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フランス欧州ビジネスニュース2025年5月15日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年5月15日(フリー)


1.        外国直接投資:フランス、欧州のリーダーシップを維持

2.        仏Qwant、同業Liloを買収、Googleに対する統合を継続

3.        軌道上にデータセンターを展開するフランスとアラブ首長国連邦の同盟

4.        金:スイスの金産業は活況を呈している

5.        ステランティス、欧州における100%電気自動車への移行を延期

6.        エンジー、第1四半期の業績微増、2025年の予測を確認

7.        シーメンス、第2四半期、予想を上回る、ガイダンスを確認

8.        フランス:4月のインフレ率、1年間で0.8%と確認

9.        ユービーアイソフト、『アサシン クリード シャドウズ』の成功により業績悪化を抑制

10.  アドテックGreenbids、ナスダック上場企業に買収される

11.  仏アパレルメーカー、スリップ・フランセの180度転換

12.  サノフィ、米国に少なくとも200億ドルを投資


1.        外国直接投資:フランス、欧州のリーダーシップを維持


2024年ヨーロッパ全体の弱体化が進む中にあっても、フランス6年連続外国投資プロジェクトの誘致において欧州首位の地位を維持した。コンサルタント会社EYによると、投資決定数は1,025件で、前年比で14%減少という過去にない落ち込みであった。
ライバルであるドイツ17%減(607件)イギリスは13%減(853件)と、同様に打撃を受けている。3年後の展望については、70%の国際企業経営者がフランスの魅力が高まると見ているが、この数値は5ポイント低下した。
主要投資国であるアメリカ12%減中国11%減ドイツ34%減とフランスへの投資を控えている。
一方で、量子技術人工知能脱炭素エネルギーといった将来性のある分野において、フランスは引き続き評価されている。2024年2月のAIサミットでは、1,090億ユーロの投資計画が発表された。フランスは産業関連プロジェクト415件(うち74件がエネルギー分野)誘致し、これは欧州全体の4分の1以上に相当する。
ただし、外国による産業投資は前年比で22%減少研究開発(R&D)分野では15%減少した。新規投資家によるプロジェクトは全体の15%にとどまっており、プロジェクトによって創出される雇用も29,000人と前年より27%減、1件あたりの平均雇用数は30人に落ち込んだ(比較:イギリス・ドイツは48人スペインは125人)。
労働コストも課題であり、フランスの時間当たり労働コスト44.11ユーロで、ドイツ(43.97ユーロ)と同水準だが、スペイン(25.79ユーロ)やポーランド(16.70ユーロ)と比べると割高である。なお、スペインとポーランドではそれぞれ15%、13%のプロジェクト増を記録している。
投資家たちは、土地開放工場のロボット化イノベーション推進におけるフランスの改革速度が不十分であると見ている。さらに、エネルギー価格内需の停滞も懸念材料とされている。競争力強化のためには、税制の軽減将来産業の支援が求められるが、同時に財政健全化も進めねばならず、フランスにとっては難しいかじ取りが続く。


2.        仏Qwant、同業Liloを買収、Googleに対する統合を継続


フランスの検索エンジンであるQwantLiloは、人工知能(AI)への投資を強化するために提携を決定した。Qwantは最近、OVHcloudの創業者であるオクターヴ・クラバの傘下に入り、Microsoftへの依存度を下げることを目指している。2023年、Microsoftが提供する検索インデックス(Bing)の価格が引き上げられたことがきっかけとなった。
Qwantは現在70人の従業員を抱え、月間600万人のユニーク訪問者を持つ。今回、2015年に創設された検索エンジンLiloを買収した。Liloは利益の80%を社会的・環境的プロジェクトに還元しており、総額は500万ユーロに達する。Liloは1日あたり100万人以上のユニーク訪問者を持つ。Qwantはこの買収によりユーザー基盤を拡大し、自社の技術を強化する狙いがある。
2024年末には、Qwantはドイツの検索エンジンEcosiaと提携し、European Search Perspectiveという名の共同出資企業を設立。これにより技術投資を共同で行い、Bingインデックスへの依存を段階的に減らし、検索クエリの少なくとも50%を自社で処理可能にする計画である。
さらにQwantは、自社の検索インデックスを活用しながら、生成AIと融合させる取り組みを進めている。具体的には、RAG(検索拡張生成)と呼ばれる技術を用い、小規模なデータ群でAIを活用する。この分野では、フランスのAIスタートアップであるMistral AIと連携している。
Qwantは財務情報や投資額を明かしていないが、Googleが支配する検索分野において主権的な代替手段となることを目指している。
 


3.        軌道上にデータセンターを展開するフランスとアラブ首長国連邦の同盟


フランスのスタートアップLatitudeは、アラブ首長国連邦(UAE)の企業Madari Spaceと提携し、2028年から数十基の衛星を打ち上げ、軌道上データセンターのコンステレーションを構築する計画である。使用されるのはフランス製の小型ロケットZéphyrであり、その初打ち上げは2026年末に予定されている。最初のプロトタイプ衛星2026年に打ち上げられる。
Zéphyr全高19メートル2段式で、低軌道に200kgの搭載能力を持つ。発射基地はクライアントの希望に応じて選択でき(クールーサクサヴォードキルナなど)、専用打ち上げサービスを提供する。他の企業とシェアする「ライドシェア」方式とは異なり、1回の打ち上げにつき1クライアント専用である。2030年までに年間50回の打ち上げを目指している。
この協定は、地球上の膨大なエネルギーを消費するデータセンターに代わる選択肢として、宇宙空間への設置を目指す国際的な動きの一環である。すでにAmazonMicrosoftなどの大手企業のほか、欧州委員会も動き出している。2022年、EUはThales Alenia Spaceに対し、Ascendという名の軌道データセンター実現可能性調査を委託し、その実証ミッションを2026年に予定している。
Madari Spaceは、衛星の小型化人工知能によるデータ処理・保護技術を活用し、打ち上げ、保存、処理、地上局との接続までを含む一体型サービスを提供する予定である。この取り組みは、2006年に始まったUAEの宇宙戦略フランスとの宇宙協力を象徴している。UAEはすでに複数の衛星を開発しており、2021年には火星探査機Hopeを軌道投入したことで、世界で5番目の火星探査国となった。