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フランス欧州ビジネスニュース2025年12月30日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年12月30日(フリー)
Photo by Unleashed Agency / Unsplash

1.        リゾート地で新たな人気を博している海水温差熱利用、タラソサーミー

2.        エアバス、中国で大成功:地元航空会社2社が80億ドル相当のA320を発注

3.        「今こそ行動の時」:企業にとっての新たな緊急事態、量子脅威から身を守る

4.        トレニタリア、米ファンドの支援を受けてフランスでの成長を加速

5.        新規株式公開:欧州、世界市場に遅れをとる

6.        スターリンクに対して、エアバスとTAS、低軌道衛星コンステレーションで対抗

7.        欧州でデジタルIDが銀行サービスへのアクセスをどのように変革するか


1.        リゾート地で新たな人気を博している海水温差熱利用、タラソサーミー

フランスのラ・グランド=モット市は、マルセイユやモナコに続き、海水熱を利用した冷暖房・給湯システム「タラソサーミー(海水温差熱利用)」を導入した。この技術はヒートポンプを使い、海水と混ぜることなくその熱エネルギーのみを真水の循環回路に移す仕組みである。1963年にモナコで始まった古い手法だが、近年のポンプ技術の向上により急速に普及している。
このエネルギーの最大の特徴は、他の再生可能エネルギーと異なり天候に左右されない安定性にある。ラ・グランド=モットでは、年間1800トンの二酸化炭素排出削減と10%の光熱費節約が見込まれている。さらに、従来のエアコンのように屋外に排熱を放出しないため、都市のヒートアイランド現象を抑制できる利点もある。現在、フランスでは地中海沿岸を中心に約15のプロジェクトが稼働中だが、潮位差の影響を受ける大西洋側では導入に課題が残る。
普及に向けた課題としては、依然として公的補助金への依存度が高いことや、海洋生態系への影響が挙げられる。排水による海水温の変化がアマモ場やサンゴ礁に悪影響を及ぼさないよう、取排水の温度差を5度以内に抑えるなどの厳格な監視が必要とされる。2026年にはカンヌでも大規模なネットワークの稼働が予定されており、海の熱を利用した脱炭素化の取り組みは、沿岸都市の新たな戦略として注目されている。


2.        エアバス、中国で大成功:地元航空会社2社が80億ドル相当のA320を発注

2025年12月29日、中国の民間航空大手である吉祥航空と春秋航空が、エアバスA320ファミリー計55機を約80億ドルで購入する計画を明らかにした。この契約により、欧州の航空機メーカーであるエアバスは、世界最大の成長市場である中国での圧倒的なシェアをさらに拡大することとなる。
この成功を支えているのは、長年の戦略である天津の最終組立工場の存在である。エアバスは中国国内に生産拠点を持つ唯一の海外メーカーであり、現地生産によって物流上の障害を回避し、規制当局から「地域パートナー」としての信頼を得ている。現在、中国はエアバスの年間生産量の2割から2割5分を吸収しており、同社にとって経営の根幹を支える極めて重要な市場となっている。
対照的に、競合他社は厳しい状況に置かれている。中国国産のCOMACは、期待のC919が生産遅延に見舞われ、2025年の引き渡し実績も目標を大きく下回っている。また、米ボーイングは、機体の技術的問題や米中間の貿易摩擦を背景に2017年以降大規模な受注を得られておらず、中国市場で孤立を深めている。
今回の受注は、以前から取り沙汰されている計500機規模の巨大契約の第一歩である可能性が高い。中国市場は今やエアバスの戦略的中心地へと変貌を遂げており、民間航空会社との契約を固めることで、同社は今後10年間の安定した受注見通しを確保し、ボーイングとの差を決定的なものにしている。


3.        「今こそ行動の時」:企業にとっての新たな緊急事態、量子脅威から身を守る

量子コンピュータの実用化によって現在の暗号技術(RSAやECC)が突破される脅威、いわゆる「Qデー」が迫っている。米国標準技術局(NIST)は2035年までに現在の標準が禁止されると予測しているが、フランス国家情報システムセキュリティ庁(ANSSI)は、それよりも早い2030年までにあらゆる組織が耐量子計算機暗号(PQC)へ移行することを求めている。
この問題は単なる将来の懸念ではない。攻撃者が今データを盗んで保存し、将来的に量子コンピュータを用いて解読する「今保存し、後で解読する」という手法により、軍事や医療、金融などの機密情報は既にリスクにさらされている。しかし、この移行作業はシステム全体に及ぶ暗号鍵の特定や在庫調査が必要であり、完了までに最長で10年を要することもある。その規模や負担の大きさから、かつての「2000年問題」にも例えられている。
ANSSIは対策を加速させるため、2027年以降は耐量子性のない製品の認定を停止し、2030年には未対応製品の購入を事実上禁止する方針だ。フランス銀行などの一部の機関では既に実証実験が行われているものの、一般的なウェブサイトでの普及率は依然として1割に満たない。信頼できる暗号技術はサイバーセキュリティの根幹であり、全ての組織にとって、重要度の高いデータから優先的に対策を講じることが不可欠な課題となっている。