フランス欧州ビジネスニュース2025年10月16日(フリー)
1. 太陽エネルギー:ルコルニュ政権、旧買取年金制度の終焉を示唆
2. 米ウェイモ、来年ロンドンでロボットタクシーを配備予定
3. スペインのガス会社エナガス、仏テレガの株式を取得する可能性
4. AI: 蘭ASML、米巨大企業の巨額支出の恩恵を受ける
5. 無名から再生可能エネルギーの大物プレイヤーになった仏ネオエン
6. バイオマスボイラー:仏ダルキア、フランス最大の排ガス回収ネットワークを展開
7. 仏Oreus AI、アラブ首長国連邦のCore42との提携を拡大
8. 年金:ブリュッセル、フランスに予算公約の遵守を求める
1. 太陽エネルギー:ルコルニュ政権、旧買取年金制度の終焉を示唆
政府の2026年予算案は、2006~2010年の制度で契約した旧太陽光(S6~S10)について、遡及的に買取価格を見直す方針を示している。目的は「過剰な報酬」の是正であり、セバスチャン・ルコルニュ首相は公的資金の使途再点検と「レント排除」を掲げつつ、再エネ目標は維持するとしている。対象は出力250kW超の発電所で、詳細は省令で定める。旧制度では国家が平均 567ユーロ/MWh(本土 570ユーロ/MWh)で買い取っており、太陽光の出力ピーク時に市場価格がマイナスになる局面との乖離が拡大している。政府は2021年にも同様の改革を盛り込んだが、欧州委への届出不備を理由に2023年に頓挫。今回はブリュッセルに事前協議済みで、2021年案で想定した平均 50%の減額(20年契約期間末まで)により41.82億ユーロの歳出削減という枠組みを踏襲する余地を残す。当時の影響は、S6/S10契約23.5万件のうち436施設に限定されていた。業界は強く反発し、エネルプランのダニエル・ブールは「国が決めた価格を後から変えるのは不誠実」と批判、SERのジュル・ニッセンは投資家の信認毀損を警告する。さらに、2021年以前稼働の太陽光への課税ほぼ倍増(年5,000万ユーロの追加歳入)や、価格高騰時の超過利潤拠出の上限撤廃復活など、太陽光への「執拗」な負担強化も盛り込まれた。政府は財政負担の抑制を急ぐ一方で、再エネ投資の安定性との綱引きが鮮明になっている。
2. 米ウェイモ、来年ロンドンでロボットタクシーを配備予定
英労働党政権は成長促進のため自動運転導入を加速しており、Waymoは2026年にロンドンでロボタクシーを本格展開する計画である。Waymoは米5都市(サンフランシスコ等)で運行中で、完全自動運転での走行距離は累計約 1億6,000万km。2024年の評価額は450億ドル。国外では東京で実証済みで、ロンドンでは近くJaguar I-Paceの車隊が安全要員同乗で走行学習を行い、2026年の無人運行に備える。予約は自社アプリでの提供を想定している。競合の英WayveはUberと提携し2026年開始を目指し、マイクロソフトとソフトバンクが80億ドル評価で20億ドル出資交渉との観測がある。
政府は2024年自動運転車法を土台に規制緩和を進め、2026年春からのパイロット走行を募集。ロンドン市の地方当局の承認が必要だが、運輸相ハイディ・アレクサンダーは雇用・投資創出と交通手段の選択肢拡大を歓迎している。
一方、象徴的存在のブラックキャブは逆風で、Centre for Londonの調査では過去10年で台数が大幅減、コロナ前比で約 25%減とされる。運転手が車両を取得しやすくする金融支援や試験の簡素化を提言。1865年創設の難関筆記試験「The Knowledge」が敬遠される要因で、Googleマップ時代に合わないとの指摘もある。ロンドンは複雑な街路網ゆえ巨大市場である一方、自転車増や歩行者密度の高さへの適応が事業成否を左右する構図である。
3. スペインのガス会社エナガス、仏テレガの株式を取得する可能性
スペインの送ガス大手Enagásが、仏南西部で約5,000kmのネットワークを運営する仏第2のガス配送事業者Teregaの32%持分(現GIC保有)取得を協議していると報じられている。取引額は約6億ユーロで、Teregaの企業価値は約20億ユーロ(負債込みで約40億ユーロ)と見積もられている。両社はすでにH2Med水素回廊で連携しており、同事業会社の出資比率はEIH-Enagás 50%、仏送ガスNaTran 33.3%、Terega 16.7%である。バルセロナ—マルセイユ間の海底連絡(BarMar)を含むこのプロジェクトは総額25億ユーロ規模でEU支援を受け、年初に3,500万ユーロの助成を獲得している一方、フランス政府は水素輸送インフラ資金拠出に慎重である。EnagásがTeregaに資本参加すれば、両持分の合算でH2Medの実質過半を握る公算が高まり、同社が掲げる6年間で40億ユーロ超の投資計画(80%超を水素に配分)の加速につながる可能性がある。Teregaの株主構成はSnam 40.5%、GIC 32%(売却検討)、EDF 18%(EDF Invest)、Crédit Agricole/Predica 10%で、EDFやPredicaの売却観測は過去にも浮上していた。業績面では2024年売上4.88億ユーロ、純利益1.06億ユーロ(+9%)。同社は今後10年で15億ユーロを投じて水素・バイオメタン対応へのネットワーク改造を進め、年625GWhのバイオメタン導入能力を有している。今回の資本提携が成立すれば、イベリア半島の低コストグリーン水素を北欧州の需要地へ結ぶ構図が一段と現実味を帯びる。