フランス欧州ビジネスニュース2025年10月3日(フリー)
1. フランス市場を制覇するための中国電子商取引プラットフォーム戦略
2. データセンター:ルグラン、重要な買収により米国でのプレゼンスを強化
3. 自動車:中国の自動車メーカーは西洋人にとってトロイの木馬か、それとも命綱か?
4. 仏Virbac、初の薬剤を配合した猫用ドライフードを発売
5. 新税の影響で、フランスの地方空港、目的地の大幅減便
6. ドイツに夢を与えるリチウム鉱床
7. 産業用熱、スタートアップの新たな情熱
8. 品質管理:TiHive、多角化のために資金を調達
9. 「10年間で1兆2000億ユーロの投資」:欧州委員会はいかにして欧州の貯蓄を動員しようとしているのか
10. BHVでのShein出店:フランス預金供託公庫の反対でSGMは困った立場に
11. オランジーナ、シュウェップス、オアシスを所有するサントリー、ラ・クルヌーヴの工場を閉鎖
1. フランス市場を制覇するための中国電子商取引プラットフォーム戦略
中国系EC各社の欧州攻勢が加速しており、仏市場でもShein、Temu、Aliexpress、JD.comがそれぞれの手法で存在感を高めている。とりわけSheinは仏初の常設展開としてBHVに来月入居し、年内にGaleries Lafayette地方店5店へ広げる計画で、Pimkieとの提携発表からわずか2週間後である。背景には欧州の6億人市場(オンライン購入は仏80%)と、2025年にEC市場規模8,750億ユーロ、成長率7%という追い風がある。中国本土のオンライン成長が2019年16.5%から2024年7.2%へ減速し、米中摩擦で米国投資を欧州へ振り向けたことも大きい。Temuは2023年仏上陸後、訪問数でAmazonとLeboncoinに次ぐ3位となり、Temu–Shein–Aliexpressの合算オーディエンスは3,540万人(Amazon約3,800万人)に迫っている。Sheinは9カ国でマーケットプレイスを展開し、ビューティーやホーム領域へ拡張、物流は現地パートナーやAmazonのフルフィルメントを活用しているとされる。中小企業のデジタル化支援を掲げる一方、AlibabaはBusiness Franceと組み200社の越境展開を後押しする。Temuは倉庫を持たず将来的に欧州売上の最大80%を現地セラー・物流で処理するとする。攻勢は実店舗にも及び、JD.comは欧州5倉庫(仏含む)に加え、今夏にCeconomyへのOPAを仕掛け、SaturnやMediaMarkt、FNAC Dartyの22%持分へ波及する可能性がある。仏国内では反発も強く、Galeries LafayetteはBHVでのShein導入に「深い不同意」を表明、業界団体やパリ市も再考を要請している。規制面では、欧州委による調査が進むほか、仏CNILがクッキー・データ管理で1億5,000万ユーロ、仏当局が虚偽プロモで4,000万ユーロの制裁を科しており、BHV進出は築かれつつある「防波堤」に生じた一つの亀裂となっている。
2. データセンター:ルグラン、重要な買収により米国でのプレゼンスを強化
LegrandがAvtron Power Solutions(電源試験ソリューションの世界首位)を買収する計画である。取引価値は11億ドル(約9.36億ユーロ)で、2017年のMilestone(12億ドル)以来最大となる。10月の条件充足後に完了予定で、米国中心のデータセンター戦略を大きく前進させる狙いである。オハイオ州クリーブランド本社のAvtronは年商3.5億ドル規模で、売上の約半分をデータセンター、残りを医療施設等の試験向けが占める。収益の70%超を米国内で稼ぎ、工場は5拠点(米国3・メキシコ1・英国1)を保有し、後者2拠点は輸出に担う。今回でLegrandは、データセンター分野のロードバンク(通電試験装置)に初参入し、設備稼働前の受電・給電系統試験まで含む“グレー空間”の提供力を補強する。
2018年のBenoît Coquart就任以降、Legrandは42件のM&Aを実行し、そのうちデータセンター関連が18件。同分野は2025年プロフォルマ売上の約25%(25億ユーロ)まで拡大する見込みで、2017年の3億ユーロから急伸している。需要環境はAIとクラウド移行で逼迫し、データセンター空室率は5%未満と低水準である。世界市場の半分超は米国にあり、欧州でも電力・用地・水資源を背景に加速が期待される。現時点で北米は2025年売上の40%超、フランスは12%を占める。Legrandは引き続き機会を探索し、米欧両市場でポートフォリオの高付加価値化を進める構えである。
3. 自動車:中国の自動車メーカーは西洋人にとってトロイの木馬か、それとも命綱か?
欧州自動車大手が中国勢を自社の工場や販売網に受け入れる動きが加速している。背景はEUや新興国の通商障壁回避を狙う中国勢と、過剰設備に悩む欧州勢の利害一致である。ルノーは既に吉利(Geely)とブラジル・韓国で提携し工場を開放しており、奇瑞(Chery)とコロンビア・アルゼンチンでの生産ライン共有も検討している。ステランティスは中国新興のリープモーター(Leapmotor)に欧州市場の扉を開く一方、同社を自らの輸出JVに組み込み、欧州で約400の販売・アフター網を即時に確保させたうえ、サラゴサ工場でSUV「B10」を来年から生産予定である。稼働率面では、ステランティスの欧州工場は能力380万台に対し実生産280万台とギャップが大きく、受託生産で穴埋めを図っている。他方で「中国勢のトロイの木馬」化を招くとの警戒も強い。カルロス・タバレスは中国メーカーが欧州シェア10%に達すると見通しており、既存勢への圧力は増している。対照的にフォルクスワーゲンはパートナーの小鵬(Xpeng)を当面中国にとどめ、欧州の工場や販売網の開放は拒んでいる。欧州勢は「ウィンウィン」の短期最適と、将来の競争力流出というリスクのはざまで難しい選択を迫られている。