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フランス欧州ビジネスニュース2025年10月1日(フリー)

フランス欧州ビジネスニュース2025年10月1日(フリー)
仏スタートアップAnimajが、独Studio 100から「みつばちマーヤ」のシリーズと商品化の権利を取得

1.        EDFの2026年の電気料金を抑制するための政府の驚くべき策略

2.        ランニング:すべてを変える可能性のある新しいセンサー

3.        帆船による海上輸送:「ルコルニュ首相が私たちの技術進歩を死なせないように願おう」

4.        「より健康的で、より魅力的に」:ネスレの今後5年間の欧州戦略

5.        ホタテ:新たな記録シーズンに向けて

6.        太陽光と風力:アルディアンのおかげでアクオの発電所プロジェクト、3倍になる計画

7.        『ハリー・ポッター』と『侍女の物語』の間:ファンフィクション現象『アルケミズド』が書店に登場

8.        オンライン広告で台頭するフランス企業Vibe、「コネクテッドTVのメタ」になる野望

9.        フランス製食器洗い機「EverEver」の新たな挑戦

10. 「この技術が出現すれば、それが主流となるだろう」:アルケマ、新世代の電気電池を準備

11. フランスのスタジオAnimaj、象徴的な「Maya the Bee」のライセンスを取得


2025年10月1日
LES ECHOS
フランス経済
 
1.        EDFの2026年の電気料金を抑制するための政府の驚くべき策略
 

CRE(エネルギー規制委員会)は、2026–2028年のフランス電力EDF原子力の基準生産費を1MWh=60.3ユーロ2026年価値)と設定した。ARENH(歴史的原子力の規制アクセス、100TWhを42ユーロ)が2026年1月1日に終了する直前であるが、想定された値上がりは起きなかった。CREは、廃炉引当金など一部指標を算定式から外すという9月5日の政令に基づく手法見直しで▲5ユーロ/MWhの効果が出たと説明し、春時点の「66〜67ユーロ」見通しから低下した。他方、EDFは「完全コスト」を79.6ユーロ/MWhと主張するが、CREの新手法で調整すると64.4ユーロ/MWhとなり、最終的な差は資本コスト仮定の違いによる約4ユーロである。
2026年の原子力売上は、発電量
360TWh、平均販売価格65.86ユーロ/MWhを前提に237億ユーロと見積もられる。ARENHの安値部分が消えるため一部の産業用電力では2026年料金上振れもあり得るが、CRE規制料金(TRV)の家計に「ビッグバンなし」とみる。実際、仏の2026年受渡の卸電力は56ユーロ/MWhまで下落しており、需要の弱さが背景にある。
また、VNU(普遍核拠出金)と呼ぶ新税は2026年適用されない公算が大で、EDFの価格とCRE算定コストの乖離が小さいため、消費者への分配は見込まれにくい。もっとも、EDF2040年までに最大4,600億ユーロの投資需要とキャッシュ不足のミスマッチが指摘される中、販売単価の引上げ余地が限られる。経営面では、長期契約の進捗不足が響きルック・レモン前CEOが退任、ベルナール・フォンタナの下で再交渉が続く。全体として、60.3ユーロ/MWhの基準は消費者には緩和材料である一方、EDFの資金計画には逆風である。


2025年9月30日
LES ECHOS
フランス経済
 
2.        ランニング:すべてを変える可能性のある新しいセンサー
 

仏英スタートアップMovmentaが、ランニングシューズのミッドソール厚みを常時把握し、クッション性の劣化タイミングを知らせるセンサーSolloを開発している。従来「4〜6か月」や「400〜600km」で交換という目安が語られてきたが、実際は使用強度・路面・体格・フォームで大きく異なるため、靴そのものが劣化度を示す発想である。Sollo数cm²の透明ポリマー製で1.5グラムと超軽量、組立時にソールへ封入される。内部に電池を持たない受動素子のためコストは3ユーロ未満に抑えられ、ユーザーはスマートフォンを近づけてNFCで読み取るだけで、磁場計測から算出した厚みとそれに基づく吸収性能、理論摩耗プロファイルとの照合結果、残り寿命推定が得られる。素材大手Arkemaとの提携により、同社の高性能エラストマーPebaxを用いる主要ブランド向けモデルに2026年夏から3社で順次搭載が始まる見通しで、実使用環境での劣化データをメーカーが初めて大量に取得できる点も大きい。販売側にとってはシューズとランナーを結ぶダイレクトなコミュニケーションチャネルとなり、従来アプリやスマートウォッチが握っていた接点を靴自体に取り戻す効果がある。今後は同一素子上に追加センサーを載せ、回内(プロネーション)/回外(サピネーション)の傾向判定や、加速度センサーでの数秒計測から足部角度・接地時間・衝撃強度などを抽出して走者のパフォーマンスそのものを評価する拡張も計画している。総じて、Solloは低コスト・無電池・NFCという実装容易性を武器に、交換時期の可視化からフォーム最適化までを一体化するスマートシューズの中核技術になり得るとしている。


2025年9月30日
LES ECHOS
フランス経済
 
3.        帆船による海上輸送:「ルコルニュ首相が私たちの技術進歩を死なせないように願おう」
 
仏発の風力推進(vélique)は海運の脱炭素を変革し得るが、産業化には適切な公的資金欧州レベルの支援強化が不可欠である。政治の不安定でエネルギー・気候の工程表は2023年夏から棚上げが続き、財政優先で「環境債務」が後景化した。だが運輸部門は温室効果ガスの約1/3を占め、海運の脱炭素は航空と同等に重要で、産業的波及も大きい。大手船社は高価な代替燃料に傾く一方、無料・再生可能で、TWOTGrain de SailNéolineなど新興が台頭している。競技ヨット由来のルーティングや超軽量素材の進歩、無排出航行へ向けた風と脱炭素補機の組合せが進む。帆走貨物は速度でなく定時性を重視し、巡航はメガシップの約1/2だが、小型化で寄港地を最終需要地に近接でき、待機時間積替え、総CO₂フットプリントを削減する。もっとも資本集約的であるためクラウドファンディング等の市民参加公共調達が要る。仏は14の装置メーカーと世界初の帆走貨物船隊を持ち好位置にいるが、革新から量産へ至る「死の谷」を越えるには、次期財政法特別償却(上乗せ減価)の縮減巻き戻し、機能不全の公的保証の復活、2024年に国と業界が結んだ「パクト・ヴェリック」の発注約束の具体化など、資金の確実化が要る。併せて海運のEU ETS全面組入れを明確にし、排出枠オークション収入を技術革新に充当すべきである。これはIMO10月に合意予定の全球炭素価格枠組みに米国(トランプ政権)が反発し報復を示唆する中での、欧州の実効的な対抗策でもある。海運でも移行加速逆風への抵抗を両立させることが、仏・欧州の競争力と気候目標達成の鍵である。