく、将来的に年次経常収益(ARR)を5,000万ユーロに引き上げるための成長投資である。今後は、AI技術をさらに統合し、ソフトウェアの高度化を図るとともに、国際展開の強化に注力する方針である。
特に注目しているのは北米市場であり、労働力不足に悩む米国の製造業において、同社のソリューションは雇用の魅力向上にも寄与できると見込んでいる。さらに、北欧地域への展開も計画中である。現在、顧客工場の40%が国外にあり、従業員は90名2025年末までにさらに10名の採用を予定している。


2.        スタートアップ企業Inclusive Brains、IBMと提携、人間の脳を解読


2022年に設立されたフランスのスタートアップ「Inclusive Brains」は、IBMと科学的パートナーシップを締結し、非侵襲型の脳-機械インターフェース(ICM)の開発を進めている。この技術は、脳活動を読み取り、動作を推論して実行することが可能であり、画面・キーボード・音声操作なしで思考によるデバイス制御を実現する。
1年半前から、Inclusive BrainsはIBMの計算能力、AI技術、量子マシンの支援を受けている。両社は35万通り以上のアルゴリズムの組み合わせを試験し、個々の脳に最適化されたICMの開発に成功したと発表している。これはかつて障害者のために開発されたリモコンが一般化したように、ユニバーサル技術にすることが目標である。
技術はすでにアブダビの病院で導入されており、整形外科医がリアルタイムで自身のストレス、集中度、疲労をモニタリングしている。Inclusive Brainsはソフトウェアのみを開発しており、約10社と提携している。分野は医療外(自動車、貨物など)にも及ぶ。データはローカル処理され、プライバシーも確保されている。
資金面では、ビジネスエンジェルの初期支援French Tech Emergenceの助成を除き、資金調達なしで運営を維持している。科学論文は発表準備が整っており、2025年末には商用化開始を見込んでいる。
Mordor Intelligenceによると、脳-機械インターフェース市場(非侵襲型および侵襲型含む)は2024年に20億ドル規模であり、2029年には32.5億ドルに達すると予測されている。競合にはBioSerenity(仏)、Natus Medical(米)、MindMaze(スイス)などがあり、医療、教育、ウェルビーイング、ゲーム、支援サービスなどで応用が進んでいる。
さらに、Neuralink(イーロン・マスク)も注目企業であるが、初の人体試験で4か月後に効果が低下するという課題が報告された。しかし、2025年6月2日時点で6億5,000万ドルを調達し、評価額は90億ドルに達している。


3.        核融合:ガウスフュージョン、ジロンドで戦略的提携を締結


スタートアップのGauss Fusion2022年末に創業され、核融合技術の開発に取り組んでいる。フランス・ボルドー近郊に拠点を置く産業企業AlsymexR&D契約を締結し、極めて希少な同位体であるトリチウムの生産技術確立を目指している。トリチウムは核融合炉の稼働に不可欠な水素の同位体である。
Gauss Fusionは従業員40名を擁し、2026年にはボルドーにエンジニアチームを配備予定である。この提携に数百万ユーロを投じる。パートナーのAlsymexは従業員650名を抱え、極限環境に耐える素材技術を有する。
ボルドー地域は核融合技術の国際的競争において要所となっており、フランス国内ではRenaissance FusionGenFも活動中である。一方、米国のCommonwealth Fusion Systemはすでに約20億ユーロの資金を調達している。
Gauss Fusionは2040年までに欧州初の核融合炉建設を目指し、2025年末にその設計報告書を完成させる計画である。技術責任者Frédéric Bordryは、実現には少なくとも15〜20年かかると述べており、2028年に出力50メガワットの核融合炉から電力を供給すると主張する米Helion社のような過度な楽観には警鐘を鳴らしている。