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フランス欧州ビジネスニュース2025年6月30日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年6月30日(フリー)
モジュール建築を得意とする独家族経営企業Goldbeck

1.        スペインの停電:停電の原因、大手電力会社送電網運営者REE、双方が責任をなすりつける

2.        テスラ、ビオンテック…ドイツのターンキー建設の隠れたチャンピオン、ゴールドベック

3.        ロシア産肥料への課税:フランスの産業は準備万端、農家は不安

4.        サン・ブリユーでは、マイナス価格の影響を受けない、海上風力タービンの儲かる取引

5.        AIギガファクトリー:欧州のプロジェクト募集に応募者が殺到

6.        熱波:猛暑がフランス経済に及ぼす重度なインパクト

7.        世界チャンピオンになるための鍵、欧州スタートアップ企業は、気ままに米国へ急速に進出している

8.        時間と費用がかかりすぎる複雑なプロジェクト、人工心臓企業カーマットが止まった理由


1.        スペインの停電:停電の原因、大手電力会社と送電網運営者REE、双方が責任をなすりつける

2024年4月28日に発生したスペインの大規模停電の原因は、ポルトガル国境近くのバダホス県にあるヌニェス・デ・バルボア太陽光発電所にあるとされている。この発電所は、イベルドローラ社が運営し、2020年に稼働を開始した。敷地面積1,000ヘクタール超、出力500メガワットの規模を誇り、ヨーロッパ最大級の太陽光施設とされ、総投資額は2億9,000万ユーロであり、その半分は欧州投資銀行(BEI)が拠出した。
この停電は、12時間以上にわたりスペイン全土に影響を与えた。原因は、異常な周波数変動とそれによる系統の脱落(デコネクション)であるが、正確な技術的説明はまだなされていない。
大手電力会社は、送電網運営者REEに対し、十分な数の従来型発電所(原子力・ガス火力)を稼働させなかったとして、無謀かつ軽率な運用を非難している。当日は10基の発電所(うち原子力3基、ガス火力7基)が指定されたが、9基のみが稼働可能だったとされる。
電力生産者の業界団体Aelecは、前日に電圧変動の兆候があったにもかかわらず、REEが追加の発電所を招集しなかったことを問題視している。これに対しREEは、設備側の責任として、動員された発電所が契約上の義務を果たさなかったことや、一部の施設が無断で系統から切断されたことを主張している。
このような不正・不備が続いたことを受けて、サラ・アーゲセン環境移行相は、新たな政令を発表した。これにより、競争当局と送電網管理者の権限強化が図られ、送配電インフラの整備強化および発電所の法的義務の徹底が求められている。再発防止のためのネットワーク全体の再構築が、今後の重要課題となる。


2.        テスラ、ビオンテック…ドイツのターンキー建設の隠れたチャンピオン、ゴールドベック


ドイツの家族経営企業Goldbeck社は、モジュール建築(工場製造建築)を専門とし、2010年以降で売上高を6倍に伸ばし、2024年には64億ユーロに達した。従業員数は13,000人超15の工場100以上の支社を有し、1年間に500棟超の建物を納入している。
代表的な実績には、ベルリン近郊のテスラ・ギガファクトリーBioNTechの製造施設倉庫、駐車場、病院、そして最近では住宅用建築が含まれる。たとえば、ベルリンの旧プール跡地に860戸の集合住宅を建設するプロジェクトなどがある。
Goldbeckの建築方式は、工場で部材を製造し、現場で組み立てるオフサイト方式である。鋼材はビーレフェルト(独)コンクリート部材はデンマークおよびチェコ浴室ユニットはポーランドで製造される。この方式は気候の影響を受けにくく、工期短縮とコスト削減につながり、住宅でのコストは平米あたり約2,000ユーロからと競争力が高い。
2019年にはフランスのGSE社を買収し、同社は2024年に8億7,600万ユーロの売上を記録した。
ドイツ政府は、5000億ユーロの特別基金を設立し、住宅建設の加速を目指している。Goldbeck社もこの分野への進出を強めており、プレハブ住宅の比率は2004年の13%から2024年には26%へと上昇している。
Goldbeckの共同経営者であるJörg-Uwe Goldbeckは、「高品質な住空間を短期間かつ大量生産可能なこの手法は、今後の住宅建設の鍵である」と述べている。


3.        ロシア産肥料への課税:フランスの産業は準備万端、農家は不安

2024年7月1日より、欧州連合(EU)はロシアおよびベラルーシからの窒素肥料に新たな関税を課す。2024年時点で、EUの肥料輸入の25%がロシアからであり、同国は世界市場価格より10〜15%安価で価格を崩していた。
新税は、すべての非EU輸入肥料に対する6.5%の関税に加え、2025年に40〜45ユーロ/トン2028年には315ユーロ/トン特別税が課される。現在の市場価格は330ユーロ/トンであり、価格はほぼ倍増することになる。
フランスでは、農業に使用される722万トンの肥料のうち、73.5万トンロシア産(2024年)。2022年以降で80%増加した。肥料業界団体(Unifa)によれば、欧州には30%の未使用生産能力が存在し、不当競争によって稼働できないという。今回の関税を機に、国内生産の再活性化が期待されている。
しかし、農家、特に穀物農家は、コスト増を懸念している。肥料は彼らのコストの21%を占めており、200ヘクタールの農場で年間1万ユーロの追加負担となる。一方で、小麦価格は前年比15%以上の下落が続いており、赤字経営に陥る恐れがある。
代替案として、アメリカ、トリニダード・トバゴ、エジプト、サウジアラビアからの輸入が検討されており、これらの国に対する関税撤廃が議論されている。しかし、欧州内の生産再開には最低3年を要し、平均20%の価格上昇脱炭素化の課題もある。
さらに、価格操作の懸念がある中で、農家側は肥料価格の定期的かつ客観的な監視体制の整備を提案している。すでに価格は1年で70ユーロ上昇し、325ユーロ/トンとなっている。