フランス欧州ビジネスニュース2025年6月20日(フリー)

1. EDF、水曜日から熱波のため原子力発電を削減する予定
2. 仏政府、衛星競争に残るためにユーテルサットに7億ドル以上を投資
3. スペイン大規模停電:送電事業者と電力会社が原因をめぐって互いに非難
4. ヨーロッパの再軍備:ロシアの脅威に警鐘を鳴らす報告書
5. ウラン:ニジェールがオラノ子会社の国有化を発表
6. 中国レアアース規制による欧州自動車工場の生産遅延
7. ヴェオリア、米国でPFAS処理施設を増強
8. AI: 仏データ監視新興企業 Sifflet 、 1,600 万ユーロを調達
9. アルセロール・ミッタル、ドイツの製鉄所の脱炭素化を断念
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11. なぜ先進半導体戦争でヨーロッパは負けていないのか
1. EDF、水曜日から熱波のため原子力発電を削減する予定
Météo-Franceは6月28日(金)正午からフランスの16県にオレンジ警報(猛暑警戒)を発令し、これを受けてEDF(フランス電力公社)は、6月25日(水)から原子力発電所の出力制限を実施する可能性があると発表した。特に対象となるのはアン県のブジェ原発であり、原因はローヌ川の水温上昇による。
原発は、周辺の川や海水を用いて冷却を行い、その水を温めた状態で排出するため、生態系保護の観点から、水温上昇や水量の上限が厳しく定められている。猛暑や干ばつの影響で、EDFはこれらの制限を守るために、しばしば6月時点から出力調整を行っている。
2000年以降、こうした環境要因(水温の上昇や川の流量減少)による原子力発電の損失は、年間発電量の平均で0.3%に相当する。
フランスでは過去に2019年と、より早かった2022年6月にも顕著な熱波が発生しており、気候変動によって、こうした熱波はより早く、頻繁に、そして強くなる傾向にある。
2. 仏政府、衛星競争に残るためにユーテルサットに7億ドル以上を投資
フランス政府は、イユーテルサット(Eutelsat)の資本増強に対し7億1,700万ユーロを出資し、持株比率を現在の13%から29.9%へと引き上げ、筆頭株主となる予定である。この再資本化の目的は、低軌道(LEO)への技術移行を支援することであり、アメリカのスターリンクに対抗するための戦略的分野である。
最初の増資は7億1,600万ユーロで、1株4ユーロ(平均株価に対して32%のプレミアム)の価格で既存株主向けに実施される。2回目の増資(6億3,400万ユーロ)は2024年末までに一般にも公開される。
2028~2030年までに400基のOneWeb衛星が更新され、2029年からは欧州の新しい衛星網であるIris²の配備も始まる。
主要な出資者は以下の通りである:
· フランス政府:5億2,640万ユーロ
· バルティ・スペース(Bharti Space):3,140万ユーロ
· CMA CGM:1億400万ユーロ
· FSP(戦略的投資ファンド):5,780万ユーロ
2030年までの投資総額は40億ユーロで、半分はOneWebの440基の衛星更新、残り半分はIris²計画に充てられる。
同社は2028〜2029年度に売上高15億~17億ユーロ、利益率60%以上を見込んでおり、現在の約11億ユーロから大きく成長する見通しである。OneWebの商業パイプラインは37億ユーロに達し、2033年までに市場は5倍に成長すると予測されている。
さらに、フランス政府との軍事通信契約も締結され、他の欧州諸国やNATOの参考モデルとなる可能性がある。また、2億9,100万人の契約者を持つ通信大手Orangeは、LEO(低軌道)での多年度契約を結び、アフリカや中南米の未接続地域から政府用途にまで事業を拡大している。
3. スペイン大規模停電:送電事業者と電力会社が原因をめぐって互いに非難
2024年4月28日、スペインおよびポルトガル全土が史上最大の停電に見舞われた。政府の報告書(全182ページ)は、送電網運営者REE(Red Eléctrica Española)と複数の電力会社に責任があると結論づけている。
原因は、前日の発電予測の不備と、安定化目的で予定されていた火力発電所の代替がなされなかったことである。10時30分以降に大規模な電圧変動が観測され、12時33分にはネットワークがわずか12秒で完全に崩壊した。
REEと電力会社は互いに非を押し付け合っている。政府は、電力供給者が周波数50Hz維持義務を果たしていないとし、2024年に6億ユーロがこの目的のために支払われていたことを指摘している。一方REEは、不正な自動遮断が危機を拡大させたと主張しており、一部の遮断が規定値を超えない状態で行われたと報告している。ただし専門家は、これらの遮断は自動制御であり、ナノ秒単位の誤差で誤作動が起きる可能性もあると指摘している。
再生可能エネルギーが原因であるという説は、カタルーニャ地方の業界団体Renovem-nosによって否定されている。彼らは、今回の事故はREEと火力発電所による計画・運用の失敗によるものだと強調している。
この事故は、電力網の安全性確保とコスト削減のジレンマも浮き彫りにした。特に日中は電気料金がマイナスになることもあり、ガス火力発電所への報酬は系統安定に不可欠である。
政府は今後以下の対策を推進するとしている:
· REEと発電事業者への監査の強化
· フランスとの送電線接続の加速
· ガス火力発電の比重増加による電圧制御強化
この安全性向上にはコストが伴い、2024年4月29日以降、規制料金の電気代が平均4ユーロ上昇している。