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フランス欧州ビジネスニュース2025年5月8日(フリー)

1.        関税:ブリュッセル 、トランプ大統領への1000億ドルの対応策を準備

2.        ミストラル、企業向けAIアプリでマイクロソフトに挑戦

3.        対外貿易シェア、フランス、市場シェアを失い、今年不振なスタート

4.        経済成長、失業率:フランス、雇用の意外な抵抗

5.        エリザベス・ボルネ教育大臣、科学プレパに女子生徒の割り当てを設けて「運命を強制」したいと考え

6.        ミネラルウォーター汚染:ネスレ、ペリエ、コントレックス、エパールの精密ろ過を停止するよう命じられる

7.        ヴェオリア、15億ユーロで旧GEウォーターの単独所有者となる

8.        株主総会:ポティエ社長、エア・リキードへの投資は、毎年12%の利益を生み出す

9.        ロシアからの天然ガス輸入終了:TotalEnergiesとEngieにとっての意味

10.  フランス、30 年前と比べ、中規模工業企業の数が57%増加


1.        関税:ブリュッセル 、トランプ大統領への1000億ドルの対応

策を準備

欧州連合は交渉がまとまらなかった場合、米国による20%の追加関税に対抗して、1000億ユーロ相当の米国製品に報復関税を課す準備を進めている。対象にはボーイングの航空機も含まれる見込みで、欧州委員会(フォン・デア・ライエン委員長)は先週、加盟国にこの方針を通知した。
トランプ政権は3月以降、欧州からの輸入品に20%の関税を課すと発表したが、交渉の余地を残すため7月まで適用を停止している。現在も基本関税10%が維持されており、鉄鋼・アルミニウム・自動車には25%の関税が適用中である。
商務担当マロシュ・セフコヴィッチ委員は欧州議会で、EUの輸出品の70%がすでに10~25%の関税下にあると説明し、最終的には5490億ユーロ(輸出総額の97%)に影響が及ぶ可能性を示唆した。エアバスCEOのギヨーム・フォーリー氏は、ボーイング機への課税を支持する意向を表明し、詳細な対象リストは木曜日に公表される予定である。

💡 解説

欧州委員会が1000億ユーロ相当に米国製品の報復関税を抑えたのはアメリカの過度な反発を抑え込み、米国にとってもっとも痛手となる品(航空機のボーイング、農産品、大豆、リキッド化天然ガスなど)で最小の副作用で最大の圧力をかけるためだ。
欧州委員会はこれで米国が交渉のテーブルに着くのを期待している。また、これより高い報復関税額を決定すれば、加盟国政府および欧州議会での多数決が取れないリスクがあり、さらに、交渉がうまくいかなかった時、米国が報復関税を増やし、品目を輸入するEU加盟国側の産業や消費者にも大きな負担が及ぶ可能性もある。


2.        ミストラル、企業向けAIアプリでマイクロソフトに挑戦


Mistralは設立2年を迎え、2月に一般向けアプリ「Le Chat」をリリースした後、最新製品として企業向けLe Chat Enterpriseを発表した。これはMicrosoftのCopilotと正面対決するチャットボットで、Mistral Medium 3という自社開発モデルを搭載し、従業員が利用するSharePoint、Google Drive、Gmail、OneDrive、Google Calendarなどをインテリジェントに連携する。
最大の特長はプライベートクラウドでの導入が可能な点で、機密情報を扱う防衛、エネルギー、金融サービス業界などで強いニーズがある。すでにCMA CGM、BNP Paribas、Stellantisなど大手が顧客として名を連ねる。Arthur Mensch氏によれば、同社の事業は過去100日間で3倍に急拡大しており、特にヨーロッパおよび米国外での伸びが著しい。
価格はCopilot(月額30ドル)より低コストを目指す。Mistralはまだ2025年の具体的目標を公表していないが、500 百万ユーロの売上達成に向け「順調に進んでいる」としている。

💡  解説

Chatgptのライバルと言われている仏Mistralは企業向けOffice製品市場で圧倒的なシェアを持つMicrosoftのCopilotをメインのターゲットにしたのは注目に値する。
Microsoftの2024会計年度の報告によれば、Microsoft Officeを含む「Productivity & Business Processes」部門の世界売上高は778億ドル。マイクロソフトは国別のOffice売上高を公表していないが、欧州地域は同部門の約30%を占める。この数分の1の市場を獲得するだけでもMistralは相当な売り上げを見込めるだろう。


3.        対外貿易シェア、フランス、市場シェアを失い、今年不振なスタート


2025年第1四半期、フランスの貿易収支赤字は26億ユーロ拡大し、合計203億ユーロに達した。輸入は2.1%増の1726億ユーロ、輸出は0.6%増の1523億ユーロにとどまり、実質量では1.4%減少した。12か月累計の赤字は810億ユーロ前後で推移している。
エネルギー収支は、ブレント原油価格の下落にもかかわらず、輸入量増加により3か月で22億ユーロ悪化し、130億ユーロとなった。製造品収支赤字は10億ユーロ拡大し124億ユーロに、農業収支は3四半期連続で赤字を維持している。
米国の追加関税発効前に、一部事業者は影響を先取りしており、3月の米国向け皮革製品輸出は50%増加、メキシコ製ターボファン輸入は通常の15倍に膨らんだ。とはいえ、米国向け輸出は総輸出の6.2%に過ぎない。
中国との貿易赤字は最も深刻で、3か月で111億ユーロに達し、2019年末から2025年初頭では350億ユーロから450億ユーロに拡大した。EU向けでは、赤字が72億ユーロ(前四半期比+14億ユーロ)に拡大し、ドイツ向け輸出の減少とスペインからの電力・エネルギー資源・農産品輸入増が影響している。

💡  解説

フランスの全輸出に占める米国向け輸出は6.2%に過ぎないから、米国関税の仏貿易収支への影響は2025年限定的だろう。昨今のブレント原油価格の更なる下落によるエネルギー収支は更に改善する余地があるので、一番のキーとなるのは中国との貿易赤字がどのように推移するのか。中国がアメリカと関税で対決する中、米国に行くはずだった大量の消費財、電気自動車、ソーラーパネルが欧州にダンピングされる可能性が高い。