フランス欧州ビジネスニュース2025年5月2日

1. モエ・ヘネシー、従業員の約10%を削減
2. 植物由来原料リーダー、仏ロケット、アメリカのIFFファーマを買収
3. LNG燃料、トタルエナジーズの新たな成長分野
4. バッテリー:ヴァランシエンヌでの産業プロジェクトを徐々に拡大、アクセンス
5. STマイクロエレクトロニクス、フランスで1,000人の自己退職を発表
6. テスラ:フランスでの販売が再び急落
7. 大規模停電: わずか 5 秒でネットワークがダウンする原因とは?
8. アルセロール・ミッタルの人員削減:経営陣 、フランス議会委員会に召喚
9. ペットボトルのデポジット制度、激しい議論の的に
10. マークス&スペンサー、ランサムウェア攻撃の被害に遭う
1. モエ・ヘネシー、従業員の約10%を削減する
LVMHのワイン・スピリッツ部門(Moët Hennessy)は、2024年に売上高が11%減少し、59億ユーロとなった。この業績悪化を受けて、同社は2019年水準の人員数に戻す方針を明らかにし、自然な離職の管理や空席ポストの不補充によって段階的に実行する計画である。
背景には、中国市場の減速やアメリカによる関税措置など、地政学的リスクと消費者心理の低迷があり、世界的な需要が冷え込んでいる。2024年には、アメリカ市場が売上の34%を占めていたが、中国の不調を補うまでには至っていない。
さらに、2025年第一四半期には売上が再び9%減少しており、主にコニャックの売上減少が原因とされる。LVMH全体としても、為替一定の条件下で売上高は3%減少しており、グループ全体に広がる影響となっている。
2. 植物由来原料のリーダーである仏ロケット、アメリカのIFFファーマを買収
植物由来原料の世界的リーダーであるフランスの家族企業Roquetteは、28億5000万ドルでアメリカ企業IFF Pharma Solutionsの買収を完了した。この買収は、栄養分野に加えて医薬品市場への進出強化を目指すRoquetteにとって戦略的転換点となる。
IFF Pharmaは、医薬用賦形剤(ふけい剤)の世界的メーカーであり、売上高は10億ドルにのぼる。医薬用賦形剤の世界市場は2025年までに約100億ドルに達すると予測されている。Roquetteはすでに2023年10月に、日本のQualicaps(世界第3位の医薬用カプセルメーカー)を買収しており、同分野での影響力を高めていた。
今回の買収により、IFF Pharmaの1100人の従業員が加わり、Roquetteの総従業員数は11,000人を超え、世界40カ所の生産拠点を有する。しかし、2024年の売上高は45億ユーロで前年比10%減少し、EBITDAは13%減の5億2900万ユーロとなるなど、主力である栄養分野の低迷が業績に影を落としている。
Roquetteはこの医薬品分野への多角化により、健康と栄養のポートフォリオを再均衡させ、米国での産業拠点を強化することで、国際的な通商リスクの軽減を狙っている。
3. LNG燃料、トタルエナジーズの新たな成長分野
TotalEnergiesは、オマーンにおける液化天然ガス(GNL)ターミナル「Marsa LNG」の建設を開始した。本プロジェクトはOQEPとの共同事業であり、TotalEnergiesが80%を保有している。設計はTechnip Energiesが担当し、GNL燃料による海上船舶の給油拠点として世界的なハブとなることを目指している。
2024年にはGNL推進船が264隻も世界で新規発注されており、今後数年で市場シェア10%超に達する可能性がある。これは国際海事機関(IMO)による環境規制強化が背景にある。
Marsa LNGはオマーン国内のガス田を供給源とし、2028年第1四半期に稼働開始予定である。年間100万トンのGNLを生産し、300MWの太陽光発電による電力で完全電化される。炭素排出強度は原油換算で1バレルあたり3kg以下であり、従来のGNL施設の35kgと比べて極めて低い。
本事業は、2030年までにGNLの生産・長期調達を50%増加させるというTotalEnergiesのグローバル戦略の一環である。現在同社は年間4,000万トン以上のGNLを販売しており、北海、地中海(フォス、マルセイユ)、シンガポール(2024年開設)などでの拠点に続き、オマーンを新たな戦略拠点とする。
ただし、イラン沿岸まで約100kmという地政学的リスクも抱えており、Sohar港に建設予定の本ハブが今後の国際情勢に左右される可能性もある。